9月9日に行われた映画『宝島』東京プレミアのレッドカーペットで、主演の妻夫木さんが「#顔大きくてごめんなさい」と仲間の名前をインスタグラムに投稿。その団結した親し気な様子が注目された。その「親し気」は沖縄はじめ全国を回っていることから生じているというより、「想いを一緒に物を作った」ことで確固たるものになっている気がする。

妻夫木聡さんの公式インスタグラムより

戦後80年たった2025年の今も、世界で戦争が続いている。だからこそ人が人を殺し合う愚かさを共有しなければならないと、戦争に関する番組や書籍、記事も改めて注目された。ただ日本の中でも、同じ国にいながらも一部の地域の人たちだけが「終戦」から取り残されていた事実を、改めて見つめなおす必要がある。その舞台となったのが沖縄だ。

真藤順丈さんが直木賞を受賞した『宝島』が大友啓史監督によって実写映画化、9月19日に全国で公開となる。それを記念して、「小説現代」に掲載される記事より先行で抜粋の上、妻夫木さん、大友監督、真藤さんの鼎談を紹介。前編では「沖縄の映画」への思いをお伝えした。後編では広瀬すずさんが演じるヤマコをはじめ「沖縄の女性」のことをお届けする。

すずさんに託した「太陽のような存在」

――真藤さんの新作『英雄の輪』でも描かれているように、沖縄の歴史のなかには男女問わず、たくさんの英雄がいた。中でも小学校の教師として米軍機の墜落事故に遭うヤマコの姿が印象的だ。真藤さんは、ヤマコを広瀬さんが演じると聞いたときどう思ったのか。

真藤順丈(以下、真藤):広瀬さんは年齢に対して若々しい印象があって、ヤマコを演じるには若すぎないかなと思いましたが、完成した映画を観ると杞憂でした。二十年という長い歳月を演じているのに、どの年代においても違和感がまったくなかった。

なんていうのかな、凜として綺麗な目をした野生動物みたいですよね。役作りはもちろんなさっているだろうけど、勘やセンスの良さが先に立って、野性や瞬発力を活かして演じられている印象があります。

大友啓史(以下、大友):原作のヤマコは「大女」だと真藤さんは描かれているので、本来、すずちゃんとはイメージが少し違うんですよね。

原作のヤマコには肉体的な強さがあるんですが、すずちゃんには「自分が真ん中に行かなきゃいけないんだ」という精神的な強さを表現してほしいと思いました。だから「ヤマコには太陽でいてほしい」とだけ伝えたんです。そう言ったらどう解釈してくれるのかなと思って。僕らはそうやって時々役者を試すことがある(笑)。

そうしたらすずちゃんは「太陽というものは、曇ろうが、雨が降ろうが、いつも中心にある」みたいな芯の部分をすぐに理解してくれた。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

真藤:すごいですね、天性の役者なのかな。映画でも描かれる米軍機墜落事故以降、ヤマコは反基地や返還運動のデモにも参加するようになる。あの時代の沖縄の女性、とりわけ教員たちは「島ぐるみ闘争」の旗頭になってきた。

Leave A Reply