■ 作品情報
監督は芳賀薫。主演に伊藤沙莉、共演に染谷将太、高畑淳子、富田靖子、滝藤賢一など実力派俳優陣。脚本は黒川麻衣、原作は原田マハの同名小説。
■ ストーリー
沖縄・那覇で豆腐店を営む祖母と母と暮らす契約社員の伊波まじむは、ある夜、馴染みのバーで出会ったラム酒に心を奪われる。その原料がサトウキビだと知ったまじむは、勤務先の通信会社「琉球アイコム」の社内ベンチャーコンクールに、南大東島産サトウキビを使ったラム酒製造の企画を応募する。やがて、その企画は家族や会社、南大東島の島民をも巻き込む一大プロジェクトへと発展していく。まじむという名は沖縄の方言で「真心」を意味するが、彼女の真心と情熱が多くの人々を動かし、沖縄から奇跡のラム酒が誕生するまでを描いた物語。実話に基づいた原田マハの小説が原作となっている。
■ 感想
鑑賞後に、こんなに心が洗われるような清々しさを感じたのは久しぶりです。地域振興を兼ねたお仕事ムービーとして、これほどまでに心に響く作品はなかなかありません。
物語は無駄なく、そして丁寧に紡がれ、あっという間にその世界観に引き込まれていきます。特に、人の口に入るものを作る責任と覚悟、より良いものを作るために真心を尽くす姿勢は、観る者の胸を熱くします。主人公・伊波まじむの仕事に対する真摯な姿勢が、スクリーン越しにひしひしと伝わってきます。
ラム酒製造という壮大なプロジェクトの成功の裏には、母、祖母、バーテンダー、同僚、南大東島の夫婦、醸造家といった、本当に心優しい人々の支えがあったのはいうまでもありません。しかし、それを引き寄せたのは、まじむの真心と情熱であり、人を動かすのにこれに勝るものはないのだと改めて教えてくれます。
そんなまじむの奮闘ぶりを通して、主演の伊藤沙莉さんの魅力がどストレートに伝わってきます。彼女の演技には、どこを切り取っても好印象しかなく、まじむというキャラクターのもつ愛嬌と情熱を見事に表現しています。富田靖子さん、高畑淳子さんとの本当の家族のような仲睦まじさも最高です。
劇中で誕生する「風のマジム」というラム酒が、実際に存在するのではないかと思うほどに魅力的で、今すぐにでも沖縄を訪れて、その味を確かめてみたくなります。本作が運んでくれる心地よい風は、観る人すべての心に真心を届け、やさしい心持ちにしてくれるようです。