ACID ANDROID

yukihiroの音楽的探究心と
TR-808/TR-909/シンセ美学の結晶作

L’Arc-en-Ciel、Petit Brabancon、geek sleep sheepといったバンドで八面六臂の活躍を見せるドラマー、yukihiro。しかしサンレコでは“クリエイター”としてのyukihiroに着目し、彼自身が打ち込み&ボーカルを担うソロ・プロジェクト=ACID ANDROIDの活動を追い続けてきた。

『fade into black cosmos』は、ACID ANDROIDとして約7年ぶりとなる待望の5thアルバム。その音楽要素をあえて列挙するならば、アシッド、インダストリアル、エレクトロ、ジャーマン・ニューウェーブ、ボディ・ミュージック辺りだろうが、いずれにも分類できないのが本作のサウンドだ。ROLAND TR-808/TR-909を核としたリズムにシンセや金属音が絡み合い、メタリックなギターやボーカルの配置、そして全体のバランス感までも含めて、従来のジャンルでは形容しがたい作品となった。

2023年に先行配信した4曲はボーカルが新メロディ&英詞となり、エレキギターも録り直されることで新しい形へ生まれ変わった。さらに2006年の「let’s dance」の新バージョンも収録。それらアルバム全曲のミックスまでも自ら手掛けるという一気通貫な姿勢は、ストイックなyukihiroならではだ。

まさに、現段階におけるACID ANDROIDの集大成とも言える本作について、yukihiroへのロング・インタビューを敢行した。では、ACID ANDROIDの深遠なる世界をご堪能いただこう。

Text:篠崎賢太郎 Photo:岡田貴之 Hair&Make:荒木尚子(octbre.)

アルバムの曲作りは2020年から始めた

──いつごろからアルバム作業をスタートしたのですか? 

yukihiro 5年前くらいから曲を作り出したと思います。 

──2023年に先行配信された4曲も、2020年くらいから作り始めたのですか? 

yukihiro セッション・ファイルの日付けを見ると2020年や2021年でした。 

──最初からアルバムという終着点を見据えて曲を作っていったのですか? 

yukihiro そうです。前作『GARDEN』の次を作ろうかなと思って始めました。曲はアルバムを想定して作っていて、作曲期間は1年くらいだったと思います。配信した4曲は、ライブで新曲をやりたいということからでした。 

──本格的にアルバムとして曲をまとめ上げていく作業はいつごろから? 

yukihiro 昨年、2025年のスケジュールを立てていく中で、8月にACID ANDROIDのライブを計画していて、そこまでにアルバム制作の時間が取れないか調整していたら、ちょうど4月~6月辺りが空いたので作業期間に充てようと決めました。 

──yukihiroさんはいろいろなプロジェクトがあるだけに、前もって年間スケジュールをシビアに決めないといけないわけですね。 

yukihiro ある程度決めておいたほうが、それぞれのプロジェクトに集中できるだろうという考えでした。

──先ほど、作曲は2021年ごろには終わっていたという話がありましたが、具体的にどんな状態だったのですか? コードやメロディだけ? 

yukihiro 打ち込みのトラックはほぼ出来上がっていました。ボーカルとギター・パートがないくらいで、それ以外はできているかなって状態です。今年に入ってやったことは、ボーカル・メロディを作って、歌詞を書いて、歌録りをして、ギターのフレーズを作って録音をして、それをミックスする作業でした。 

──先行配信の4曲も今回のアルバム用に英詞になりましたし、全8曲の歌録りとギター録りからミックスまでを3カ月で完遂したわけですよね。かなり根を詰めて作業したのでは? 

yukihiro そうですね。そうしようと決めていたので。 

自分が本当に良いと思う要素を詰め込んだ

──アルバム・コンセプトはあったのですか? 

yukihiro そんなに決めていなくて、まずは曲ができればいいなと思いながら作り始めました。 

──ご自身が純粋に好きな音、やりたい音楽を形にしていく感じですか? 

yukihiro ACID ANDROIDは、打ち込みを始めたときから自分が作りたいと思うもの、自分が追い求めている音楽を形にするために作ったプロジェクトで、それが今に至っています。

──今回は特にインダストリアル、ボディ、エレクトロ、メタル、ジャーマン・ニューウェーブなど、さまざまな要素が入り交じる作品になっていますよね。 

yukihiro 本当に自分がいいなと思えるものを詰め込んでいった感じですね。 

──多くの要素を詰め込みつつも、最新のヒット・チャートに流されるような浮ついた感は当然なく、yukihiroさんの審美眼が一貫しているのも特徴です。 

yukihiro 最新の音楽が何かというのはもはや分かりづらいのですが、1990年代や2000年代のころは最新の音楽がかっこいいという流れがあったように感じていて、自分はリアルタイムでそれを経験してきたと思うんです。“かっこいい音楽はないかな?”と探していると、それが当時の最新の音楽に行き着くと感じていました。そういう人たちが作り上げていた音楽を聴いて、自分もやってみたいという気持ちがあるのだと思います。こういう感覚は自分の経験によるもので、世代によって“新しい”という感覚は違うんだろうなと思います。 

──本作は特に1990年代の空気……つまり、雑多な要素が入り混じりながら、何かへと形作られていくような雰囲気を感じます。 

yukihiro 何かになってたらいいですけどね。 

──ジャンルとして形容できない音楽だけに、それを形にするのは大変だったのではないでしょうか。お手本がないというか、正解がないわけですよね。

yukihiro 今回は本当に正解がないなと感じていました。であれば、自分で正解だと思えないとダメだと考えながら、割と開き直って作業しました。ミックスしているときも、迷ったら誰かの音楽を参考に聴いてみたりするんですけど、自分の音楽に置き換えられない。なので自分が出している音を信用するしかないなと思いました。 

“TR-808 or TR-909”というルール

──曲作りにおいて、完成したかどうかのジャッジはどのように行っているのですか? 

yukihiro 曲の構成でしょうか。オープニングからエンディングまでの時間軸が決まれば、曲が形になったなと思えます。そこからはアレンジ作業という感じですね。 

──ワンループ作って、それを拡張させて構成を作る方法ではないのですか? 

yukihiro ループでDJ的な作り方をすることはほぼないです。Aパート、Bパート、Cパートを作って、Dパートを作るのか、元に戻るのか、間奏を作るのか、曲を進めながら考えていきます。 

──パートごとの制作は、使用DAWであるAVID Pro Toolsで別々に作ったものを組み合わせるのですか?それとも1曲通して作っていくのでしょうか? 

yukihiro 別々に作るということはほぼなくて、完成まで時間軸に沿って作ります。Pro Toolsの編集ウィンドウで時間軸の縦線が右に動いて画面がスクロールしていくと、曲の構成ができていくなと感じるんですよ。 

──曲作りのときは、頭の中に構成や音色が浮かんでいて、それを形にするのですか? 

yukihiro まずアイディアがあって、それに対する…

続きはこちらから ※会員限定

会員プランのご登録はこちら

 この機会に会員登録をして、ACID ANDROID(yukihiro)の記事をフルでお楽しみください。会員になると、他にも限定コンテンツや特典が利用可能です。詳細は下記をクリックしてご確認ください。

Release

『fade into black cosmos』
ACID ANDROID 

(tracks on drugs records)

 pale fire #2
let’s dance #2
idea #2
veil of night
wrong regularity
demonstration #2
 level 9
dealing with the devil #2

Musician: yukihiro(vo、prog)、KAZUYA(g)、KENT(vocal melody arrangement) 
Producer:yukihiro 
Engineer:yukihiro、tsuyoshi abe(guitar tracks) 
Studio:Private

 

Leave A Reply