芸術家や思想家に愛されてきたイタリアの高級ノートブック「モレスキン」と、ミラノを拠点に教育普及活動を展開する非営利団体「Moleskine Foundation(モレスキン財団)」による巡回展「Detour」が、9月10日から東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で開催されている。
本展はこれまでロンドン、上海、パリ、ニューヨーク、ミラノを巡回し、今年は大阪・関西万博でも開催。その特徴は、日常的なノートブックが創造的な介入を経て、唯一無二のアートピースへと変わる点にある。描く、切り取る、解体する、再構築するといった行為を通じて、ときに彫刻のような立体物へと姿を変える作品群は、創造性がいかに多様なかたちで表れるかを示す。これまで財団には1600冊を超える作品が寄贈され、そのなかから各都市の文脈に応じて厳選した作品が展示されている。
参加者には世界的に著名なアーティストや建築家、映画監督、デザイナー、ミュージシャンに加え、学生や文化団体、若手クリエイターも含まれる。財団が掲げる理念「Creativity for Social Change(創造性による社会変革)」に共鳴し、多くのクリエイターが自身のノートを作品として提供してきた。
モレスキン財団CEOのアダマ・サンネは、本展の意義をこう語る。「ここに並ぶのは一連の個人的な物語です。それぞれの人が、自分の感受性や経験を変容させ、同じノートブックというツールからまったく異なる表現を生み出している。1600を超える作品が存在しますが、同じものはひとつもありません。それこそが人間性そのものの表れだと考えています」。
また、モレスキンCEOのクリストフ・アーシャンボウは、「黒いノートブックという同じ出発点から、数千もの物語が生まれるのがこの展覧会の美しさです。同じ作品を繰り返し見ても、その時々でまったく異なる印象を受ける。観客自身の視点や置かれた状況によって、作品は新しい体験をもたらす」と述べている。