New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はASIAN KUNG-FU GENERATION「FADE TO BLACK」、JO1「ひらく」、Perfume「ソーラ・ウィンド」、亀梨和也「The truth」、iri「CUBE」、KID PHENOMENON「Lemonade」の6作品をピックアップした。(編集部)
ASIAN KUNG-FU GENERATION「FADE TO BLACK」
ASIAN KUNG-FU GENERATION – FADE TO BLACK|ART-SCHOOL Tribute Album『Dreams Never End』Official Audio
ギターロックやオルタナティブ界隈を代表する15バンドが参加したART-SCHOOLのトリビュートアルバム『Dreams Never End』。その冒頭を飾るのはアジカンである。「FADE TO BLACK」は2002年リリース、まだメジャーデビュー前だった『シャーロットe.p.』収録曲で、同じ頃インディーシーンで切磋琢磨していたアジカンにとっては、今も強い思い入れがある曲だろう。変な捻りや遊びは入れず、ただ精一杯の愛をぶつけた正攻法のアレンジとなっている。とはいえ違いは大きい。木下理樹のボーカルで聴く原曲は今にも壊れてしまいそうな儚さや脆さが魅力だが、後藤正文が堂々と歌い上げるこのバージョンはなんと頼もしく響くことか。ART-SCHOOL楽曲の普遍性が改めて伝わる良曲。(石井)
JO1「ひらく」
「ひらく」
『SUMMER SONIC 2025』で初披露された「ひらく」は、メンバーの豆原一成が主演を務める映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』の主題歌。秦 基博が初めてJO1に書き下ろしたことでも話題を集めるバラードナンバーだ。切なさと儚さをたたえたピアノの音色、〈双葉の先に揺れる/頼りない この蕾が〉という詩情豊かな歌詞が聴こえてきた瞬間、楽曲の世界にスッと引き込まれる。少しずつ、ゆっくりと感情が強まっていくメロディライン、メンバーそれぞれの声質をじっくり味わえる構成を含め、ボーカルグループとしてのJO1の魅力がたっぷりと込められた楽曲に仕上がっている。ピアノとストリングスを中心に、個々の歌の特長を際立たせるトオミヨウのアレンジメントにも注目してほしい。(森)
Perfume「ソーラ・ウィンド」
【GCG】『ガンダムカードゲーム』 Perfume新曲「ソーラ・ウィンド」タイアップPVロングVer.
アルバム『ネビュラロマンス 後篇』収録曲のひとつで、『ガンダムカードゲーム』のタイアップソングでもある。アルバムにはさまざまな年代のジャンルやビートが巧みにコラージュされているが、この曲に関しては80年代一択。当時の近未来を象徴していたテクノポップ、さらには松田聖子や南野陽子などが牽引していたアイドル歌謡。二つが分かち難く結びついているのは、2014年に『機動戦士ガンダム35周年プロジェクト』テーマ曲を手がけ、『ガンダム』誕生とともに生まれ育った中田ヤスタカの譲れない美学か。歌唱のエフェクトが弱めなのも特徴で、〈わたし 少し おかしいわ〉の必殺フレーズは、新曲なのに、かつて『ザ・ベストテン』(TBS系)で観た記憶が蘇る、とすら言いたくなる。すばらしきノスタルジー喚起力。(石井)
亀梨和也「The truth」
亀梨和也 – The truth [Official Music Video]
2023年8月リリースの『Cross』以来、そして、STARTO ENTERTAINMENT退所後初となる配信シングル「The truth」。本人が作詞に参加したこの曲には、現在の亀梨和也の心境やファンへの思い、将来的なビジョンなどが反映されているように感じる。冒頭の〈がむしゃらに 駆け抜けた 傷を負った身体〉から生々しいフレーズが続くのだが、決して自分のことだけではなく、〈何度でも何度でも 背中を押すから/君と共に行こう〉とリスナーに呼びかけているのがこの曲の求心力の源。一直線に突き抜けるようなビート、華やかさと力強さを兼ね備えたアレンジメント、そして何より、リアルな感情を滾らせ、真っ直ぐにメッセージを響かせるボーカルこそが「The truth」の核であることは間違いないだろう。(森)
iri「CUBE」
iri – CUBE (Music Video)
恋愛にルールや枠はなく(もちろんモラルはある)、どんな年齢でもどんな属性でもどんな性的志向であっても人を好きになるのは自由。私たちはそんな当たり前のことをついつい忘れて「でも、この年齢だしな」とか「あの人とは釣り合わないよな」とブレーキをかけてしまいがちだが、iriの新曲「CUBE」を聴けば、「誰かを好きになるのは素敵なことだった!」という感覚が戻ってくるはず。恋愛リアリティショー『Girl or Lady Season2』(ABEMA)の主題歌として制作された「CUBE」は、iriとESME MORIのコライトによるミディアムチューン。ほんのりラテン風味のトラックと起伏に富んだトラック、抑制の効いたボーカリゼーションとともに奏でられる〈痛みなら分け合って/傾いた日々も照らし出す〉というラインによって、凝り固まった恋心が気持ちよく溶け出していく。(森)
KID PHENOMENON「Lemonade」
KID PHENOMENON|”Snakebite” Music Video
LDHより2年前にデビューした7人組、最新シングル収録曲のひとつ。シングル自体が“最高のサマーチューン”をテーマとしており、甘酸っぱい恋心を歌う表題曲「Sparkle Summer」、ファンキーなビートに乗って自由を謳歌する「Snakebite」に続くのがこの「Lemonade」だ。壮大なシンガロングで幕を開け、エレキギターのリフやダイナミックなドラムが並走する、彼らにとっては珍しいロックナンバーとなる。手がけたのはともにロックバンド出身の音楽クリエイター・辻村有記と板井直樹。青い空の下をひた走るような疾走感と一体感あふれるコーラスが熱い限りだが、主旋律のファルセットが気持ちのいい“抜け”を作っている。(石井)
星野源、Official髭男dism、GLAY、アジカン、香取慎吾……大規模会場でのライブが集中する週末を追う
この週末は、関東圏を中心とした各地で大規模なキャパシティでのライブ/コンサート公演が目白押し。初夏にふさわしい野外ライブ、ベテラ…
米津玄師、Vaundy、アジカン、幾田りら、ポルカ、SHISHAMO……2025冬アニメを彩るJ-POP楽曲たち
米津玄師、Vaundy、ASIAN KUNG-FU GENERATION、幾田りら、ポルカドットスティングレイ、SHISHAMO…
音楽ライター/バンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージックの全般が守備範囲。楽曲の背景にあるもの、音楽的な構造を考えるのが好きです。
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石井恵梨子
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1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。
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