2025年9月10日放送のNHK「あさイチ」出演でも話題の個性派俳優坂口涼太郎さん。8月に出版された初のエッセイ集『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』も好評だ。軽妙でテンポのいい関西弁で、働き方や人間関係、自己肯定感など、今社会で起こっているさまざまな問題を掘り下げて綴っている。エッセイで彼が伝え続けていることは、どんなに深刻な問題も誰かと比べることなく、自分らしさを大切にした最善の選択をし、気持ちをポジティブに保つことの大切さ。彼はこれを“らめ活(あきらめ活動)”と呼び、多くの読者から共感を集め、すでに2刷目の重版も決定している。
テレビや映画などでは個性の強い役柄で存在感を発揮し、振り付けやシンガーソングライターなど多彩な分野で活躍中の坂口さん。彼は一人っ子として育ってきた。本著には両親とのエピソードが何度も登場する。
「ひとりっ子」はどれくらいいるのだろう。
厚生労働省が2024年7月5日に発行した報告書によると、2023年6月1日の時点で全国の世帯総数は5445万2000世帯。そのうち、児童のいる世帯は983万5000世帯で、児童が「1人」いる世帯は478万2000世帯(児童のいる世帯の48.6%)、「2人」いる世帯は390万2000世帯(児童のいる世帯の39.7%)となっており、一人っ子が上回っている。
ちなみに1989年、児童のいる世帯は1642万6000世帯で41.7%。児童が「1人」いる世帯は37.2%、「2人」いる世帯は46.3%だった。ゆるやかではあるものの、一人っ子世帯は増え続けている。
現代社会で子どもを育てる上では、教育費や生活費など経済的に余裕ある環境を整えられることは否めず、少子化問題に拍車がかかっていることも分かる。
ただ、ひとりっ子ゆえに家族の愛情を一身に受ける人もいるだろう。まさにそんな愛情を受けて育った俳優がいる。
坂口涼太郎さん、その人である。
俳優・坂口涼太郎さん
坂口涼太郎(さかぐちりょうたろう)
1990年8月15日生まれ。兵庫県出身。特技はダンス、ピアノ弾き語り、英語、短歌。連続テレビ小説「おちょやん」「らんまん」(NHK)、映画「ちはやふる」シリーズ、映画「アンダーニンジャ」、ドラマ「罠の戦争」(カンテレ・フジテレビ系)、海外ドラマ「サニー」(Apple TV+)、など話題作に多数出演。他、「あさイチ」(NHK)では唯一無二のキャラクターで暴れ回り、「ソノリオの音楽隊」(NHK Eテレ)では主演兼振付師として活躍するかたわら、シンガーソングライターとしても活動。独創的なファッションやメイクも話題を呼ぶ。2025年8月6日、ウェブマガジン「mi-mollet」の連載をまとめた自身初のエッセイ『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』が書籍化される。
“クセメン俳優”、初のエッセイ集もやはりクセ強だった撮影/杉山和行
映画やドラマで唯一無二のキャラクターで存在感を示し、独創的なファッションやメイクでも注目されている俳優・坂口涼太郎さん。大ヒット映画『ちはやふる』シリーズではヒョロくんこと木梨浩役を演じ、原作ファンが「ヒョロくんそのものでフルCGかと思った!」と大絶賛。同作の小泉徳宏監督をして「(オーディションに)まさかこのクオリティが来るとは思わなかった」と言わしめた、今をときめくクセの強い“クセメン俳優”だ。
ダンサー、シンガーソングライター、歌人としても活動する多才な坂口さんが、8月6日に初の著書『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』を上梓。テーマは、働き方、家事、人間関係、美容、ファッション、社会問題……と多岐にわたるが、通底しているのは「あたりまえの日常こそが人生の舞台だ」という彼のポリシーだ。優しい視線で綴られた文章は、どこまでもポップでハートフル。自身がたしなむ短歌の影響もあって実にユニークな表現方法とリズムには中毒性も。時に大爆笑、時にホロリとさせられる、心が喜ぶ癒やしのエッセイが誕生した。この才能豊かであたたかな人間性は、いかにして育まれたのか。「坂口涼太郎ができるまで」を詳しく聞いた。
2歳になるころには、ちゃぶ台の上で踊っていた
もともと自分を表現することが好きで、2歳になるころにはすでにちゃぶ台の上で踊っていたという坂口さん。そんな彼を見たご両親は、早くから舞台やミュージカルといったエンターテインメントに触れさせてくれたのだそう。
撮影/杉山和行
「母いわく、『もの心ついたころから、歌ったり踊ったりするのが好きな子だった』そうです。それで『じゃあコンサートに連れて行ってあげよう』『バレエの舞台やミュージカルに連れて行ってあげよう』となり、そこで出会ったものが自分の血肉やセンスになっていきました。
幼児期からたくさんのエンターテインメントに触れるなかで、子ども心に真似をしたくなったんでしょうね。自分の体を使って踊ったり歌ったり、誰かになってみたり。そういう行為そのものが楽しかったんじゃないかなと思います」
そんな自身の姿は『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』にこんなふうにも伝えられている。
神童は全身タイツの人間が猫をやっていることなんて何も気にならないほど歌い踊る猫たちに釘付けで、その踊りひとつひとつ、歌のひとつひとつ、衣装や照明やセットのひとつひとつに息を呑み、呼吸することを忘れ、心拍が十六分音符のリズムで脈打つほど胸が高鳴っていたという。
「私がやりたいのはこれや。ミュージカルをおれはやりたいんや。ミュージカル俳優に、おれはなる! そう固く決意しました」
〜『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』〜「実録『神童詐欺』の全貌」より抜粋〜
「俳優の仕事が天職なのかどうか自分では分かりませんが、俳優でよかったなと思うのは、自身の経験を誰かと共有できた時です。私が体現してる様を見て、『あの時、自分もああいう気持ちだったな』と誰かの心が楽になったり、慰めたり。私はずっとそういうふうにドラマや映画を観てきたので、同じように感じてもらえた時は『この仕事をやっていてよかったなぁ』と思います」