佐野美術館(静岡県三島市)で「皇居三の丸尚蔵館展 皇室の名宝―静岡ゆかりの品々とともに」が9月27日から開催されます。
皇居三の丸尚蔵館は、皇室に伝来した美術工芸品を保存、研究、公開・展示する施設で、現在約6,200件を収蔵しています。開館30周年を迎えた令和5年(2023年)11月3日より新たな施設の一部を開館し、同8年に全館開館を予定しており、現在も建設工事が進行中です。
ご静養の地、静岡
佐野美術館の所在する静岡県は、富士山を仰ぎ駿河湾を望む、風光明媚で温暖な気候から、皇室の方々のご静養の地となりました。沼津には明治26年(1893年)、大正天皇(当時は皇太子)の御用邸が、のちに昭和天皇(当時は皇太子)の御学問所や居所が造営されました。御殿場には昭和16年(1941年)、秩父宮雍仁親王のご療養のために御別邸が建てられ、邸内に築かれた窯(三峰窯)にて勢津子妃と陶芸に親しまれました。
本展では、当地ゆかりの作品を中心に48件を紹介。皇居三の丸尚蔵館収蔵の名品を通して、日本の長い歴史が培った伝統美への理解を深め、日本人の繊細な美意識に触れられる内容となっています。
皇居三の丸尚蔵館展 皇室の名宝―静岡ゆかりの品々とともに
会場:佐野美術館(静岡県三島市中田町1-43)
会期:2025年9月27日(土)~11月3日(月・祝)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:木曜日
観覧料:一般・大学生1,300円、小・中・高校生650円
※土曜日は小中学生無料
※未就学児は無料
問い合わせ:TEL 055-975-7278
アクセス:伊豆箱根鉄道駿豆線「三島田町」駅から徒歩約5分/JR三島駅南口からタクシー約10分/東名高速 沼津IC・新東名 長泉沼津ICから車で約20分
公式SNS:X(旧Twitter) Instagram Facebook
展覧会詳細は、佐野美術館公式サイトまで。
展覧会について
第1章 日本の自然美と吉祥の絵画
皇室に伝わった日本画には、慶事にふさわしい吉祥の意匠や伝統の画題が多く見られ、様々な動植物が四季折々の情景とともに表われます。明治時代以降、帝室技芸員に任命された竹内栖鳳や横山大観などの日本画家による山水画や吉祥画を展示します。
横山大観《龍蛟躍四溟》 昭和11年(1936) 皇居三の丸尚蔵館収蔵/龍は瑞祥の象徴。ダイナミックに渦巻く風が気迫に富んだ大作だ
竹内栖鳳《和暖之図》(右隻) 大正13年(1924) 皇居三の丸尚蔵館収蔵/神の使いとされる鹿を、毛並みまで丹念に描いている
第2章 皇室と静岡ゆかりの品々
三峰窯で造られた茶器をはじめ、沼津御用邸で使われた調度品や、静岡県各地から献上された絵画、工芸品のほか、ボンボニエールなどを展示します。
※三峰窯とは、御殿場御別邸から眺められる富士、箱根、愛鷹の三峰、そして宮号と縁の深い秩父三峰との関わりから御殿場御別邸で療養生活を送られていた秩父宮雍仁親王により名付けられました。
松岡映丘《富嶽茶園》 昭和3年(1928) 皇居三の丸尚蔵館収蔵/牧之原茶園に駿河湾、富士山を一望する絶景が広がる
前田南斎《桑木地透彫棚》 大正4年(1915) 皇居三の丸尚蔵館収蔵/前田南斎は伊豆稲取出身。国内外の博覧会で受賞を重ねた名工として知られる
第3章 皇室に伝わった刀剣類
刀剣は古来重んじられてきましたが、近代に至り、明治天皇はとりわけ日本刀に高い関心を寄せられました。旧大名家等から明治天皇へ献上された名刀を展示します。また、戦に向かう武士の姿も見ることのできる岩佐又兵衛《小栗判官絵巻》巻15上が、修復後初公開されます。
《刀 無銘 正宗(名物 若狭正宗)》 鎌倉時代(14世紀) 皇居三の丸尚蔵館収蔵/正宗として知られる刀剣のなかでも傑作として知られる一振だ
岩佐又兵衛《小栗判官絵巻》巻15上(第5段・部分) 江戸時代(17世紀) 皇居三の丸尚蔵館収蔵 ※掲載場面は10月15日(水)まで、10月17日(金)から別場面に巻替。
各地で話題を呼んでいる「皇室の名宝展」が、この秋ついに静岡にやってきます。会場では、竹内栖鳳や横山大観といった近代日本画の巨匠による名画をはじめ、明治天皇に献上された名刀や、秩父宮雍仁親王の陶芸作品など、時を超えて受け継がれた美が一堂に会します。さらに、静岡から献上された作品の里帰り展示では、皇室と静岡のつながりも体感できるでしょう。皇室に伝わる屈指の名品を通じて、日本の文化が育んできた繊細な美意識を心ゆくまで堪能してみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)