2025年9月7日

PCから投稿

鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

楽しい

 まさか20年を経てまたしても大スクリーンで見られる機会があるとは思わなかった。そして20年たってもまだ泣けるとは自分でも信じられなかった。

 この作品の近年には「フラガール」(2006年)や「おくりびと」(2008年)といった年度代表作が連なっており、それぞれ最後は大きな感動を我々にもたらしてきた。当時も既にいいトシをした大人だった僕の目にも涙が浮かんだ。なぜ泣けたのか? それぞれ説明ができる理由がスクリーンにはあった。役の上での生い立ち、置かれた境遇、近隣や友人との関係性と主人公たちのたゆまぬ努力。そしてラストの胸高まる演出。いくら実話を元にしたものとはいえ、所詮は映画。作りごとで泣く方がどうかしている、と考えてはいても結局は泣いた。オレの負け。結局この時代にはそういう映画が流行っていたのだろう。

 ところが、この「リンダリンダリンダ」はそのテを使っていない。元来が泣かせる目的で作られた映画ではないだろう。なのにラストの迫りくる感動はちょっと説明が困る。山下監督の演出も、向井脚本も、説明をしなくてはならない箇所をすべてすっ飛ばしてしまっている。バンドメンバーが一人欠けた、それでも演奏はする、新メンバーを選ぶ、新たな楽器を担当する、そして本番に遅刻をする。こちらが予想するマクガフィン(動機付け)も係り結びもなく、逆に不要とも思える松ケンの告白シーンやカラオケ屋受付でのクスグリがあったり、相当に感覚的な作劇となってしまっている。若い脚本家が陥りやすい作劇であり、恐らく脚本講座などでは落第モノの厳しい評価を受けるのではなかろうか?。
 それでも観客としては、結局4人の推進力となったのは恵(香椎由宇)と凛子(三村恭代)の仲たがいであろう…と思う。それすらも最終盤で凛子が出番を前にした恵にかけた一言で「あれ?あんたたち仲悪かったんじゃなかったのかい?」と肩透かしを食う。え?じゃ、何のためにやってたんだよ?…と、こんな展開の繰り返しで最後のステージ。それまでの練習から言って大スベリになると思ったらアレである。サビなんかはあっという間に体育館全体を揺さぶるほどの大盛り上がりを見せ、同時にそれでも後ろはスカスカという本編ラストカット(笑)。どこまでも「こうあってほしい」というこちらの期待を裏切り続けたまま終わる。
 ほぼ唯一ベタと思われる映画的演出は激しい夕立に濡れた体育館の屋外、雨が小降りになっていく。雨は何かを洗い流してくれて、やがて日も射す。あの雨は何を流してくれたのだろうか。

 山下敦弘監督自身も語った通り、これは「奇跡の映画」としか説明ができない。たった3日間の奇跡の物語。僕自身はゼロ年代の「裏ベスト」とすら思っていた。この際だから「表のベストテン」にねじ込んでもいいような気もしてきた(笑)。もう一度見に行こうかな?

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リンダ リンダ リンダ

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