カドブン meets 本が好き!
『警察怪談 報告書に載らなかった怖い話』レビュー【本が好き!×カドブン】
書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
今回のベストレビューは、藍峯ジュンさんの『警察怪談 報告書に載らなかった怖い話』に決まりました。ありがとうございました。
なかなか外部に語られることのなかった警察関係者の体験談。刑事ドラマにはない、本物の警察、鑑識だからこそのリアルな情報がわかって面白い。
レビュアー:クロニスタさん
著者は元鑑識官で「元鑑識官の警察ウラ話チャンネル」を運営しているYouTuberだ。自身が鑑識官時代に見聞きした怪談話を投稿していたが、チャンネルが認知されるにつれ全国の警察関係者からも怪談が寄せられるようになった。
警察関係者は現場で奇妙な体験をしたり、事件被害者の幽霊を見たりしても、報告するのは憚られる環境にあるため(確かに、事件解決の糸口が不可思議な直感や、幽霊からのお告げだったら、証拠にならないし困るだろう)ごく近しい人にしか話をしないらしい。だから今まであまり世間に知られることはなかったが、元同業者がそんなチャンネルを始めたら、口を閉ざしていたことを話したくなるのは想像に難くない。
この本は番組内のいくつかを文字に起こして書籍化したものだ。
怪談というと、普通は怨霊みたいに恨みをもった幽霊が襲ってくる、恐怖を取り上げるもののように思うのだけれど、そこは警察官だから、基本的に悪いことをしているわけはなく、人を助けることをしている方々なので、出てくる幽霊も害を加えるつもりがない。どちらかというと見つけてくれてありがとう、真犯人を捕まえてくれてありがとう、というスタンスの生霊だったり亡霊なので、ゾワゾワした感覚にはなるが怖くない。(怖くないというと語弊があるが、襲われる心配がないので、命の危険を感じない)
個人的には「怪談」というより、昔でいう『トワイライト・ゾーン』や『X-ファイル』に近いかなと思う。
それよりは副次的な面白さなのかもしれないが、事件や事故で本物の警察や鑑識、刑事がどう動くか、どこに視点を向けて現場検証するのか、そしてどこに重点を置いて捜査をするのか、というドラマではわからないリアルな情報がわかるので、そっちのほうが面白かった。
それでもやっぱり善意の人を巻き込むタイプの霊もあるので、本の後半のほうでは怖い話もいくつかある。
とにかくハードで、かつ絶望的な怖い話が好きだという方には物足りないかもしれないが、怖い話はちょっと苦手だけど、「この話の続き、聞きたい?それとも聞きたくない?」と訊かれたとき、「やっぱり聞きたい」と答えてしまうような人には程良い怪談だと思う。
読了後にYouTubeチャンネルのほうもいくつか見たが、見始めたら止められなくなってしまった。本に負けず劣らず面白いので、登録をおすすめします。
▼クロニスタさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no12301/index.html
▼藍峯ジュンさんのYouTubeチャンネル「元鑑識官の警察ウラ話ちゃんねる」はこちら
https://www.youtube.com/@motokan
書誌情報
書 名:警察怪談 報告書に載らなかった怖い話
著 者:藍峯 ジュン
発売日:2025年06月03日
本当に怖い話は、警察官が知っている。実録警察怪異譚!
死亡事故の現場で、警察官たちが当時の様子を再現して行う照射実験。立ち会った事故の被疑者が恐慌しはじめる。彼だけに見えていたものとは?(「照射実験の夜」)YouTubeで全国の警察関係者から寄せられた怪談を語り、大人気の元警察官の配信者による選りすぐりの実録警察怪談集。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322403000617/
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