大友啓史監督が心血を注ぎ、2度の撮影延期を乗り越え実現した奇跡のプロジェクト…191分を息もつかせぬハイエナジーで駆け抜ける圧巻のエンタテインメント超大作、映画『宝島』がいよいよ9月19日(金)より全国公開となる。第160回直木賞をはじめ、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞の三冠に輝いた作家・真藤順丈の同名小説が原作。

戦後の沖縄で生き抜いた若者たちを描いた映画『宝島』は9月19日(金)公開戦後の沖縄で生き抜いた若者たちを描いた映画『宝島』は9月19日(金)公開[c]真藤順丈/講談社 [c]2025「宝島」製作委員会

アメリカ統治下の戦後沖縄を舞台に、1952年から約20年にわたる物語が展開する壮大な人間ドラマ。激動の時代の中で、友情や希望の行方、自由への憧れが交錯し、人々の絆が描かれていく。時代の風を感じながら紡がれる物語は、沖縄の壮大な景色と相まって、観客に深い感動を与えることだろう。
この背景を受け、物語の中心となる幼なじみを演じるのは、妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝の3人。かつて米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。彼らのリーダー格であり、島の英雄だったオン(永山瑛太)が消えたあとの日々を、妻夫木演じるグスク、広瀬演じるヤマコ、窪田演じるレイは、それぞれの道を選択して歩んでいく。三者三様に島の未来を模索し、葛藤を抱えながら成長していく魅力的なキャラクターたち。

今回のインタビューでは、物語の魅力や映画化への挑戦、撮影の裏話など、作品への熱い想いを語ってくれたキャストの視点から『宝島』の世界に迫る。深く心に響く映画の裏側で、3人の役者はどのように向き合ったのか。真摯に紡がれた彼らの言葉は、映画への期待をさらに高めるものとなっているはずだ。

笑顔で撮影に応じてくれた、妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝笑顔で撮影に応じてくれた、妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝撮影/興梠真穂「従来的な日本映画の枠を超える破格のプロジェクト」(妻夫木)

――映画『宝島』、すばらしかったです。真藤順丈さんの原作小説が2018年に出版されて、大友啓史監督はそれを読んでからすぐに動き出され、困難を乗り越えた先の執念の映画化だったと聞いております。その船に乗り込んだ皆さんにとって、映画が完成したいまのお気持ちからお聞かせください。

妻夫木「正直、夢のようですね。最初に大友監督からお話をいただいたのは2019年、コロナ禍の直前だったんですよ。当初は2021年に撮影が始まる予定だったんですけど、2度の延期があって、実際にクラインクインしたのは2024年2月。ようやく動き出した時はうれしかったけど、途中でストップしちゃうんじゃないかという不安に苛まれるくらい、従来的な日本映画の枠を超える破格のプロジェクトだったと思います。ここ数年、自分の頭の中にはいつも『宝島』のことがありましたから、完成して本当に感慨深いです」

オンの行方を捜すために刑事となったグスクを演じた妻夫木聡オンの行方を捜すために刑事となったグスクを演じた妻夫木聡[c]真藤順丈/講談社 [c]2025「宝島」製作委員会

広瀬「私もまずは感慨深いのひと言に尽きますね。脚本をいただいてから長い間、シーンの数々がずっと自分なりのイメージで頭の中に浮かんでいたんです。撮影中はそれがどんどん具体的な形になっていって、まるでパズルのピースがはまっていくような感覚でした。『ああ、本当に撮影が始まったんだ』って現場で思った覚えがあります。

完成した映画を観た時は、自分が出ていることを超えて圧倒されましたね。ものすごい熱量で覚悟とか伝えたいこと、いろんな感情の渦や問いかけを突き付けられる。スクリーンを眺めながら、現場のみんなの顔や温度感を思い出して…本当に充実した3時間の映画体験でした。こんなに気持ちのいい疲れに包まれるのは久しぶりだなって」

窪田「尋常じゃないエネルギーが伝わってくる映画ですよね。現場では大友監督はすごいテイクを重ねるんですよ(笑)。出し切ったと思ったら『もう1回』って言われて、どのテイクが使われるかわからないくらい撮る。それは大友監督にしか見えないものを見定めているんだってことが、完成した映画を観てよくわかりました。自分が出ているシーンなのに、『そんなアングルあったっけ?』って驚いたところが本当に多かったんです。カメラが回っていた記憶がない自分の姿が映っているんですよ。こんなことやったっけ?って(笑)。“知らない間に撮られていた”っていう意味ではドキュメンタリーみたいな感覚だなと思いましたけど、それが長編劇映画の物語として一本の線につながっていたのは感動しました。ひとりの観客として存分に楽しめましたし、演者としても新鮮でしたね」

オンと恋人同士だったヤマコ。将来の話もしていた2人が離ればなれになった理由とは?オンと恋人同士だったヤマコ。将来の話もしていた2人が離ればなれになった理由とは?[c]真藤順丈/講談社 [c]2025「宝島」製作委員会

妻夫木「僕も仕上がった作品を観た時はそのすばらしさにはびっくりしました。もともと僕は窪田くんやすずちゃんより年齢が結構上なので、幼なじみの設定だとバランスが取れないんじゃないかって大友監督に言ったんですよ。だけどありがたいことに、大友監督から『グスクは妻夫木さんじゃないと考えられない』と言っていただいて…だったら判断はすべて監督にお任せしようと。

改めて、本当に完成してよかったよね。だって日本アカデミー賞(第46回、2023年3月10日開催。妻夫木と窪田は『ある男』、広瀬は『流浪の月』の出演者として出席・受賞)で3人が顔を合わせた時、“『宝島』の撮影ってどうなったんだっけ?なくなったわけじゃないよね?”なんて話してたから」

一同「(笑)」

妻夫木「僕自身のことを言うと、26歳の時に『涙そうそう』という映画をコザ(1956年から1974年までコザ市だった沖縄市の中心部)で撮影してから、地元の温かい人たちに触れて、沖縄の歴史や現実にも関心を持つようになり、この土地に特別な想いを抱いてきました。そして今回の『宝島』で再びコザを舞台にした映画に導かれたのは、なにか運命的なものを感じましたし、この映画に関しては徹底的に取り組まないと終わりにはできないものがあった気がします」

ヤクザとなり、刑事のグスクと距離を置きながら独自にオンを探すヤクザとなり、刑事のグスクと距離を置きながら独自にオンを探す[c]真藤順丈/講談社 [c]2025「宝島」製作委員会

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