「春色二人道成寺」歌川国貞(3世) 東京都立図書館
(新田 由紀子:ライター)
映画『国宝』が大きな話題だ。興行収入は110億円を突破、実写の邦画では1993年公開の『南極物語』を超えて歴代2位(8月21日時点)。第98回米国アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品にも決定した。この『国宝』現象ともいえるブームを歌舞伎の専門家はどう見るのか? 分析してもらった。
「3時間があっという間」「主演二人の踊りもすごい」と評判に
興行収入110億円を突破し、聖地めぐりまで盛り上がっている『国宝』。主人公は、任侠の一門に生まれながら、抗争で父を亡くした立花喜久雄(吉沢亮)。歌舞伎の名優・花井半次郎(渡辺謙)に引き取られ、その実子である俊介(横浜流星)と競いながら芸の道を進んでいくストーリーだ。
昨今、映画がヒットする法則と言えば、若い層を狙う、原作が人気のコミック、テレビ局とタイアップ、動員数が多い夏休み・冬休みかゴールデンウィークに公開など。これらにひとつもあてはまらない『国宝』が、邦画の歴代観客動員数でそれまで2位だった『南極物語』を抜き去り、1位の『踊る大捜査線THE MOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!』につぐ2位の782万人を記録したのだ。
175分と長い上映時間にもかかわらず、「主演二人の踊りもすごい」と、中高年はもちろん、それまで歌舞伎に興味のなかったZ世代までが映画館に足を運ぶことになった。
原作である吉田修一の小説『国宝』で歌舞伎監修をつとめ、映画でも資料提供などを行い、劇場パンフレットの歌舞伎解説も執筆している、早稲田大学文学部教授で早稲田大学坪内博士記念演劇博物館館長の児玉竜一さんも、完成した映画を試写で観て、3時間があっという間だったという。
一方で、「誰もこれほど大ヒットするとは予測していなかったでしょう」とも……。