40代は、模索の時期。まだまだ自分に可能性はある気もするけど、かと言って20代の頃のように無数の選択肢があるとは思えない。今までやってきた経験値から来る安心がある一方、それが飽きや倦怠を生む要因になることも。このままこの道を進み続けていいのだろうかと不安に揺れる夜も一度や二度ではありません。

そこでお話を聞いたのは、向井理さん。『ライオンの隠れ家』ではDV夫の恐怖と哀愁で視聴者の胸を揺さぶり、『舟を編む 〜私、辞書つくります〜』では軽薄そうに見えて頼れる宣伝部員役で魅了。年齢を重ねるごとに男の色気と余裕をまとい、俳優としてもますます魅力が増しています。


次回作は、劇団☆新感線の『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』。自身3度目の出演となる劇団☆新感線の45周年記念公演を華やかに盛り上げます。

向井理、“向いてない”俳優業を20年続けてこれた理由「台本をもらった瞬間からもう必死。そのプレッシャーが刺激になっている」_img0

 

向井さん自身も今年でデビュー20年目。けれど、マンネリを感じることはないと言います。決して向いているとは思っていないという芸能の仕事をなぜ続けてこられたのか。向井さんの仕事に対するスタンスから、ミドルエイジを生き抜くヒントを学びます。

 



 


好きでもない。向いてもない。それでも芝居を続けてきた


――「ミッドライフクライシス」という言葉があるように、中年期は気持ちに浮き沈みが生まれがち。特に40代は人生に停滞感を抱くことも多いと思うのですが、向井さんはどうですか。

僕はあんまりそういうのを感じたことがないかもしれないです。と言うのも、この仕事って刺激の連続なんですよ。特に新感線なんてまさに劇薬ですからね(笑)。もちろん時にモチベーションが乗らなかったり、波は多少ありますけど、でも40代になって気持ちが衰えるとか、そういうことは今のところ感じていないです。

――2006年デビューですから、俳優生活も今年で20年目。一つのことをこれだけ長く続けるというのは、それだけですごいことです。

正直、こんなに長く続けられるとは思っていなかったです(笑)。最初の頃なんてオーディションに行っても全部落ちるし、やっぱり向いてないんだな、次は何の仕事をしようかなって考えることも普通にありましたから。

――向いていないと思うこともあったんですね。

今でも向いていないと思っていますよ。自分のことをあまり芸能人だと思いたくないというか。僕の場合、大学を卒業してから短かったとはいえサラリーマンをやっていた時期もありますし。テレビや舞台に立つ側じゃない時期が長かったので、いまだにすごい特殊な仕事だなと思っています。たぶんそれはずっと思い続けるでしょうね。

向井理、“向いてない”俳優業を20年続けてこれた理由「台本をもらった瞬間からもう必死。そのプレッシャーが刺激になっている」_img1

 

――決して向いているわけではないというこの仕事を続けられたのはなぜでしょうか。お芝居が好きだからですか。

お芝居は、好きではないかな。

――好きじゃないんですか。

うーん。言い方が難しいんですけど、仕事なので。たとえば、好きだけの話で言ったら、僕、サッカーが好きなんですよ。でも、当たり前ですけど、僕はプロのサッカー選手じゃないし、好きだからプロになれるわけでもない。好きはあくまで趣味の世界。仕事に必要なものってまた別で。僕にとって、仕事=プロだから。プロとは何かと言ったら、結局どれだけ努力ができるかなんですよね。

――なるほど。求められるものに応えるために、どれだけ努力できるかどうか。

たぶんそこが今も僕が仕事を続けている理由の一つで。毎回、新しい台本をもらうたびにプレッシャーなんですよ。今でも新しい作品が決まるたびに感じるのは、喜びよりもプレッシャーのほうが大きくて。今回の新感線なら声をかけていただくのは3度目なので、やっぱり前の2作を超えてくれるよねという期待がある。その期待に応えるために、台本をもらった瞬間からもう必死です。プレッシャーが刺激になって、気持ちの部分で張りが生まれているところはあると思います。

成長を止めない方法は、常にハードルを設定すること

 

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