美しい姿勢

OK McCausland

私たちの姿勢改善への探求は続いている。というのも現代の生活は体を前へ傾け、無数のスクリーンに向かい、スマートフォンの上にのめり込むことを半ば常態化させるからだ。頭を高く掲げ、その所作にふさわしい振る舞いで人生を歩きたいという願いは、まさに“背筋を伸ばして”注目すべきテーマとして根強く残っている。

UK版『ELLE』エディターのナオミはこう振り返る。「子どもの頃バレエを習っていました。趣味になる以前に、まず、姿勢の大切さを体で理解させてくれたのがバレエ。先生はこう教えてくれました。天井に座った小さな妖精が自分の頭頂から伸びるリボンをすっと引いているところを思い描いてごらん、と」。

「週に3度通うこともあった約15年のバレエ経験が、一生ものの美姿勢を保証してくれるはず。そう思っていた。ところがデスクワークが、その目論見をあっさり打ち砕きました。ファッションウィークのランウェイ写真の背景に写り込んだ自分の横姿を見て、現状の悪さに愕然としました。多くのデザイナーが好む観客席のひな壇式ベンチは背もたれがなく、背中は自力で支えを探すしかない私の背中は文字どおり、私を“支えて”はくれませんでした」

誇張された男性的な姿勢は時代遅れ!?美しい姿勢

Arturo Holmes

「よい姿勢は、他人の中に見つけては称賛し、自分自身もそうなりたいと願うものです」と、元オステオパシー専門医で「Health Magic」創設者のクリス・ランバート=ゴーウィン氏は言う。「私たちはそれをリーダーシップやその人が持つ自信、そして身体的な魅力と結びつけています」。

ランバート=ゴーウィン氏は「高齢者を除くと、姿勢改善を相談しに来る人の大半は30〜40代の女性です」と述べている。理由の多くはストレスと、“すべてを両立させる”プレッシャーだ。しかし彼は、胸を大きく張って体格を膨らませるかのように見せる、あからさまな“男性的姿勢”の考え方は時代遅れだと主張する。政治家たちには、いわゆるパワーポーズは持続不可能で、体の機能を阻害することを知ってほしいという。筋肉が不自然に緊張して息を止めてしまうため、直立する以外ほとんど何もできなくなるからだ。

そうではなく、いい姿勢とは、足裏を床にしっかり根づかせ骨盤をわずかに前傾させ、バレエの先生から叩き込まれた“頭頂部から糸で引き上げられる”感覚を保つことだという。スーパーマンが試みるようなものより、はるかに繊細で洗練されている。最近では、カイリー・ジェンナーがまさにそれを完璧に体得しているのを目の当たりにした。

美しい姿勢

Marc Piasecki

一時的なうつの改善にも効果的

いい姿勢は社会的に見栄えがよくなるだけでなく、気分そのものもよくしてくれる。「うつの症状を一時的に和らげる最も手っ取り早い方法は、姿勢を整えて上を向いてもらうことです」と、ランバート=ゴーウィン氏は付け加える。「あくまで一時的な対処ですが、顔を上げているその瞬間、人は物理的にうつ状態ではいられません。笑顔をつくるのと同じ効果があるのです」。

世間の評価とヘルス/ウェルネスが交わる領域の多くがそうであるように、姿勢に関しても、Aリストのセレブや富裕層上位1%は一歩先を行き、シルビア・コーエン氏のようなボディランゲージコーチに助けを借りる。

コーエン氏は、直近ではクライアントがカンヌのレッドカーペットで強い印象を残すのをサポートしたばかりだ。「姿勢が整うと視線が水平になり、周囲との関わり方がぐっとよくなります。人生は私たちからいい姿勢を奪っていきます。環境的や感情的な要因が影響し、その人がどれだけ回復力や折れにくさを備えているかを物語るのです」とコーエン氏は話す。

彼女がクライアントと向き合う際の焦点は、体のポジションを整え呼吸を最大限に使える状態にして、スポットライトの下でもリラックスできるようにすることだ。「姿勢を整えれば緊張が解けて、十分な呼吸にアクセスできます。そうしてはじめて、プレッシャー下でもやるべきことができるようになる。私のクライアントに必要なのはまさにそこです。何千人もの観客の前でステージに立つことも、レッドカーペットを歩くことも、極めてプレッシャーの高い状況になり得ますから。」

美しい姿勢

Rindoff/Dufour

来週のスケジュール帳に映画のプレミアは入っていないかもしれないが、私たちみんなにとっても本番はある。結婚式から仕事のプレゼンまで、背筋を少し伸ばして座り、脊椎の一つひとつ、肩甲骨、頭や首の位置づけが、体全体の機能にどれほど影響しているかに気づくことは誰にとっても有益だ。

「“できるまで装う(fake it until you make it)”という考え方は、自信だけでなく美姿勢にも当てはまります」とコーエン氏はつけ加える。ただし彼女の実践では、姿勢を使ってもっと深いところまで到達することが目的だ。「本当は装う必要なんてないんです。すでに持っているものを見つけ直し、もう一度つながること。そのすべてが姿勢と関係しています」。

人気を誇るセルフタンニングブランド、「Isle of Paradise」の創業者ジュールズ・ヴォン・ヘップ氏は、近著『The Confidence Ritual(自信の儀式)』で、正しい姿勢がボディポジティブに生きるうえで不可欠だと説く。「日常を儀式に変えると、一つひとつの行動に目的と意図が生まれ、次の行動へ連鎖していきます」と、よりよい姿勢をとることを意識的に選ぶ効用を語る。

「私の経験ですが、自分の体に対して根深い嫌悪感を抱いて自信を失っていた頃の私は背を丸め、自分の身を隠そうとしていました。まるで見られること自体が恥ずかしいかのように」。同時に彼は、その逆も成り立つと考えている。「姿勢と自信は相互に結びついています。自分の体を愛していればそれを大切にし、役立つエクササイズにいっそう励むようになるのです」。

エディターのナオミもこう振り返る。「私の姿勢を再教育してくれたのはエクササイズクラスでした。ロンドン・ショーディッチのフィットネスジム「Frame」でのリフォーマーピラティスとウエイトトレーニングは私の体幹を強くしました。デスクに向かうときもレストランのテーブルに座るときも、体がしっかり支えられていると感じます。そして姿勢に気を配るようになった分、写真映りもよくなりました。被写体でも、背景に映っているだけでも」。

「そして姿勢を整えていちばんよかった、そしていちばん驚いたのは、身の回りの環境にフォーカスできるようになったこと。美姿勢のままこっそりスマホを打つことはできません。目の高さまで持ち上げる必要があるからです。結果として、周囲への関与と注意が増し、会話もうまくいくようになった気がします」。コーエン氏も「確かに姿勢は私たちが周囲の環境とエネルギーをどう交わすかに影響します」と同意する。姿勢を少し正すだけで、見える景色は変わってくるものだ。

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Realization : Naomi Pike、Translation & Text : Nathalie Lima KONISHI
出典:UK ELLE

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