広い敷地と膨大な数の展示ゆえに、めまぐるしい移動を余儀なくされることも多いであろう大阪・関西万博。しかしながら、各国ともパビリオンの建築に力を入れているだけに、移動中も見逃したくないところだ。
斬新なデザインのパビリオンも多数あるが、「未来社会の実験場」をコンセプトに掲げる大阪・関西万博だけに、新しいテクノロジーや素材、循環型の考えを取り入れた建築も少なくない。そこで、先進的な取り組みによって“建築の未来”を提示した7つの建築を紹介していこう。
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PHOTOGRAPH: CHRISTOFFER RUDQUIST
BLUE OCEAN DOME
建築設計:坂茂
紙管を利用した建築で知られ、2014年のプリツカー賞を受賞した建築家・坂茂が設計。竹集成材や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、再生紙の紙管という3つの素材でドームを構成した点が特徴で、世界で初めて構造材にCFRPを採用した建築でもある。解体・移設・再利用を前提とした「軽い建築」というコンセプトで、建物の重量を抑えることで杭を打たずに施工を実現した。
被災地などで利用される仮設建築の第一人者でもある坂茂らしく、万博の期間限定という条件を逆手にとり、廃棄物の発生を削減しながら新たな建築材料の可能性を模索したといえる。万博が閉幕後にはモルディブに移設されることが決定しており、サーキュラーエコノミーの時代における建築の未来像を示したと言っていい。
エリア:西ゲートゾーンMAP番号:W06予約有無:必要(一部のドームは不要)開館時間:9:00~21:00
PHOTOGRAPH: CHRISTOFFER RUDQUIST
大阪ヘルスケアパビリオン
建築設計:東畑建築事務所
「鳥の巣」がコンセプトの建築。樹脂製の透明な膜屋根に水を循環させる「ウォーターベール」と呼ばれるシステムと、DNAから着想した二重螺旋の木製らせん柱が特徴的だ。複数の楕円形の平面が有機的に重なり合う建物内の構成は「鳥の巣の中にある卵」を表現しており、コンピューテーショナルデザインによって複雑な球面屋根の幾何学的形状を実現している。
“水都”として栄えてきた大阪の歴史を踏まえた「木」と「水」の再構築という設計思想は、地域性を取り込みながら、最新のデジタル技術との融合によって次世代の“環境建築”を提案した。パビリオンの「REBORN」というテーマを建築で体現したともいえる。
エリア:東ゲートゾーンMAP番号:E02予約有無:一部は予約不要開館時間:9:00~21:00