2023年に世界的ヒットを記録したKOTAKE CREATEによる個人制作のインディーゲームを実写映画化した「8番出口」の上映が、8月29日より開始された。本作では二宮和也さん演じる主人公が、無限回廊と化したループする地下鉄通路で不可解な異変を見つけながら脱出を目指す。

 最速上映を鑑賞してきたので、感想とともに「あのゲームをどうやって映画にしたのか?」という点を軸にレビューをお届けする。以降は本編のネタバレを含むため、ご注意頂きたい。

【映画「8番出口」予告【8月29日(金)公開】】

そもそも「8番出口」とは

 「8番出口」は、2023年にインディーゲーム開発者・KOTAKE CREATEによってリリースされた、ホラー要素を含むウォーキングシミュレーター。プレーヤーは無限に続く地下鉄通路に閉じ込められた状況のなか、そこで起きる「わずかな異変」を見つけながら、ゴールである「8番出口」を目指す。

 通路内でのルールは以下の4つ。

・異変を見逃さないこと
・異変を見つけたら、すぐに引き返すこと
・異変が見つからなかったら、引き返さないこと
・8番出口から外に出ること

 なにか異変に気付いたら戻り、なければ進む。もし正しければ【0番出口】→【1番出口】→【2番出口】という具合に進み、最終的に8回連続正解することで【8番出口】から脱出できる。ただし、途中一度でも不正解(異変を見逃して進む、もしくは異変がないにも関わらず戻る)すると、再び【0番出口】からやり直さなければならない。

 一見シンプルながら、同じように見える通路の中で「違和感を探す」という体験がプレーヤーに強烈な没入感と不安を与え、日本だけでなく海外でも話題となった。その独特な世界観とゲーム性が映画に昇華され、2025年に実写映画化されたのが今回の「8番出口」となる。

主人公、おじさん、少年という3人の視点から物語を描く意外性

 原作「8番出口」は詳細なストーリーがなく、「異変を探しながら脱出を目指す」というゲーム性にすべてが集約されている。そのため、実際に映画を見る前までは「あのゲーム内容で95分間も飽きずに見続けられる内容なのか……?」と、やや勘ぐっていた。もしかするとオリジナル要素を盛り込み、無理矢理ドラマ仕立てにするのではないかとも思ったが、結論としてそれは杞憂だった。

 序盤は、主人公の迷う男(演:二宮和也さん)がループする不思議な地下鉄通路に迷い込み、試行錯誤しながら脱出を目指す様子が描かれる。このパートは一人称視点で描かれ、原作をプレイしているのと非常に近い感覚を覚えた。

 その後、三人称視点に切り替わって物語が進むのだが、無機質な通路で「なにか異変があるのではないか」と迷いながら進む様子を見ていると、ついこちら側も疑心暗鬼になってしまう。気付けば主人公のように【~番出口】の番号が進むと安堵し、【0番線】に戻ってしまうと落胆していた。

 この共感性を生むカメラワークと演出は素晴らしかったが、ここまではある意味、予想の範囲内といえる。しかし、中盤に差し掛かったところで、本作オリジナルキャラクターである謎の少年(演:浅倉成さん)が出現。そして物語の視点は、地下通路を「歩く男」(演:川内大和さん)に切り替わる。まさか原作に登場する名物NPCの視点で物語が描かれるとは思わず、かなり驚かされた。

 じつはこのおじさんも、この不思議な地下鉄通路に迷い込んだ人物のひとり。謎の少年と共に脱出を試みるも、途中で違和感を見逃し【0番出口】に逆戻り。落胆しつつも再び歩き始めると、なぜか急に地上へと続く【8番出口】が現われる。歓喜するおじさんだったが、原作ファンなら、それが罠だと気付くだろう。異変を感じた少年が止めようとするも、おじさんはそれを振り切って進み……。という具合だ。

 その後、視点は謎の少年に移り、再び主人公の二宮和也へと戻る。この少年がかなりのキーマンなのだが、それはネタバレofネタバレになるので割愛する。

別れ話をした元彼女から伝えられる「赤ちゃんができた。どうする?」

 地下鉄通路からの脱出というメインストーリーのほか、重要となるのが二宮和也演じる主人公「迷う男」と、小松菜奈演じる「ある女」の関係性だ。

 主人公は地下鉄通路に迷い込む直前、別れ話をしたばかりの元彼女から電話で「赤ちゃんができちゃった。どうする?」と伝えられる。主人公は戸惑いのなか通話を続けるが、途中で電波が不可解に途切れ、やがてループする世界に迷い込んでしまう。

 物語が進むにつれても、子どもに関しての答えが出ない主人公。そんななか、なぜか通路に「ある女」が現われる場面も。そして、謎の少年との関わりにより、徐々に心境に変化が起こり始める……。

 物語を彩るこの二軸が、「8番出口」を見事に映画にしている。それでいて、原作の良さを逸脱していないバランス感覚が素晴らしかった。

原作ファンならニヤリとできる”異変”が盛り沢山。オリジナルのホラー要素も

 本作で描かれる地下鉄通路内の異変は、基本的にゲームで登場したものが多い。例えば、ドアノブの位置が違う、ポスターの目線が動く、おじさんが真後ろで微笑むなど様々だ。原作ファンならば、ついつい「このあたりに異変がありそう」と探してしまうことだろう。

 長い直線部分の通路は原作ほぼそのまま。ただし、曲がった先に本作オリジナル要素となるコインロッカーやゴミ箱、証明写真機なども用意されている。ここでのホラー要素を含んだ異変は、おそらく映画を見た方全員が「ヒエッ」と驚かされたハズだ。次々と異変が現われるため、95分間まったく飽きずに楽しむことができた。

 ちなみに、ほぼすべての”異変”は作品を見ていれば気付くようにできているが、筆者は1箇所だけわからない部分があった。それは最初期のループ。おそらくどこか異変があったのだろうが、つい見逃してしまったようだ。ぜひとも、その正解を教えて頂きたい……!

 このように「あれ異変だよな?」「異変なかったよね?本当になかったよね!?」と、主人公と共に攻略していく感覚が非常に面白かった。

ゲーム未プレイで映画を楽しむのも大いにアリ! むしろ記憶をリセットして見てみたい

 原作をプレイされた方は存分に楽しめることだろう。そして未プレイの方もご安心を。元々明確なストーリーは語られない作品なので、真っ白な状態から物語を楽しむのもアリだ。むしろ、すべてが新鮮に楽しめることを羨ましくも思う。

 同じ場所をひたすらループするゲームをここまで面白く描くとは……というのが正直な感想だ。ミニマルで不気味な雰囲気を忠実に再現しながら、新たなストーリー性と映画的表現を加えた本作は、ゲームファンにも映画ファンにもオススメできる作品となっている。

 ちなみにラストシーンの主人公のある決断は、かなりグッとくるのでぜひ注目を。二宮くん、格好良い。

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