アーティストの移住を支援する海辺の島が舞台の映画『海辺へ行く道』。何にもとらわれない自由な発想で芸術をうみだす子どもたちと、さまざまな思惑を抱えた本物なのか詐欺師なのかわからない大人たち。いいかげんで、でもまっすぐに、もがきながら生きている彼らの日常を、ユーモアたっぷりに描き出した本作に出演して以来、プライベートでも仲良しだという唐田えりかさんと菅原小春さんにお話をうかがいました。

唐田さんが菅原さんとの思い出について振り返った文章はこちら。
前編「唐田えりかが綴る「親友・菅原小春と過ごした、一生忘れない京都の夜」
後編「さらけ出すことがなんにも怖くなくなった」女優・唐田えりかが見た“東京”

――完成した映画をご覧になって、いかがでしたか?

唐田:私はもう、自分の演技を見て、すごく情けない気持ちになってしまいました。私は本作では、高良健吾さん演じる包丁売り・高岡の恋人という役まわりだったのですが、高良さんはたぶん、現場に入る前にしっかり演技のプランを組みたたてくる方。私とはあまりに質の違う素敵なお芝居をされるので、二人でいるシーンを観るたび打ちのめされました。

菅原:私は、えりかの演技すごくよかったと思うけどな。高良くんの、包丁売りとして詐欺師らしく計算されたずるさとかでたらめさがあるからこそ、えりかが演じたヨーコのふわっとした自然体が生きていて。どっちも、よかった。というか、そういう二人だからこそ、よかったと思う。

唐田:確かに、自然体では演じられていたと思います。2年がかりだった『極楽女王』の撮影が終わって2~3カ月しかたっていない現場だったので、張り詰めていたものがゆるんで「やったー、夏休みだー! 小豆島だー!」って浮かれていましたし(笑)。

菅原:えりかが演じるヨーコが海からざばっと気持ちよさそうに飛び出してくる場面なんて、最高だった。あんな女性が突然目の前に現れたら、そりゃあ、少年も恋に落ちるよねと思ったし、その甘酸っぱい空気感がすごく好きでしたね。えりかが出てくるシーンすべてがよかったから、試写を観てすぐ声をかけました。友達になってから、いかにヨーコが“えりかっぽい”役だったかに気がついた(笑)。

唐田:ヨーコが私っぽい、はすごく言われます(笑)。高岡の行商にくっついてあちこち点々としているヨーコも、どうせ長居はできないんだからせっかくならこの島で夏を満喫しようってタイプ。その解放感にも、うまくシンクロできたのかもしれません。役作りとして、一応、いつも一冊のノートに演じる人の生い立ちや人生を想像してまとめたりはしているのですが……・。

菅原:すごい!

唐田:でも、しっかりプランをかためたりはしていなくて。基盤だけ固めておいて、あとは現場にいって感じられることを生かしたいんですよね。だからこそ、高良さんとの対比に落ちこんだりもしました。

菅原:でも、そういうえりかの柔軟さが、役に合っていたんじゃないかと思います。映画そのものが、なにかとシリアスになりがちな空気をぶったぎってくれる作品でもあったので。もちろん、大事なことをまじめに語る作品は必要だし、真剣に向き合わなきゃいけない問題が世の中には溢れているんだけど、だからこそ、今はみんなが考えすぎて、行き詰まっちゃってる気がするんです。そんななか、この映画は「生きているだけでもうみんな、十分じゃない?」って思わせてくれる。

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