展覧会「柚木沙弥郎 永遠のいま」が、東京オペラシティアートギャラリーにて、2025年10月24日(金)から12月21日(日)まで開催。静岡市美術館などでも開催される巡回展だ。

柚木沙弥郎の75年にわたる創作活動を辿る 柚木沙弥郎《木もれ陽》2019年 松本市美術館蔵 画像提供:ギャラリーTOM 柚木沙弥郎《木もれ陽》2019年 松本市美術館蔵 画像提供:ギャラリーTOM

柚木沙弥郎(ゆのき さみろう)は、2024年に101歳でこの世を去った日本を代表する染色作家。無名の職人たちが造る日用品に美を見出す「民藝運動」に影響を受けて染色の道に進み、のちに版画やコラージュ、絵本、立体作品、ガラス絵など、実用の枠を超えた自由で多彩な表現へと創作の幅を広げた。

柚木沙弥郎《幕》1961年 坂本善三美術館蔵 柚木沙弥郎《幕》1961年 坂本善三美術館蔵

企画展「柚木沙弥郎 永遠のいま」では、75年にわたる柚木の創作活動の全貌を紹介。身近な「もの」への愛着や、日々の暮らしに潜む喜びから生み出されたユーモラスで色彩豊かな作品の数々は、変化の時代にあってこそ大切にしたい「いま」の姿を示してくれる。

染色作家としての進化 柚木沙弥郎《注染ロマネスク文布》(部分) 1959年 日本民藝館蔵 撮影:村林千賀子 柚木沙弥郎《注染ロマネスク文布》(部分) 1959年 日本民藝館蔵 撮影:村林千賀子

民藝運動に携わった染色家、芹沢銈介(せりざわ けいすけ)のもとで染色の道へ進んだ柚木は、型染を学び、その一種である「注染技法」に取り組んだ。布を折りたたみながら型紙を使って糊を置き、染料を注いで色をつける「注染」は、もともと浴衣や手ぬぐいといった小幅の布地を染める技法だったが、柚木は工夫を重ねて広幅布へ応用。西洋化した暮らしにも対応する染め物へと発展させた。会場では、その技術を用いた《注染ロマネスク文布》などを見ることができる。

新たな表現技法の模索 柚木沙弥郎《『トコとグーグーとキキ』絵本原画》2004年 公益財団法人 泉美術館蔵 柚木沙弥郎《『トコとグーグーとキキ』絵本原画》2004年 公益財団法人 泉美術館蔵

1980年代以降、作風の自己模倣を危ぶんだ柚木は、版画やガラス絵、立体造形など新たな表現を模索。「トコとグーグーとキキ」など、絵本の制作にも注力するようになった。そして、染め物の服地としての需要が減少したことから、実用性に縛られない染色作品が増加。次第に自身のための制作へと向かっていく。

柚木沙弥郎《Memory》2019年 IDÉE蔵 撮影:乾剛 柚木沙弥郎《Memory》2019年 IDÉE蔵 撮影:乾剛

2000年代以降はさらに表現の幅が広がり、カフェ、ホテルといった商業空間での制作など、若い世代との協働にも積極的に取り組んだ。本展では、インテリアショップ「イデー(IDEÉ)」とのコラボレーションによる作品《Memory》や、「ディーン&デルーカ(DEAN & DELUCA)」カフェのために制作した作品の原画などを展示する。

柚木ゆかりの土地を辿る 柚木沙弥郎《『注文の多い料理店』絵葉書型染原画》1969~1972年 光原社蔵 撮影:いわねだいすけ 柚木沙弥郎《『注文の多い料理店』絵葉書型染原画》1969~1972年 光原社蔵 撮影:いわねだいすけ

「柚木を巡る旅」と題し、作家ゆかりの土地や国内外の旅にもフォーカス。柚木が青春時代を過ごした長野県の老舗和菓子店「開運堂」広告として描いた作品の原画や、憧れの詩人・宮沢賢治の小説「注文の多い料理店」をモチーフとした絵葉書原画などを公開する。また、創作活動に影響を与えたインドや、憧れ続けたパリへの旅にまつわる作品も展示する。

【詳細】
企画展「柚木沙弥郎 永遠のいま」
会期:2025年10月24日(金)~12月21日(日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
開館時間:11:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜日(ただし11月3日(月・祝)、11月24日(月・振休)は開館)、月曜祝日の翌火曜日(11月4日(火)、11月25日(火)は休館)
観覧料:一般 1,600(1,400)円、大・高生 1,000(800)円、中学生以下無料
※同時開催「寺田コレクションハイライト 前期|収蔵品展085 寺田コレクションより」「project N 100 富田正宣」の入場料を含む
※( )内は各種割引料金。障害者手帳等保有者および付添1名は無料
※割引の併用および入場料の払い戻しは不可

【問い合わせ先】
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

柚木沙弥郎《注染ロマネスク文布》(部分) 1959年 日本民藝館蔵 撮影:村林千賀子柚木沙弥郎《『トコとグーグーとキキ』絵本原画》2004年 公益財団法人 泉美術館蔵柚木沙弥郎《Memory》2019年 IDÉE蔵 撮影:乾剛柚木沙弥郎《『注文の多い料理店』絵葉書型染原画》1969~1972年 光原社蔵 撮影:いわねだいすけ

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