毎年8月に開催されている「新宿三井ビル 会社対抗のど自慢大会」(写真は2024年の様子)
新宿三井ビル「会社対抗 のど自慢大会」をご存知でしょうか。東京・西新宿にある新宿三井ビルディングに入居するテナント企業が参加できるカラオケ大会で、毎年8月に開催されています。
参加者の歌唱力もさることながら、グループで参加しダンスやパフォーマンスに力を入れるチームや、シュレッダーの紙吹雪がステージに舞う様子など、その盛り上がりは毎年ヒートアップ。新宿三井ビルの屋外広場「55HIROBA」で開催されるため、入居するテナント企業以外でも観覧可能。ステージの動画がSNSにアップされると瞬く間に拡散され、SNS上でもかなりの人気を誇っています。
今年は8月27日~29日の3日間開催。8月27日~28日に行なわれる予選を勝ち抜いた20組が29日の決勝に進め、優勝者が決まります。審査員は音楽プロデューサーなどが名を連ね、各日ゲスト歌手の歌唱もあります。
会社対抗ののど自慢大会がなぜここまで盛り上がるようになったのか、主催の三井不動産に話を聞きました。
新宿三井ビルディング(編集部撮影)知る人ぞ知るイベントがSNSで広く認知
新宿三井ビルディング のど自慢大会の歴史は古く、ビル竣工の翌年・1975年から毎年開催されており、今年で48回目となります。
「新宿エリアはもともと浄水場でして、そこが区画されてたくさんビルが建ったという歴史があります。新宿三井ビルには大きな広場ができたので、そこで何か盛り上がることができないか、入居するテナント企業様との連携やつながりを生むためには何ができるか、そういったことを考えてのど自慢大会が始まったと聞いています」(三井不動産 ビルディング本部 新宿法人営業室 岡本隼さん)
SNSの普及とともにのど自慢大会の存在が広く知られるようになった印象ですが、SNSがない時代から「知る人ぞ知る」イベントとして注目されていたようです。
三井不動産 ビルディング本部 法人営業グループ 岡本隼さん
新宿三井ビル のど自慢大会は1社最大3組まで参加でき、毎年6月初旬~7月初旬の1カ月間がエントリー期間となっています。エントリーのうえ、初日と2日目に行なわれる予選を通過すると、最終日の決勝に参加できます。今年は93組の出場が予定されています。
持ち時間は、予選はワンコーラスのみ、決勝だとフルで歌唱できるというシステム。審査は歌唱力9割、パフォーマンス1割がおおよその審査基準とされています。
1社3組の制限があっても毎年参加者は右肩上がりで増えており、特に最近はSNSの発展もあり話題性が増しています。2020年~2022年の3年間は新型コロナウイルスの流行で開催できませんでしたが、それ故に2023年に再び開催されたときは大いに盛り上がったようです。
「3年間の休止からの再開は不安があり、感染症がまだ流行るなか開催してもいいのか、参加者は集まるのか、といった懸念がありましたが、いざ開催してみるとコロナ前以上に盛り上がりました。コロナ禍で人との交流が減り、イベントごとも少なかったことから、のど自慢大会に関心を持ってくれる方が多くいたようです」(岡本さん)
のど自慢大会が開催される新宿三井ビルの屋外広場「55HIROBA」普段の様子
2024年ののど自慢大会の様子。ステージと観客席の間に応援エリアがあり、参加者の応援隊は最前列で応援できます。2階の屋外スペースも観覧者で溢れています
1社3組までという出場ルールがありますが、参加希望者が3組を超える企業も多々あるようです。企業によって決定プロセスは異なりますが、「社内予選」を行なって出場者を決める企業もあります。
今年は初めて日本橋でも開催し、新宿三井ビルに先駆けて8月6日に開催されました。新宿大会の社内予選に落ちた人が日本橋大会に参加するなど、のど自慢にかなり情熱を燃やしている人もいるようです。
社内交流のために「ビル」ができること
いずれも1組10人まで参加できるので、グループで出場し、歌だけでなくダンスやフォーメーションの練習をする参加者も多くいます。チームで出場することにより、「これまで話したことがない社内の人と交流するようになった」「仕事でしか話したことがなかったけど、のど自慢大会をきっかけに仕事以外の話もするようになった」という声もあるそうです。
「毎年初日の1組目は三井不動産が担当しており、僕もチームで出場するので今は週2で集まって練習しています」と岡本さんは話します。本番が近づくと、三井ビルがある西新宿エリアのカラオケ店の予約が取りづらくなるといった話もあるとのこと。
また、三井ビルののど自慢大会といえば、シュレッダーの紙吹雪も有名ですが、この演出はどういった経緯で生まれたのか聞いてみました。
「シュレッダー紙吹雪はもうかなり前からある文化みたいで、いつからというのは社内の人も把握していないくらい昔のようです。なぜシュレッダーなのかというと、オフィスビルののど自慢大会なのでサラリーマンっぽいもの、というところから始まったと聞いています」(岡本さん)
シュレッダーの紙吹雪がステージに舞う様子も有名です
のど自慢大会が盛況なことから、三井不動産では他のビルでもさまざまなイベントを行なうようになりました。三井のオフィス対象の会社対抗クイズ大会、2024年には飯田橋グラン・ブルームで企業対抗綱引き大会などが行なわれています。
綱引き大会は飯田橋グラン・ブルームの10周年記念イベントの1つとして企画されましたが、かなり好評だったことから、今年は単独のイベントとして行なわれることとなりました。
「新宿三井ビルののど自慢大会は歴史が古いので、新宿三井ビル担当がのど自慢大会も担当していますが、他の三井ビルに関しては社内で企画を考えるチームが存在しており、ビル横断でイベントを考えています。入居するテナント企業さんにいかに喜んでもらえるか、という部分が根底にあり、そのなかでクイズ大会や綱引き大会といったイベントが生まれました」と岡本さんは話します。
三井の全オフィス対象の会社対抗クイズ大会。2021年はオンライン開催でした(編集部撮影)
2024年に飯田橋グラン・ブルームの10周年記念イベントとして開催された綱引き大会。好評だったことから、今年は単独イベントとして実施予定
のど自慢大会は屋外開催なので入居するテナント企業以外も観覧でき、他にも三井ビルの広場を使って近隣の人も参加できるお祭りなども多々開催されています。
街を象徴するビルは、中で働く人だけでなく近隣の人にも愛着を持ってもらえる場所として、これからも賑わいを見せてくれそうです。