ソニーストア銀座が8月20日にリニューアルオープンした。これに先立ち開催された報道関係者向けの内覧会では、単なる製品販売の場から、来場者一人ひとりの「体験」を重視した店舗へと生まれ変わった姿が披露された。


顧客の成功を支援する新拠点としてリニューアル

ソニーマーケティングの新宮俊一氏は、リニューアルの背景にある理念として、同社のコーポレートスローガン「あなたとずっと、感動を共に。」を店舗で具現化することが最大の目的であると語った。その実践のため、「体験」「共感」「カスタマーサクセス」の三つを重要な概念として掲げる。






ソニーマーケティング株式会社 カスタマーエンゲージメント本部・新宮俊一氏

「体験」とは、顧客が実際に製品を手に取り、豊かな使い方を実感する機会の提供である。そのため、ソニー製品だけでなく他社製品やソフトウェアも積極的に導入し、包括的な体験価値を追求する。


「共感」は、感動を共有するための出発点だ。店舗スタッフは「スタイリスト」と称され、顧客が実現したい目的に寄り添った提案を行うことで、顧客との間に共感を育むことを目指す。


そして最終的なゴールが、顧客の成功体験である「カスタマーサクセス」である。店舗を単なる販売の場から「カスタマーサクセスの聖地」へと変革させ、顧客同士も交流できる拠点作りが今回のリニューアルに込められた狙いだ。


続いて、ソニーストア銀座の店長、宮崎千夏氏が店舗の詳細を説明した。店舗の最大の強みは、専門知識を持つ「スタイリスト」の存在であり、近年では「推し活」など顧客の趣味に関心を持つスタイリストがパーソナルな提案を行うことで、強固な関係性を築いているという。今回のリニューアルは、この関係性をさらに進化させ、顧客同士が交流できるコミュニティ拠点へと店舗を変革させることが目的である。





ソニーストア 銀座 店長 宮崎千夏氏





店舗スタッフは「スタイリスト」と呼ばれ、単なる販売員ではない。顧客のライフスタイルまでを提案し、対話を通して「共感」を生み、それを「感動」へと繋げていくことを目指している


ソニーストア銀座、新フロアの全貌をレポート

リニューアルされた5階と4階の様子を紹介する。


5階のエントランスで来場者を迎えるのが、エンターテインメントシアター「SHIKAKU」である。現在は人気コンテンツ「鬼滅の刃」とのコラボレーション企画が展開されており、作品ファンを店舗へと誘い、そこからソニー製品の魅力に触れてもらう役割を担っている。シアターでコンテンツを体験した来場者は、自然な動線で奥のBRAVIAコーナーへと導かれる設計だ。




エンターテインメントシアター「SHIKAKU」



サウンドバー、ホームシアターシステムを取り扱う「Home Theater」コーナー


オーディオコーナーは4階から移設され、フロア中央に配置された。人気のヘッドホンを豊富に取り揃え、自由に試聴できる。ゲーミングコーナーも大幅に拡張され、最新ゲームを気軽に体験できる。






ヘッドホン、ウォークマン、スピーカーを扱う「Audio」コーナー




PCゲーマーのためのラウンジ「ZONE: 0(ゾーンゼロ)」

一方、4階はクリエイターやカメラユーザーのための専門的な拠点として再構築された。その中核をなすのが「シューティングスタジオ」である。ロールスクリーン式の背景を備え、ポートレート撮影からライブ配信まで多様なニーズに対応。撮影後の編集作業まで体験できるPCも完備し、一貫した制作フローを学べる。






さらに4階には、SNS出品などを想定した小物撮影エリアと、望遠レンズの性能を試せる動体・ミニチュア撮影エリアという、二つのユニークな「被写体コーナー」が新設された。








また、海外からの観光客によるカメラ購入需要に応えるため、免税対応の「オーバーシーズモデル」コーナーを5階からカメラフロアである4階へ移設。体験から購入までをスムーズに繋げる、より戦略的なフロア構成を実現した。





オーバーシーズモデルの販売コーナー


他社製品も揃う「シューティングスタジオ」で本物の制作フローを体験

リニューアルの大きな目玉の一つが、4階に新設された動画コーナー「シューティングスタジオ」だ。ここは単に機材を展示するのではなく、プロの制作環境を再現し、そのソリューションを丸ごと体験できる画期的な空間となっている。





撮影体験スペース「Shooting Studio」

インタビュー撮影を想定したこのコーナーでは、ソニーのシネマカメラ「FX6」を使用したマルチカメラ体制が組まれ、専用アプリで複数のカメラ映像をリアルタイムで確認できる。音響面でも、新製品のショットガンマイク「ECM-778」や定番のワイヤレスマイク「UWP-D21」などが常設され、音質の違いを実際に聴き比べることができる。





映像クリエイター向けモバイルアプリ「Monitor & Control」。スマートフォンやタブレット端末の大画面で、ワイヤレス映像モニタリングや、高精度な露出決定とフォーカス操作が可能






早速ショットガンマイクロホンの新製品「ECM-778」を搭載




B帯アナログワイヤレスマイクロホンパッケージ「UWP-D21」





ワイヤレスで伝送した映像を、ATOMOS社のモニターレコーダー「SUMO」で確認する。S-Logで撮影した映像は、「SUMO」上でRec.709に変換してプレビューすることが可能である。この方法は、実際の業務においてクライアントに映像を確認してもらう際に、利便性の高い提案となり得る


驚くべきは、ソニー製品に限定しないオープンな機材構成である。照明にはNANLITE、ワイヤレス映像伝送にはHollyland、カラーマネジメントモニターにはEIZOといった、業界で評価の高い他社製品を積極的に導入。DaVinci ResolveがインストールされたPCも用意され、撮影から編集、色と音の最終確認まで、プロのワークフローを一気通貫で学ぶことができる。




右側にはBenQ製のモニター、左側にはEIZO製のカラーマネージメントモニターが設置されており、カラーマネージメントモニター側で正確な色を確認できる環境が整えられていた


このスタジオが目指すのは、これから映像制作を本格的に始めたいと考える個人クリエイターが、「明日からでも再現できる」現実的かつ高品質なシステムを提案することである。プロユースでありながらも個人が導入を検討できる範囲に調整された機材選定は、未来のクリエイターたちの最前線基地となる可能性を秘めている。





Leave A Reply