19歳で出演した1本の映画『ラストタンゴ・イン・パリ』で人生が大きく変わってしまったマリア・シュナイダーの実話を基に描く『タンゴの後で』。この度、その『ラストタンゴ・イン・パリ』で最も問題となったシーンのリハーサルの様子を描く本編映像が解禁となった。

1972年に公開されたベルナルド・ベルトルッチ監督の映画『ラストタンゴ・イン・パリ』。

本作では“性の解放”をテーマにした物語や性描写が話題になっただけでなく、当時19歳だった新人女優マリア・シュナイダーが脚本にないシーンを何も知らされずに、レイプ同様に強行撮影され、その映像がカットされることなく公開されると、法曹界をも巻き込み、各国で「芸術か、猥褻か」の議論が繰り広げられることになった。

今回解禁となった本編映像は、その最も問題となったシーンのリハーサルの様子を描く場面。

撮影の準備で忙しく動くスタッフたち、ストレッチをするマーロン・ブランド(マット・ディロン)、そして、カメラ横で「本番と同じように緊張感を出すように」と指示をするベルトルッチ監督が映し出される。

「アクション」の合図で軽やかに部屋に入ってくるジャンヌ役のマリア・シュナイダー(アナマリア・ヴァルトロメイ)は脚本通りにセリフを発し、相手役のブランドからの挑発的な言葉やセクシャルな接触を力強くはねのけ、部屋を出ていく。

「完璧だ!照明を変えて撮ろう」と監督の満足げな言葉とは裏腹に、その表情には企みの影が浮かび上がっている。

この映像に続いて描かれる本番のシーンでは、マリアの不意を突くようにブランドは力づくで彼女を押し倒し、驚きと恐怖で泣き叫ぶマリアをカメラはとらえ続けていく。

本作『タンゴの後で』のジェシカ・パルー監督が、「マリアの視点だけに焦点を当て、彼女が経験したことを観客に感じてもらうことを重視した」と語るように、マリアが現場で受けた屈辱と冷淡な視線は、見る者に忘れられない衝撃を与えている。

さらに本作の公開に先駆けて、俳優として、監督として、スタッフとして、作家として、そして鋭い批評の目線を持つジャーナリストとして、映画やエンターテインメント、TVなどの現場に携わる各界著名人からコメントが到着。

夏木マリは「演技という名のもとに奪われた尊厳を、今、マリアの視点で感じる揺さぶり…」と絶句のコメント、作家の山崎ナオコーラは「『誰もが尊厳を保って仕事に臨める世界に変えたい』観終わった後、そう強く思った」と寄せる。

ドキュメンタリー映画監督・坂上香は、「〈マリア〉は過去じゃない。消費され、断罪され続ける〈マリア〉たち。マーロン・ブランドの『たかが映画だ』に返すよ、『クソくらえ!』」と憤りを隠さない。

映画監督・深田晃司は「まず映画に携わるすべての人が見ておくべき作品」とし、「撮影中の俳優に酷い暴力がなされるシーン、カメラは暴力とともに言葉なく見守るスタッフたちを映し出す。まるで、暴力の共犯者であるかのように。そこには助監督経験の長かったジェシカ監督自身の苦悩が投影されているはずだ」とコメント。

インティマシーコーディネーター・浅田智穂は、「かつてマリアに向けられた様々な『視線』の中で、彼女が戦い、傷つき、それでも生きてきた姿を目にした今、私たちは彼女の『視線』から目を逸らすことなどできないのだ」(プレス寄稿文より抜粋)とコメントしている。

『タンゴの後で』は9月5日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。

※PG-12(暴力描写や性的描写が含まれます)

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