8月15日から8月17日までの全国映画動員ランキングが発表され、公開5週目を迎えた『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(公開中)が引き続き首位をキープ。その詳細については後述するとして、このお盆休み期間の最大のトピックは、やはり『国宝』(公開中)の快挙だろう。

実写邦画歴代3位に浮上!『南極物語』超えも目前公開11週目も、初週末対比149%の驚異的な動員数を維持!公開11週目も、初週末対比149%の驚異的な動員数を維持![c]吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会

週末3日間で観客動員36万5000人、興行収入5億4400万円を記録し、前週の5位から3位へ再浮上を果たした『国宝』。6月の公開初週末から続いた“右肩上がり”の興行は6週目末にストップしたとはいえ、10週連続で初週末を上回る週末成績を叩きだし、平日も安定した成績を維持。毎週10億円近くの興収を上乗せしていき、8月17日までの公開73日間で累計動員747万3454人、累計興収105億3903万3400円と、ついに“興収100億円”の大台に到達した。

日本の映画興行において興収100億円に到達した作品は、今回の『国宝』でちょうど50本目。邦画の実写作品に限定すると、『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(03)以来22年ぶり4本目の快挙となる。すでに『踊る大捜査線 THE MOVIE』(98)の興収101億円を超えているので、実写邦画歴代3位。興収110億円で現在同2位の『南極物語』(83)をすでに射程圏内に収めているといえよう。

『鬼滅』『コナン』につづき、2025年3本目の興収100億円到達作品に『鬼滅』『コナン』につづき、2025年3本目の興収100億円到達作品に[c]吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会

また、2025年の公開作としては『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』と『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』(公開中)に続き3本目。毎年数本は興収100億円を突破する作品が現れるが、そのほとんどが初週末に興収10億円前後かそれ以上の成績をあげている。しかし『国宝』の場合は、初週末興収が3億4600万円。よく比較対象にされてきた『ボヘミアン・ラプソディ』(18)の同4億8700万円をも下回っており、いかに強力な持続力を携えた興行を展開してきたかがわかるはずだ。

この持続力の源はどこにあったのだろうか?単に作品のクオリティの高さや、さまざまな作品に絶大な効果をもたらしているSNSでの口コミの力だけで達成できるほど、“興収100億円”というハードルは低くない。ひとつ考えられることは、興行面でも観客の心理的にもネックになりやすかった“長尺”であるという点が、話題性の高さと伴って「劇場で観なければ」という意欲を強力に促す後押しとなっているのではないだろうか。

【写真を見る】“長尺”だから口コミの力が最大限に発揮された?前代未聞の持続力の源とは【写真を見る】“長尺”だから口コミの力が最大限に発揮された?前代未聞の持続力の源とは[c]吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会

多くの場合、長尺作品は配信やソフトで観るよりも劇場向きである。しかも昨今は映画に没入性を求める観客が増加しており、長尺へのハードルが下がっているどころか逆に求められつつもある。興味深いことに『国宝』の場合は長尺でありながら、50年の物語を描くうえでは明らかに短く、物語の密度が高い。そのため、こぼれた部分を補おうとするリピーターを惹きつけたり、原作小説に向かうきっかけとなったりと波及効果も生んでいる。それらを踏まえれば、興収100億円という快挙を成し遂げてもなお、“『国宝』旋風”に終わりは見えないのである。

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