体験は、まるで“没入型ドラマ”。そんな謎解きゲーム「503号室の郵便物」が登場しました。5日に正式発売され、初回生産分は1日で完売した作品です。
503号室の郵便物(販売ページより)
「503号室の郵便物」は、ARG作品を手掛けるクリエイター集団・第四境界と、日本テレビが共同で立ち上げたARGブランド「4×4 sect.(フォーバイフォーセクト)」(以下、4X4S)の第一弾作品です。
4×4 sect. ロゴ
そもそもARG(代替現実ゲーム)とは、日常世界をゲームの一部として取り込んだ体験型の遊びのこと。WebサイトやSNSなどオンラインの世界から、実際の施設や会場、実物のアイテムといったオフラインの場までを横断し、現実とフィクションの境界が曖昧になり、物語に没入できる体験ができます。
筆者は第四境界の立ち上げ当時からのファンで、4X4Sにも期待しており、今作も先行発売日に購入してプレイしました。
第四境界はこれまでにも、「人の給与明細」や「かがみの特殊少年更生施設」など、現実と仮想が交わる作品を手掛けてきました。たとえば「人の給与明細」では1枚の給与明細から持ち主に迫る物語が、「かがみの特殊少年更生施設」では実在するWebサイトを探索して施設の闇を暴く物語が展開されます。
本作は、「人の給与明細」と同じくパッケージ型作品で、物語は503号室の郵便物を購入するところから始まります。ネット上には「マンションの大家が勝手に住人の郵便物を販売している」という架空のニュース記事があり、その中には販売ページへのリンクも掲載。プレイヤーは好奇心からその郵便物を購入し、物語へと足を踏み入れます。
架空のまとめニュース記事。先行販売はこの記事を探すところから始まった
調査はWebブラウザを通して行うため、スマートフォンでもパソコンでも体験可能です。ただ、“スマホで何気なくネットを見ていたら、ふと気になるニュースを見つけた”という前提で遊ぶと、物語に自然と引き込まれ、没入感がぐっと高まると思います。
体験はパソコンからもできるが……(販売ページより)
本作はスマホのほうが没入感が高い
さらに、本作は映画「近畿地方のある場所について」とコラボしており、共通の世界観を持っています。そのため、映画を観ている人ならより深いリンクを感じられるでしょう。
体験時間は2~5時間ほど。謎解きの難易度も程よく、2人以上で協力して進めることも可能です。ややホラー要素を含むミステリー/サスペンスストーリーのため、小さなお子さんには向きませんが、夏休みに楽しむにはおすすめの作品です。
X(旧Twitter)に投稿されているプロモーション動画もかっこいいのでぜひ見て下さい
実際に遊んでみると、第四境界の得意とする“日常侵蝕”の巧みさに、日テレのノウハウが加わることで、物語のリアリティやキャラクターの深みが一層増しています。まるで本当に起きていることのような現実味を感じつつ、一方で自分がドラマの登場人物の中にいるかのような不思議な感覚も味わえます。この両立した体験こそ、本作の没入感の魅力です。
4X4Sは、日本でARGを広めるため「地上波との連動も見据えたARGの展開」を目指しています。今作でも新しい試みの一端を感じられ、第一弾から完成度の高い体験が楽しめました。本作が示した方向性が、次回作でどのように広がるのか、注目したいところです。
「503号室の郵便物」の価格は5500円。第四境界のオンラインショップから購入できます。