北海道に棲息するヒグマ
Photo By スポニチ
【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】8月18日午前11時からNHK・BSで放送された「日本百名山ミニ 15min」を見ていたら、北海道斜里町の羅臼岳(らうすだけ、1661メートル)が紹介されていた。3月に放送した「日本百名山」を再編集したものだが、何というタイミングだろう。複雑な思いがした。
羅臼岳といえば、8月14日に東京在住の26歳の男性会社員が登山中にクマに襲われて行方不明になり、翌15日に遺体で発見される痛ましい出来事があったばかり。全身多発外傷による失血死で、家族の悲しみを思うと言葉もない。この悲劇を受けて登山道や園地が閉鎖されただけに、この放送に余計違和感を覚えた次第だ。
知床で登山者がヒグマに襲われたのは、2005年の世界自然遺産登録後初めてのこと。2年ほど前には「OSO18」というコードネームで呼ばれた雄のヒグマが話題に上った。「OSO」はオソツベツ(上川郡標茶町・弟子屈町にまたがる一帯)という地名、「18」は前足の幅が18センチと推定されたことに由来。2019年から23年にかけて標茶町や厚岸町で66頭の家畜を襲い、うち32頭を殺した“加害者”だった。
本州に生息するツキノワグマよりも一回り大きなヒグマは体長2~2・8メートル、体重は250~500キロで、クマ科ではホッキョクグマと並んで最大と言われる。そんな巨獣と遭遇したら…想像するだけで恐ろしい。
筆者は道東の釧路で高校まで過ごしたが、子供の頃、市内の公園に檻に入れられた子グマが居て、よく見物に足を運んだ記憶がある。そんな実体験もあり、クマは遠い存在ではなかったが、このところ各地から連日のように届く出没情報には戸惑うばかり。周辺住民は生きた心地がしないに違いない。
大切に栽培したスイカやトウモロコシが被害に遭い、中には大胆にもゴミ箱を漁りに来る個体もいる。道内では鹿が増えすぎて街中でも頻繁に姿が目撃されるケースが少なくない。そんな鹿を追ってクマが山から降りてこないとも限らない。雑食のヒグマ。肉の味を覚えたら、それこそ「OSO18」のような怪物が現れる可能性は否定できない。共存してゆくため、早急の対策が不可欠だ。
続きを表示