1952年から1972年のアメリカ統治下にあった沖縄を舞台に、激動の歴史に巻き込まれていく若者たちの姿を描いた映画『宝島』が9月19日に全国公開されます。

© 真藤順丈/講談社 ©2025 「宝島」製作委員会 © 真藤順丈/講談社 ©2025 「宝島」製作委員会

公開に先立ち、本作の宣伝アンバサダーに就任した主演・妻夫木聡さんが大友啓史監督とともに全国を巡って作品の魅力を伝える“宣伝キャラバン”が決行され、8月9日には『OSシネマズ神戸ハーバーランド』(神戸市中央区)で「舞台挨拶付き先行上映 in 兵庫」が行われました。

神戸を訪れた妻夫木さんと大友監督が語った、沖縄への思いや平和への願い、作品の制作秘話など、熱いトークセッションの様子をお届けします。 

[ 広告 ] 記事の続きは下にスクロール

妻夫木聡&大友監督が来神!映画『宝島』全国宣伝キャラバン in 兵庫 会場レポート [画像]

先行上映の終了後、万雷の拍手に迎えられてスクリーンの前に登場した妻夫木さんと大友監督。

司会者から「神戸・兵庫にまつわるエピソード」を聞かれると、大友監督は「(過去に)『るろうに剣心』などの撮影でも来ていますし、実は今回のロケハンでも少し訪れていました。あとはNHKにいた頃、震災時にディレクターとして取材にも来ていました。皆さんと共に過ごしながら取材していたことを思い出します」とコメント。

妻夫木さんは「僕も映画の撮影でお邪魔したことがあります。それと、僕は福岡生まれで育ちは横浜なんですが、神戸はどこか横浜と空気が似ていて、親しみ深い街だと感じています。なので、こうして来られて本当に嬉しいです」と、笑顔で話していました。

投稿が読まれた来場者には「サイン入りプレス」がプレゼントされました! 投稿が読まれた来場者には「サイン入りプレス」がプレゼントされました!

続いて、来場者から投稿された質問・感想を紹介するコーナーが行われました。

「本作で一番心が震えたシーンを教えてください」という質問に、妻夫木さんは「難しい質問です」と話しながら、基地内でグスク(妻夫木さん)がレイ(窪田正孝さん)と想いをぶつけ合うシーンを挙げました。

妻夫木:この撮影は後半に行ったのですが、何度台本を読んでも全く想像できなかったことが、現場で起きたんです。レイを演じる窪田くんを前にした時、当然「グスクとして生きよう」と思って撮影期間を過ごしていましたが、走馬灯のようにグスクやレイのいろんな想いが一気に駆け巡りました。

自分でも考えていなかった感情が湧き上がってきたんです。これは久保田君がレイを演じてくれたからこそですし、監督も普段あまり細かく演出はしませんが、この時は久しぶりに一言くださって。そのちょっとした一言で僕らの中に何かが生まれるんですよね。現場で改めて「お芝居は生き物だな、映画は生き物だな」と感じた瞬間でした。

妻夫木聡&大友監督が来神!映画『宝島』全国宣伝キャラバン in 兵庫 会場レポート [画像]

続いて読み上げられたのは、大友監督への「抗争のシーンがかなり印象的でした。かなり貴重であろうクラシックカーを炎上させたり、ひっくり返したりしていて驚きました。どのように撮影されたのか教えてください」という質問。

大友監督:実際の「コザ騒動」ではアメリカ車がひっくり返されており、それを再現するために、当時の形を保った車をアメリカや韓国から探して集めました。そして、実際にひっくり返して、少し焼きました。スタッフの間でも「もったいない」という声が上がりましたが、やりましたね。ひっくり返すのも簡単ではなく、ワイヤーを張ってアクションスタッフが引っ張り、皆で一気に動かしました。

車両はすべて本物のヴィンテージカーで、撮影後もプロデューサーの泣き顔が忘れられません。

妻夫木聡&大友監督が来神!映画『宝島』全国宣伝キャラバン in 兵庫 会場レポート [画像]

そして、「戦後80年、沖縄返還から53年たった今、グスクが望んだ平和な世の中は実現できているのだろうか、と思いました。演じられたからこそわかる、平和への思いをぜひお聞きしたいです」という質問に妻夫木さんは、真剣な面持ちで言葉を紡ぎました。

妻夫木:グスクは最後にオンちゃん(永山瑛太)からバトンを受け取ったと思うんです。そして、そのバトンを次に受け取るのは、この映画を観た皆さんなんだと思います。グスクが思い描いた未来が、今だと思うんですよね。

ただ、グスクの望んだ未来かどうかは、正直僕にもわかりません。今が平和な世の中かと聞かれて、「はい」と言い切れない部分があります。今なお続く問題は当然ありますし、それは日本だけでなく世界各地でも同じです。

でも、今日皆さんが感じてくれた思いは、確実に未来への希望につながると信じています。映画にはそういう力があるし、その力が何かを変えるきっかけになると信じたいんです。

だから、このキャラバンでもただ「映画ができました、観てください」と訴えるだけではなく、一人ひとりに思いを伝えなければと思っています。

妻夫木聡&大友監督が来神!映画『宝島』全国宣伝キャラバン in 兵庫 会場レポート [画像]

妻夫木:この映画を作った意味はいろいろあります。2回の公開延期を経て、戦後80年という節目の年に公開されることになりました。今日(8月9日)は、長崎に原爆が投下された日でもあります。いろんな意味を感じながら、僕たちはこの作品に向き合ってきました。

忘れてはいけないし、知っていなければいけない。それを未来に託していくのは僕たちの使命です。一人ひとりの思いが希望ある未来に変わると信じていますし、それを諦めたくない。

俳優として、何かを叫び続けるというよりも、映画を通して表現し、知ってもらう。その機会を失ってはいけないと思っています。

妻夫木聡&大友監督が来神!映画『宝島』全国宣伝キャラバン in 兵庫 会場レポート [画像]

コーナーの最後に読み上げられたのは、「(最初に)沖縄で先行上映されたと聞いていますが、現地の方の感想で印象的だったものがあれば教えてください」という質問。

大友監督:はい、沖縄では6月頭に完成披露を行いました。その際、僕も妻夫木くんも、本土出身の人間として、沖縄の当事者としての発信になっているかどうか、ものすごく緊張して臨みました。

僕たちが本当に知らなければならないこと、当事者として考えなければならないことがたくさんあります。そんな思いを抱えて臨んだ中で、多くの方が「ありがとうございます」と声をかけてくださいました。

厳しい目でご覧になった方もいらっしゃったと思いますが、それでも「伝えてくれてありがとう」と言ってくださった。その言葉にはいろんな意味が込められていたと思いますが、作り手としては、私たちの代わりに伝えてくれてありがとう、という意味に受け取りました。

その言葉を胸に、日本全国を回っています。今日も、こちら本土の方から「知らなかったことを教えてくれてありがとう」と言っていただいたり、2度の公開中止を経ても諦めずに最後まで作ってくれてありがとう、と言っていただいたりしました。そういう言葉をいただくと泣きそうになります。

沖縄の方から受け取った思いを、映画でちゃんと伝えられているか、皆さんの中でその思いが育っていくか、そして映画自体も育っていくか―。公開に向けて、これからも映画と一緒に走りながら見届けていきたいと思います。

妻夫木さん、大友監督と来場者の皆さんで記念撮影♪ 妻夫木さん、大友監督と来場者の皆さんで記念撮影♪

最後に、お二人が来場したお客さんに挨拶を行って舞台挨拶は終了。

妻夫木:映画は、観てもらってようやく完成するものだと思っていますが、『宝島』という作品は「観てもらってなお成長している」と感じています。

皆さんの心の中で芽生えた感情は決して嘘ではないし、答えはひとつではないと思います。だけど、その思いが希望ある未来をつくっていくのだと思います。僕たちの子どもたちに何を託せるか、その子たちがどんな未来を描いていくのかー。それは僕たちが咲かせ続けなければならない使命だと思います。

たかが映画かもしれませんが、されど映画だと僕は思っています。映画にはそういう力があると信じています。

今回こうして神戸に来れたこともご縁だと思いますし、皆さんはもう“大友組”の観客部です!ノーギャラで、すみません…(汗)。これからは一人ひとりが宣伝アンバサダーとなって、『宝島』の輪を広げていただけたら嬉しいです。

「今がある」ということは、当たり前ではありません。その未来への希望を、ひとりでも多くの方に届けていただければと思います。今日は本当にありがとうございました。

自撮り棒を手に、来場者とのセルフィーを楽しむ妻夫木さんと大友監督。楽しそうな姿にほっこりしました(笑) 自撮り棒を手に、来場者とのセルフィーを楽しむ妻夫木さんと大友監督。楽しそうな姿にほっこりしました(笑)

大友監督:僕は以前、『ちゅらさん』という朝ドラをやっておりまして、それは復帰後の沖縄を舞台にした物語でした。1972年の復帰の年に生まれた女の子が主人公で、その制作を通じて、沖縄の人たちの「優しさの奥にある強さ」とは何なのかを考え続けてきました。

「いつか必ず復帰前の沖縄を作品にする」という強い思いを抱き続け、20年近く経ってこの原作と出会いました。高度経済成長期、東京タワーが完成し、大阪万博が開かれ、日本が最も活気づいていた時代に、沖縄ではこうした闘いが続いていたことを改めて知りました。「戦果アギヤー」という存在も知り、これは日本人全員が知るべき物語だと感じました。

太平洋戦争の沖縄戦では県民の4人に1人が亡くなり、今も基地の約7割が沖縄に集中しています。戦闘機の轟音で会話が途切れる日常もある。戦争の感覚が今なお続いている人が多くいるのです。僕たちはそれを忘れてはいけません。

この映画では、登場人物たちを通して、あの時代の沖縄を“追体験”してもらいたいと思っています。歴史の教科書で事実を知るだけではなく、感情を追体験することで何かが伝わるはずです。

当時の感情を共有してほしいという思いで、妥協なく制作しました。今日、それが皆さんにちゃんと伝わっているか、ドキドキしながらここに立っています。

妻夫木さんが言ったように、皆さんはもう“大友組”です。僕らの願いは、この映画を通して一人でも多くの人にあの時代の沖縄を追体験してもらうこと。そのために全国を回り、一人ひとりに直接お伝えしています。

戦後80年という節目の年に、この作品を多くの人に届けられるよう、お力をお貸しいただければ光栄です。本日は本当にありがとうございました。

[ 広告 ] 記事の続きは下にスクロール

妻夫木聡&大友監督が来神!映画『宝島』全国宣伝キャラバン in 兵庫 会場レポート [画像]

舞台挨拶の終了後、スクリーンの出口では妻夫木さんが宣伝アンバサダーとしての“名刺”を来場者一人ひとりに手渡すファンサービスも!本作にかける熱意の高さを、最後の最後まで感じさせてくれました。

映画『宝島』は9月19日よりロードショー!兵庫県内では『OSシネマズミント神戸』など12の劇場で上映予定。

Leave A Reply