2025年8月16日

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鑑賞方法:映画館

「普通がいいなぁ」

大日本帝国海軍陽炎型駆逐艦第8番艦・雪風。昭和15年1月就役。太平洋戦争開戦後、連合艦隊の主要な作戦には必ず名を連ね、その全てから生還したことから「幸運艦」として名高い。
特に5代目艦長・寺内正道は、選局が逆転されてから坊ノ岬沖海戦(戦艦大和特攻)まで、戦争後半の激戦を経験しており、連合艦隊の終焉を見届けている。
本作は、史実を基にしたフィクションであり、雪風乗組も架空の人物名で描かれている。また、一部時制も史実とは異なる。
雑感としては、映画というより、ドラマとして描いた雪風に思える。分かりやすく描くために実際よりくだけた描き方をした苦慮の痕が窺える。当時から「幸運艦」として知られていた雪風だが、その強運は持ち合わせたものではなく引き寄せたものだとする証言がある。元々艦内清掃や整備の徹底に厳格なことで知られた帝国海軍だが、雪風はその中でも艦内清掃が行き届いていたらしい。また、劇中でも描かれているように、碇泊中にも関わらずいつでも動けるように艦内の烹炊場(炊事室)は稼働させていた。こういった細かい積み上げを怠らなかった実に日本らしい艦ともいえるのである。しかしそれを全て見せると話が散らかるので、乗組の顔として先任伍長・早瀬(演:玉木宏)を登場させ、彼が先任の立場から艦内を忙しなく動き回る演出は雪風の雰囲気を出すのに一役買ったと思う。そして寺内艦長をモデルにしたであろう寺澤艦長(演:竹野内豊)も、実際の秘話を取り入れながら「生き残るべくして生き残った」雪風と、海軍兵学校の同期の戦死に胸を傷める人間くささが醸し出されていて個人的には好感が持てた。また、中盤のまさかの展開に自分としては虚をつかれた思いがし、しばらく呆然としていた。
それだけに勿体ないのがVFXと「強すぎるメッセージ」だ。戦闘シーンはミッドウェイ海戦から坊ノ岬沖海戦まで、後半の主な海戦は全て描かれているが、ひと目でCGと解る挙動に入り込めなかった。特に坊ノ岬沖海戦、戦艦大和の最期は演出自体も「男たちの大和」や「アルキメデスの海戦」の方が上で、かつ実際の撃沈の様子とは異なるのは如何なものか。もう少し予算というか、力を入れてやって欲しかった。
また、こちらはもうどうしようもない問題。戦後50年を経た辺りから、やたら登場人物に平和や生命の尊さを訴えさせる描写が増えたように思う。個人的にはこれは逆効果で、むしろ「日本のいちばん長い日」(1965)のようなドキュメンタリータッチで淡々と事実を伝える方が後々まで刺さるのであるが、そういう描き方をするとお客さんが入らないのだろうな。終盤はメッセージ性が強すぎて少し引いてしまったが、やむを得ない。
もう少し戦闘シーンが激しければという気持ちはあるが、悪くはないと思う。
それと、「ゴジラ-1.0」を事前に観ておいた方がいい。

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雪風 YUKIKAZE

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