「家族ゲーム」の一場面(C)1983 日活/東宝
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 森田芳光監督が1983年に発表し、社会現象を巻き起こした「家族ゲーム」が9月19日に開幕する第73回サン・セバスチャン国際映画祭(スペイン)のクラシック部門で上映されることが決まった。

 松田優作さん扮する三流大学の7年生という風変わりな家庭教師が、宮川一朗太(59)演じる高校受験生を鍛え上げる様をコミカルに描いた作品。冴えわたる森田演出で、キネマ旬報ベスト・テン日本映画部門1位や毎日映画コンクール日本映画優秀賞、由紀さおり(76)の女優助演賞、ブルーリボン賞監督賞など高い評価を得て、83年を代表する1本になった。

 2011年12月20日に61歳の若さで惜しまれつつ永眠した森田監督。26年の没後15年を前に、米国やフランス、韓国、台湾など海外でも再評価が高まっている中、東京・京橋の国立映画アーカイブでは8月12日から展覧会「映画監督 森田芳光」が開催中だ。

 「森田組へようこそ」「森田芳光を作ったもの」「森田芳光が作ったもの」「森田芳光の原点」「森田芳光のこれから」の5つのコーナーで構成された回顧展。「家族ゲーム」では横一列に並んだ食事風景が話題を呼んだが、森田組のスタッフが再製作した食卓も登場し、写真撮影が許可されるなど遊び心にもあふれている。他に再現された監督の書斎、マイルス・デービス「リラクシン」やジョン・コルトレーン「ブルー・トレイン」などジャズをこよなく愛した監督の愛聴レコード・ギャラリーなど充実した内容だ。

 さらには「の・ようなもの」(81年)、「ときめきに死す」(84年)、「キッチン」(89年)、「失楽園」(97年)、「黒い家」(99年)、「椿三十郎」(07年)などの脚本や「未来の想い出 Last Christmas」(92年)の原作者である藤子・F・不二雄さんから森田監督に寄せられた手紙、「僕達急行 A列車で行こう」(12年)製作の際の自筆の音楽ノートなど、貴重な秘蔵資料が「引き出しケース」に整然と収納されている。

 展示会と連動して10月14日から同26日、11月4日から同23日までは上映企画の開催も決定。「工場地帯」(72年)や「ライブイン茅ヶ崎」(78年)など初期8ミリ作品集を含む、31プログラム、計38作品がラインアップ。うち「メイン・テーマ」(84年)や「おいしい結婚」(91年)、「阿修羅のごとく」(03年)など15本がニュープリントで上映される。

 8月8日に開かれた内覧会には多くの映画関係者やジャーナリストに加え、根岸吉太郎監督(74)や阪本順治監督(66)、由紀さおり、秋吉久美子(71)、清水美砂(54)、伊藤克信(67)、宮川一朗太ら、森田作品を彩った出演者も多数参加。そんな中、公私にわたるパートナーで映画プロデューサーの三沢和子さんは「楽しい展示になっています。監督が存命中と同じくらい森田組が結集してくれました。見どころが多すぎて、じっくり見ると1時間半から2時間はかかると思います。何度か足を運んでもらえるとうれしい」とアピールした。展示会は11月30日まで。

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