カフェインを摂取し、自分の好きな曲を聞きながらウォーミングアップをすると、無酸素運動のパフォーマンスに相乗効果が現れるとする研究結果を紹介する。日常的に高強度トレーニングを行っている男性を対象として中国で行われた、二重盲検クロスオーバー試験の報告。
カフェインと音楽に相乗効果はあるか?
カフェインがスポーツパフォーマンスに有利に働くことは既に多くのエビデンスにより明らかにされている。また、音楽とスポーツパフォーマンスとの関連についても多くの研究が行われており、それらの研究を対象とするメタ解析からも有効性が報告されている。では、カフェインを摂取して音楽を聞いたとしたら、パフォーマンスはさらに向上するのだろうか?
今回取り上げる論文に研究背景として記されているところによると、このような視点で行われた過去の研究は、テコンドーで評価した2件存在し、いずれもそれぞれ単独よりも優れた効果を認めたと報告されているという。しかし、テコンドー以外では検討されておらず、解釈の一般化が制限されている。
以上を基に本論文の著者らは、無酸素性運動パフォーマンスの評価に広く用いられているウィンゲートテストによって、両者併用の相乗効果を検討した。
体育大学の男子学生を対象とする二重盲検無作為化クロスオーバー試験
研究参加者は北京体育大学の学生から募集された。適格条件は、3年以上の高強度トレーニング歴がある男性(カフェインのエルゴジェニック効果に性差が存在する可能性があることから女性は除外)で、日常のカフェイン摂取量が50mg未満であり(耐性の影響を除外するため)、筋骨格系の障害がなく、カフェインアレルギー、喫煙・飲酒習慣がないことなど。24人が参加し23人(21±1.62歳、BMI23.08±1.47)が、すべての試験を完了した。
試行された3条件
研究デザインは、二重盲検無作為化クロスオーバー試験であり、参加者全員が、(1)音楽のみ(プラセボ摂取+音楽を聞く)条件「Mus+PLA」、(2)音楽+カフェイン条件「Mus+CAF」、(3)対照条件(音楽を聞かず、かつカフェインまたはプラセボのいずれも摂取しない)という3条件を、順序を無作為化して行った。
音楽は自分で好みの曲を3~6曲選択。カフェインは3mg/kg、プラセボはマルトデキストリン200mgを外観から区別できないカプセルとして支給し100mLの水とともに、ウィンゲートテストの開始60分前に摂取した。なお、60分という間隔は、カフェインの血中濃度がピークになるのに要する時間。
ウィンゲートテストではエルゴメーターの負荷を体重の7.5%とし、最大努力速度で30秒間ペダルをこぐよう求めた。これら3条件の試行には、1週間のウォッシュアウト期間を設けた。
評価項目は、ウィンゲートテストでのピークパワー、平均パワー、総仕事量、心拍数、疲労指数、自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)、および、テスト前後での感情スケールのスコアなどだった。
研究期間中はカフェインやタウリン、クレアチンなどのエルゴジェニックサプリメントの摂取を禁止し、各テスト試行の48時間前からは激しい運動を控えるよう指示した。
音楽+カフェインでパワーや仕事量が増大し、有害事象には有意差なし
ウィンゲートテスト
では結果について、まずウィンゲートテスト関連指標をみると、Mus+PLAおよびMus+CAFは対照条件に比べて、ピークパワー、平均パワー、および総仕事量が有意に向上(p<0.05)。さらに、ピークパワーはMus+CAF条件の方がMus+PLA条件よりも高かった(p=0.01)。詳細は以下のとおり。
ピークパワー(W)は、対照条件が888.08±133.20、Mus+PLAは943.95+139.25、Mus+CAFは1,017.39+155.23。平均パワーは同順に、621.11+75.55、657.65+64.55、665.41+66.54。総仕事量(J)は、1万7,822.43+2232.28、1万8,871.13+1828.08、1万9,160.08+1960.68。
心拍数、疲労指数、自覚的運動強度(RPE)に関しては3条件で有意差がなかった。
感情スケール、有害事象
0~9点のリッカート尺度で評価した感情のスコアは、テスト前の時点では対照条件(0.96±1.02)に比し、Mus+PLA(2.21±1.28)およびMus+CAF(2.74±1.25)は有意に高値だった。しかし、テスト終了時点では3条件で有意差がなかった。
腹部の不快感、筋肉痛、尿量の増加、頭痛、不安・緊張、不眠という有害事象の報告は、3条件間に有意差がなかった。
これらの結果に基づき著者らは、「無酸素性運動を行うアスリートは、ウォームアップ中にアスリート自身が選んだ音楽と適度なカフェイン(例えば3mg/kg)を併用することで、パフォーマンスを向上させることができる。ただし本研究は実験室環境で実施したものであり、より広範な適用の可能性、とくに他のスポーツ競技(例えば持久系運動)や女性アスリートへの適用の可能性の検証が必要とされる」と総括している。
文献情報
原題のタイトルは、「Effects of Caffeine Intake Combined with Self-Selected Music During Warm-Up on Anaerobic Performance: A Randomized, Double-Blind, Crossover Study」。〔Nutrients. 2025 Jan 19;17(2):351〕
原文はこちら(MDP)
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【 スポーツ栄養Web編集部 】