SNSを中心に話題を集めた作家、背筋によるホラー小説を映画化した『近畿地方のある場所について』が公開された。その内容は大筋で原作小説同様、様々なメディアに収められた不気味な事件や事柄を提示し、最終的にバラバラだと思われた“点”が“線”となり、“得体の知れないもの”へと向かっていくストーリーが展開される。

作家、背筋によるホラー小説を映画化した『近畿地方のある場所について』作家、背筋によるホラー小説を映画化した『近畿地方のある場所について』[c]2025「近畿地方のある場所について」製作委員会

この小説の映画化を白石晃士監督が手掛けたというのは、必然だといえるかもしれない。なぜなら、原作の作風はまさに白石監督の過去作にして、日本のフェイクドキュメンタリー映画の傑作とされる『ノロイ』(05)に非常に近いものがあるからだ。

現在のモキュメンタリーブームにもつながる『ノロイ』

『ノロイ』の完成度の高さと娯楽性の高さは、ホラーファン、映画ファン、サブカル愛好家などを中心に評価され、同ジャンルの振興に大きく寄与することとなった。それは現在のフェイクドキュメンタリー&モキュメンタリーブームにもつながり、『近畿地方のある場所について』の原作小説にも影響を与えたことは想像に難くない。

つまり白石監督がもたらしたものが、また同じところへと“環流”されたことになるのだ。ここでは、『近畿地方のある場所について』公開のタイミングで、そのルーツと考えられる『ノロイ』を改めて振り返り、作品の魅力を再評価していきたい。

【写真を見る】取材映像やテレビの超能力番組&心霊番組など様々な記録映像で構成される『ノロイ』【写真を見る】取材映像やテレビの超能力番組&心霊番組など様々な記録映像で構成される『ノロイ』DVD 発売中 価格:1,222 円 発売・販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング [c]2005「ノロイ」製作委員会 ※記事公開時の情報です失踪した怪奇実話作家が残した映像作品を見ながら事件の真相に迫る

本作の中心となるのは、怪奇実話作家を名乗る小林雅文なる人物。彼は様々な怪異をルポルタージュしている。冒頭では、小林の家が全焼し、妻が焼死すると共に、小林自身もまた行方不明になったことが提示される。いったい、なぜそんなことになってしまったのだろうか。

残されていたのは、小林が残した映像作品「ノロイ」である。本作『ノロイ』は、その映像作品に記録された小林自らの取材映像やテレビの超能力番組と心霊番組、トークイベントの映像などを見せていきながら、事態の真相へと迫っていく。

怪奇実話作家、小林雅文が失踪前にまとめた映像作品を見ながら事件の真相に迫る『ノロイ』怪奇実話作家、小林雅文が失踪前にまとめた映像作品を見ながら事件の真相に迫る『ノロイ』[c]2005「ノロイ」製作委員会

このように映像だけが残されたという設定で見せていくスタイルは、「ファウンド・フッテージ」と呼ばれるジャンルであり、本作が“和製『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』”と呼ばれる所以となっている。また、作中での不鮮明なモノクロの監視映像を利用した演出は、世界的なヒットシリーズとなっていく『パラノーマル・アクティビティ』(07)の先駆けともいえる。

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