「moviegoer(ムービーゴーアー)」という言葉をご存知だろうか?映画館に行くという行為から生まれたこの単語は、「よく映画を観に行く人、映画ファン」という意味で、海外では広く使われている。この言葉をキーワードに、“映画ファンの皆さんに、もっと映画館で映画を観てほしい”という想いから「グランドシネマサンシャイン 池袋」が劇場オリジナルグッズとして展開している企画が、「I’m a moviegoer」だ。

オリジナルのTシャツやトートバッグなどのオリジナルグッズが展開している「I’m a moviegoer」オリジナルのTシャツやトートバッグなどのオリジナルグッズが展開している「I’m a moviegoer」[c]Cinema Sunshine Co., Ltd. All Right Reserved.

この企画では、映画館で観ることのすばらしさをより伝えていくべく、自他ともに認める「moviegoer」な映画監督に「I’m a moviegoer」と直筆メッセージをもらい、そのオリジナルグッズをグランドシネマサンシャイン 池袋とMOVIE WALKER STORE限定で販売する。

【写真を見る】真剣な眼差しで何度もメッセージを書き直す白石監督【写真を見る】真剣な眼差しで何度もメッセージを書き直す白石監督撮影/杉映貴子

記念すべき第1回の山崎貴監督に続いて今回メッセージをもらい、インタビューに応えてくれたのは『近畿地方のある場所について』(8月8日公開)の白石晃士監督。“moviegoer”としての映画館にまつわる思い出や映画監督への目覚め、フェイクドキュメンタリーの名手としてのこだわりを語ってもらった。

「映画監督になったのは完全に『死霊のはらわた』の影響」

――白石監督はレンタルビデオ全盛の世代ですよね?

「はい、完全にVHS世代ですね。でも映画館で観る映画が好きでした。小学生のくせに本格派気取りっていうか(笑)。ビスタとかのワイドサイズがテレビだと4:3に切られてたのが嫌だったり、洋画は吹替より字幕、英語でちゃんと元の音が聞こえないとダメだって思ったりしてました。あとやっぱり映画館の空間が好きでした。現実の世界や、自分の存在すらも忘れて、無になって映画と一体化できる。家だと父や母、兄弟が周りにいたり、飼い犬がワンワン言ってたりするじゃないですか(笑)。映画館では暗い箱の中に入って、そういうものから切り離されてとんでもなく遠いところまで旅をさせてくれる。いまでもそんな可能性を感じながら映画館に行ってます」

――最初の映画館体験を覚えていますか?

「最初は『ドラえもん のび太の恐竜』で、『モスラ対ゴジラ』が同時上映だったんじゃないかな?っていうのがおぼろげな記憶です。あとは兄がアニメオタクだったんで、『機動戦士ガンダム』とか『伝説巨神イデオン』の映画版を早朝から長蛇の列に並んで観に行った記憶はあります。洋画を映画館で最初に観たのは『E.T.』だった気がします。それから小学四年生の時に観た『死霊のはらわた』と『ターミネーター』。あ、その前に『ゴーストバスターズ』がありました!『ゴーストバスターズ』はかなりの衝撃で、最初は特殊メイクや特殊造形をやる人になりたかったんです」

アナログな合成技術を使って作られた『ゴーストバスターズ』(84)アナログな合成技術を使って作られた『ゴーストバスターズ』(84)[c]Everett Collection/AFLO

――小学生で特殊メイク志望だったんですか?

「そうです。『SFX映画の世界』って本も買って読んでました。でもおもしろい映画を作るには監督が重要だと思うようになって、だんだんそっちに興味が移っていった感じです。『死霊のはらわた』は隣町に短期間だけ営業していた二番館に、『ターミネーター』は福岡の中洲にあった東宝ビルに、それぞれ友だちと2人で行ったんです。ちょうどテレビで『この夏のホラー映画特集』みたいな番組がやっていて、そこで2本ともけっこう本編映像が流れて『これはスゲェ!』と思っていたんです。この2本には本当に感銘を受けましたし、いまでも私の映画的な支柱になってます」

――どちらも「2」で大ブレイクした映画ですよね。

「そうかもしれないですけど、正直『ターミネーター2』にはちょっとがっかりしたんです。1作目ではあれだけ悪の魅力を放っていたターミネーターがいい人になっちゃってたんで(笑)。私はやっぱり、ターミネーターがただただ実直にサラ・コナーを殺そうとするところにグッと来まして。骸骨姿とか上半身だけになってまで最後まで任務をやり通そうとする姿に感動したっていうか…」

――完全にターミネーター側じゃないですか(笑)。

「はい。もちろんサラ・コナー側の物語もおもしろいんですけど、ターミネーターが泣き事なんかひと言も言わず筋を通している姿にシビれるものがあったんです。『2』はエンタメ感はあるけど『納得いかないな、ジェームズ・キャメロンは1作目の良さをわかってないじゃないか!』と感じました」

白石監督が映画監督を目指すきっかけになった『死霊のはらわた』(81)白石監督が映画監督を目指すきっかけになった『死霊のはらわた』(81)[c]Everett Collection/AFLO

「逆に『死霊のはらわた』は『2』もめちゃめちゃ楽しみましたけど。当時、映画館のロビーにプレス資料が貼ってあって、『死霊のはらわた』は学生がすごい低予算で作った自主映画なのに広く公開されることになったと書いてありました。そんな映画がこんなにもおもしろくて、しかも世界中で公開されてるなんて最高だなと思って。じゃあ自分でもやればできるんじゃないかって思わせてくれたんです。いま、映画監督になったのは完全に『死霊のはらわた』の影響というか、無鉄砲な野望を抱かせてくれたっていう意味でもすごく役に立ちましたね」

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