第74回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品のA24製作映画『テレビの中に入りたい』が9月26日(金)より公開となる。このたび、本作に登場する謎めいた深夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」のオープニング映像および新場面写真6点が解禁となった。
【写真を見る】「ピンク・オペーク」のオフィシャルブックのカバーがとらえられた場面写真[c]2023 PINK OPAQUE RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
本作は、90年代のアメリカ郊外を舞台に自分のアイデンティティにもがく若者たちの“自分探し”メランコリック・スリラー。全米では5月3日に4館での限定公開から始まると瞬く間に評判を呼び、5月17日には469館に拡大するなど熱狂する若者たちが続出した。エマ・ストーンが惚れ込んだ注目の新進気鋭ジェーン・シェーンブルン監督による特異な吸引力に満ちた本作は、世界中に熱狂的なファンを生みだし続けている。郊外での日々をただやり過ごしているティーンエージャーのオーウェン(ジャスティス・スミス)。彼にとって、謎めいた深夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」は生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所だった。同じくこの番組に夢中になっていたマディ(ジャック・ヘヴン)と共に、2人はしだいに番組の登場人物と自分たちを重ねるようになっていく。
今回、もうひとつの“現実”として強い存在感を放つ謎めいた深夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」のオープニング映像が遂に解禁に。孤独なティーンエージャー、オーウェンが、孤高の雰囲気を身にまとう同じ学校の2学年上の少女マディと出会ったとき、彼女が熱心に読んでいたのが毎週土曜日の22時半から放送されているテレビ番組、“P.O”こと「ピンク・オペーク」のオフィシャルブックだった。「ピンク・オペーク」は、主人公となる2人の少女、イザベル(ヘレナ・ハワード)とタラ(リンジー・ジョーダン)が、敵であるミスター憂鬱(メランコリー)の遣わす怪物たちと毎週戦うヒーローものの番組。月の男“ミスター・憂鬱(メランコリー)”が郡の各地に送り込むモンスターと戦うのが使命なのだと彼女たちは知るが、邪悪な彼は現実の支配を目論み、”真夜中の国“という監獄を作りイザベルとタラを閉じ込めようとする。ダークかつポップな世界観で“憂鬱”を蹴飛ばしてくれるこの番組にオーウェンとマディは夢中になり、次第に番組の登場人物と自分たちを重ね合わせ「ピンク・オペーク」はマディにとって“現実”以上にリアルな世界であり、オーウェンにとってはその扉を開く鍵となる…。
今回解禁されたオープニング映像は、マディから一緒に“P.O”(ピンク・オペーク)を観ようと自宅の地下室に誘われ、友人の家に泊まると親に嘘をついて家を出た少年オーウェンが、マディの家に入るやいなやブラウン管が放つピンク色の光に誘われ、引きつけられるようにテレビへと近づいていく印象的なシーンから始まる。テレビからは「タラと私は精神でつながる親友」、「サマーキャンプで出会い古代からの絆に気づいた」というイザベラの語りが聞こえ、真剣な面持ちで番組を食い入るように見るマディの姿が映しだされる。そして「郡と郡の端に住んでるけど、協力して悪の勢力と戦ってる」、「私たちは“ピンク・オペーク」というイザベルの語りに続いてギターの音がカッコよく鳴り響き、森の中を不安そうに歩くイザベル、そして強い眼差しでなにかを決意するかのように上を見上げるタラが手を繋ぐ姿が。頭をつけながら首元にピンクの同じマークが光り輝くカットにタイトルの「THE PiNK OPAQUE」の文字が印象的に入り、ブラウン管的質感に至るまで90年代テレビ番組を思わせるエッジのきいたこだわり抜かれた印象的なオープニング映像となっている。
オーウェンが母親と訪れた大統領選挙の投票所となっている学校で、ひとりぼっちで本を読んでいたマディ[c]2023 PINK OPAQUE RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
あわせて解禁となった6点の場面写真では、オーウェンが母親と訪れた大統領選挙の投票所となっている学校で、ひとりぼっちで本を読んでいたマディの姿、その時夢中になって読んでいた「ピンク・オペーク」のオフィシャルブックのカバービジュアルも捉えられている。表紙にはイザベルとタラの姿、「エピソードガイド」と書かれた文字も確認できる。さらに「ピンク・オペーク」の番組のなかでの、イザベルとタラの2人が下を向き頭をつける印象的なシーンにピンク色のタイトルロゴがのったオープニングカットや、誰かの首に謎のピンクのオバケのようなキャラクターを描くカット、またキモ可愛いモンスターが、お皿に乗せたなにかを愛おしそうに見つめるカットも解禁に。そしてジョルジュ・メリエスの古典SF映画『月世界旅行』(02)からの影響が窺えるビジュアルの夜空に映る怪しげな“月の男ミスター憂鬱(メランコリー)”が、グラウンドに立つオーウェンとマディを見下ろす幻想的なシーンなどが写し出されている。
シェーンブルン監督は、映画の中のテレビ番組を作るにあたり、「皮肉や風刺を使いたくなかった。そういったテレビ番組が、自分自身や周囲の世界を懸命に理解しようとする子供たちに対して持っているパワーを軽視しないことが大事だと感じたからだ」と、「ピンク・オペーク」に対して大切にした軸を語っている。本作が放つ大切なメッセージである“自分自身とつながる”こと。切なくも幻想的なメランコリックスリラーで描かれる物語をぜひ劇場で目撃してほしい。
文/鈴木レイヤ