8月30、31日に大阪・泉大津フェニックスで野外ライブイベント「RUSH BALL 2025」が開催される。

「RUSH BALL」は1999年に初開催され、今年で27年目を迎える、関西を代表する夏フェスのひとつ。2023年は2日間のうち初日公演が雷雨の影響で途中終了、2024年は台風の影響でイベントそのものが中止になったため、今年は過去2回のリベンジという意味合いを含めての開催となる。

音楽ナタリーでは出演者のうち、GEN(04 Limited Sazabys)、橋本学(ハルカミライ)、石原慎也(Saucy Dog)、谷口鮪(KANA-BOON)の4人にインタビュー。各バンドの関係性を改めて紐解きながら、「RUSH BALL」に向けた意気込みを聞いた。なお8月8日には読売テレビで「RUSH BALL 2025」の事前特番「リベンジ・チャレンジ! RUSH BALL」がオンエアされる。インタビュー参加者と同じ4人が出演する番組となっているので、併せてチェックしておこう。

取材・文 / 森朋之撮影 / 塚原孝顕

公演情報
「RUSH BALL 2025」
「RUSH BALL 2025」


2025年8月30日(土)大阪府 泉大津フェニックス

<出演者>

MAINステージ
[Alexandros] / cinema staff / go!go!vanillas / KANA-BOON / Saucy Dog / w.o.d. / クリープハイプ / シンガーズハイ / ハンブレッダーズ / ヤングスキニー / 梅田サイファー(オープニングアクト)

ATMCステージ
Haze / Laura day romance / Q.I.S. / ZION / えんぷてい / ちゃくら / チョーキューメイ / 超☆社会的サンダル / にしな / (夜と)SAMP



2025年8月31日(日)大阪府 泉大津フェニックス

<出演者>

MAINステージ
BRAHMAN / Dragon Ash / MONOEYES / SCAFULL KING / SiM / The BONEZ / THE ORAL CIGARETTES / 04 Limited Sazabys / ハルカミライ / KUZIRA(オープニングアクト)

ATMCステージ
bokula. / COPES / LAST ALLIANCE / Rhythmic Toy World / SHADOWS / THE FOREVER YOUNG / カメレオン・ライム・ウーピーパイ / 神聖かまってちゃん / つきみ / トップシークレットマン

チケット情報はこちら

オフィシャルサイト

正統派シンガロング・ロックンローラー、ハルカミライ

──「RUSH BALL 2025」の初日にあたる8月30日にはKANA-BOON、Saucy Dog、2日目の31日には04 Limited Sazabys、ハルカミライが出演します。まずは4バンドの関係性について聞きたいのですが、GENさんにとってハルカミライはどんなバンドですか?

GEN(04 Limited Sazabys) ハルカミライは“正統派シンガロング・ロックンローラー”ですね。

橋本学(ハルカミライ) おお!

GEN いいでしょ(笑)。今どき珍しいくらいストレートな表現をしますよね。僕が中学生の頃は青春パンクが全盛期だったんですけど、ハルカミライはその流れを感じさせるバンドで、若い世代の子たちがそのカッコよさに熱狂していて。ハルカミライに影響されてバンドをやる子たちも出てくるだろうし、なんか痛快だなと思ってます。

橋本 ありがたいです。その通りだと思います!

橋本学(ハルカミライ)

橋本学(ハルカミライ)

──(笑)。Saucy Dogとハルカミライは同世代ですよね。

石原慎也(Saucy Dog) そうですね。言い方が合ってるかわからないですけど、最初は「うらやましいな」と思ってたんですよ。自分がやりたかった音楽をやってるというか……。

GEN 「ないものねだり」だ。

谷口鮪(KANA-BOON) はははは(笑)。

──KANA-BOONの曲名ですね(笑)。

橋本 そのくだり、あとにしてもらっていいですか。今は自分のターンなんで(笑)。

石原 ははは。まさに“ないものねだり”だったんですけど、学は学で悩みながらやってたりするし、うらやましがるのはナシにしようと思ったタイミングがあって。そこからは普通に「カッコいいバンドだな」という感じです。「ハルカミライ、友達だよ」と自慢したくなる存在というか。

橋本 うれしい。

谷口 ハルカミライとは今年の春に初めて対バンしたんですけど(KANA-BOONの対バンツアー「Jack in tour」にハルカミライが参加)、芯を食った強さがあるなと思いましたね。発する言葉にもステージにも説得力があるし、やりたいことを表現するのに躊躇がない。バンドマンもオーディンエンスも憧れる存在というか、ロックスターだよなって。

橋本 うわあ。気持ちいいです(笑)。

谷口 こんなもんでいい?

GEN ははは。1000円ずつ払ってもらおうかな。

橋本 慎也は500円でいいですか。

石原 なんでやねん(笑)。

左からGEN(04 Limited Sazabys)、橋本学(ハルカミライ)、石原慎也(Saucy Dog)、谷口鮪(KANA-BOON)。

左からGEN(04 Limited Sazabys)、橋本学(ハルカミライ)、石原慎也(Saucy Dog)、谷口鮪(KANA-BOON)。

堂々としたバンド Saucy Dog

橋本 僕らSaucy Dogとは付き合いが長いというか、お互いに苦労してる時期に会ってるんですよ。その後、「いつか」という曲がハネて、心と体が追いついてない部分もきっとあったんじゃないかと思っていて。そこから今の状態まで持ってきてるのは、やっぱりこいつの中にパンクロック精神があるからだと思うんですよ。同世代のバンドとして、単純に尊敬してます。

石原 そうやって言葉にされるとうれしいな。

石原慎也(Saucy Dog)

石原慎也(Saucy Dog)

GEN 僕らがSaucy Dogと初めて一緒になったのは学祭だったんですけど、そのときはまだ「素人っぽいな」という印象だったんです。でも歌はめっちゃよかったし、「すげえ曲がいいバンドだな」と思ってた。そこからどんどん状況が変わって、気付いたらみんなが知ってるような存在になって。これはハルカミライにも言えることだけど、自分がいいと思うことをまっすぐにやってるバンドがちゃんと結果を出してくれると、「やっぱりそうだよな」という気持ちになるんですよね。あと、フォーリミの主催フェス「YON FES」にも慎ちゃんのほうから「出たい」と言ってくれて。

石原 はい。

GEN これだけ売れてるんだから、お茶の間を全部かっさらっちゃえばいいじゃんと思ってたんだけど、慎ちゃんの中には「ロックシーンにいたい」「バンドマンでありたい」というのがすごくあって。それもすごくいいなと思いますね。

谷口 うん。名前が知られて環境が変わると、気持ち的にもいろんな変化があると思うんですけど、それを表に出さないんですよ。売れることによって感じる寂しさもあるだろうし、思い描いた通りじゃない部分もあるはずなのに悲壮感がない。今の状況に値する人間なんだと思うし、堂々としているのが素敵だなと。

石原 ありがとうございます。もっとツッコまれるかと思ってました(笑)。

左からGEN(04 Limited Sazabys)、橋本学(ハルカミライ)、石原慎也(Saucy Dog)、谷口鮪(KANA-BOON)。

左からGEN(04 Limited Sazabys)、橋本学(ハルカミライ)、石原慎也(Saucy Dog)、谷口鮪(KANA-BOON)。

音楽シーンの潮目を変えた KANA-BOON

石原 僕は高校生のときにKANA-BOONの「ないものねだり」を聴いて、衝撃を受けたんですよ。「こういう音楽があるんだ」と思ったし、バンドシーンを作ってきた大先輩なわけです。初めて一緒に飲んだときも「なんでこの人と飲んでるんだろう?」と不思議な気持ちになったし(笑)。鮪さん、人を気持ちよくさせるのがうまいんですよ。

GEN どういうこと?

谷口 誤解を招きそう(笑)。

谷口鮪(KANA-BOON)

谷口鮪(KANA-BOON)

石原 いやいや、感情の話ですよ! こっちをリラックスさせたり穏やかにさせたりするのがうまいし、適度にイジってもくれて。自分にとってはお兄ちゃんみたいな存在ですね。僕、会うことが叶わなかった兄がいるんですけど、「兄貴がもし生きてたら、こんな感じなのかな」って。

橋本 KANA-BOONは弱虫のヒーローみたいな存在ですね、自分にとっては。卑屈なところもめちゃくちゃあって、音楽という武器を見つけて、その中でひたすら感情をぶつけるという。音楽が生まれるうえで、それが一番正しい順番だと思ってるんですよ。きっと本人は苦しみながらやってるところもあるでしょうけど、同じような思いを持った人たちがライブハウスに集まって、救いになってるところもある。葛藤やジレンマもあるでしょうけど、完成されないロックは美しいなと思ってるので。

GEN KANA-BOONは世代的にはちょっと下なんですけど、この世代の中で一番早く売れたバンドだと思います。KEYTALKとかゲスの極み乙女が出てきた中で、KANA-BOONは音楽シーンの潮目を変えたゲームチェンジャーだったんですよね。しかもそれを1st(2013年発表の1stミニアルバム「僕がCDを出したら」)でやったのはめちゃくちゃカッコいいなと。これはハルカミライ、Saucy Dogにも言えることですけど、あとの世代がバンドを始めるきっかけになったバンドだと思うんですよ。KANA-BOON楽曲をコピーすることがバンド活動の入口になった人はめちゃくちゃ多いはずだし、最初に刺さったものは抜けないので。シーン全体、ライブハウスにも貢献してますよね。

──それはフォーリミも同じですよね。

GEN そうだといいな、と思ってます。憧れられる存在になりたくてバンドをやってるところもあるので。もうひとつ言うと、「シルエット」というKANA-BOONの名曲があるじゃないですか。あの曲を海外のおじさんが日本語で歌い上げてる動画があって、それがめっちゃいい味出してるんですよ。

谷口 あるね、観たことある(笑)。

GEN 日本語の曲がいろんなところに広がってるんだなって。それもカッコいいですよね。

左からGEN(04 Limited Sazabys)、橋本学(ハルカミライ)、石原慎也(Saucy Dog)、谷口鮪(KANA-BOON)。

左からGEN(04 Limited Sazabys)、橋本学(ハルカミライ)、石原慎也(Saucy Dog)、谷口鮪(KANA-BOON)。

人、場所、時代をつなぐバンド 04 Limited Sazabys

谷口 フォーリミはちょっと先輩だけど、ほぼ同世代で。「YON FES」もそうですけど、ちゃんとシーンを背負ってるし、パンクスとしての生き方も実践してくれてる人たちだと思っています。僕らはちょっと畑が違いますけど、フォーリミのスピリットはずっと尊敬してますね。

石原 最初に会った頃は「ちょっと怖い人かも」と思ってたんですけど、話をさせてもらう機会が増えてきて、「いろんなことを考えながら言葉を発してるんだな」と。僕にとっては先生みたいな存在というか。初めてサシで飲みに行ったときに、聞きたいことをメモしていったんですよ。

GEN 「聞きたいことがいっぱいあるんですよ」って質問したいことをiPhoneにメモしてて。かわいいなコイツって思いました(笑)。

GEN(04 Limited Sazabys)

GEN(04 Limited Sazabys)

石原 本当に申し訳ないんですけど、フォーリミはそんなに通ってなかったので、そのことも伝えて。「初っ端でそう言ったヤツ、初めて。逆に信用できるわ」って言ってくれて、そこから仲よくさせてもらってます(笑)。もちろん、今はしっかり聴いてます(笑)。

橋本 GENさんは若いバンドを引っ張り上げてくれていて。自分たちも全然人気がない頃からツアーに呼んでくれたり、フェスの経験がない時期に「YON FES」に出させてもらって。今の若いバンドにしっかりアンテナを立ててるし、自分たちのことだけではなくて、バンドシーン全部のことを考えているのはすごいですよね。普段からいろんな人と場所をつないでいるというか。

──“つなぐ”という意識はGENさんの中でかなり強いですよね?

GEN そうですね。メロコア、パンクのシーンのど真ん中でやってたときは僕らどこにも属せなくて。ほかのシーンに顔を出したり、バンドの状況がよくなると、やっと先輩たちが認めてくれた。僕らはどの界隈にも行けるし、メロコア系、ラウド系の人たちが歌モノのギターロックをナメてるかといえば、そんなことは絶対にないんですよ。もちろんリスペクトがあるんですけど、「ひょっとしてナメられてるんじゃないか?」と思って仲よくなれないパターンもあるだろうし、そこを橋渡しする存在になりたいなと。

左からGEN(04 Limited Sazabys)、橋本学(ハルカミライ)、石原慎也(Saucy Dog)、谷口鮪(KANA-BOON)。

左からGEN(04 Limited Sazabys)、橋本学(ハルカミライ)、石原慎也(Saucy Dog)、谷口鮪(KANA-BOON)。

谷口 僕らはそういうところをやれてないので、ちょっと負い目を感じてるところがあって。フォーリミには「ありがとう」という気持ちがありますね。ただ、僕らは僕らで「中高のときにKANA-BOONを聴いてバンドを始めた」という人たちとつながれることがあって。若い世代の夢のひとつでありたいし、何があってもバンドは続けようと思ってます。

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「RUSH BALL」は和気あいあいとしたロックフェス

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