公開日時 2025年08月08日 05:00
「我謝家に嫁いだ女たち」を企画、出演した(左から)井上あすか、東盛あいか、真栄城美鈴=6月26日、北中城村
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琉球新報朝刊
県内を中心に舞台や映画、テレビなどで活躍する俳優で映画監督の東盛あいか、俳優の井上あすかと真栄城美鈴の3人が自主製作に取り組んでいる。5月に短編映画「我謝家に嫁いだ女たち」をユーチューブで公開し、1万4千回再生された。「同世代の女性で作りたい」との思いで生まれた企画で若手俳優3人の思いが詰まっている。
「我謝家に嫁いだ女たち」は、義母が亡くなって初めての清明祭(シーミー)の支度をしようと、夫の実家に集った3人の女性たちによる会話劇。おしゃべりの中で、ルーツや秘密を紡ぐ。
制作を発案したのは真栄城だ。「自分の芝居をブラッシュアップしたい」と思っていた頃、カメラマンの砂川達則に企画、出演、撮影、編集まで関わるよう勧められた。撮影は砂川が担当。同世代で意気投合した井上、東盛に声をかけた。
同世代の女性3人で作ることにこだわった。「監督も女性に比べると男性が多く、作品の役どころも男性が多い」と井上。それゆえか、少ない女性役の枠を取り合うことも。だからこそ「私たちが主役の作品を自分たちで作りたい」との思いが重なった。3人が書いたプロットから今回は東盛の作品を選んだ。会話劇の脚本は初挑戦だが、東盛は「面白いのができた」と自信作だ。2人も「感動した」と絶賛。真栄城、井上、東盛が出演し、東盛は監督も務めた。
「異なる属性の女たちを女子特有のおしゃべりの中で描きたかった」と東盛。タイと沖縄のミックスルーツ、親が与那国出身、両親が県外出身と3人の役はそれぞれにルーツが異なる。子どもの話題も、子育て、妊娠、不妊など3人で状況が異なり、少しひりつくやり取りもリアルだ。東盛の狙い通り、三者三様のキャラクターが生きている。女性が行事の支度をする様子は「日常的に見てきたお母さんやおばさんたちのやり取りをやってみたい」と反映させた。
真栄城と井上は、東盛から編集方法を習い、初めて編集作業にも携わった。編集視点で自身の演技を見て、確認しながら芝居を進めた経験は2人の意識を変えた。「もっと積極的に作品に関わりたい」と真栄城。井上も「前向きな反省ができた。主体性を持って取り組みたい」と意気込む。
現在は次回作の構想を練っている。東盛は「また日常を題材に作りたい」と抱負を語った。(田吹遥子)
まえしろ・みすず 1993年沖縄市生まれ。俳優・タレント。2021年からフリーランスとして活動中。RBCiラジオ「具志堅ストアー」金曜日担当。出演作品はFODオリジナルドラマ「ゲート・オン・ザ・ホライズン~GOTH~」や映画「木の上の軍隊」ほか多数。
ひがしもり・あいか 1997年生まれ。与那国島出身。京都造形芸術大学映画学科俳優コース卒業。監督・主演の映画「ばちらぬん」がPFF2021でグランプリを受賞。主演の短編映画「馬橇(うまぞり)の花嫁」は国内外の映画祭で高評価。沖縄環太平洋国際映画祭理事。
いのうえ・あすか 1994年生まれ、南城市出身。「琉神マブヤ―」シリーズでデビュー。FODドラマ「ゲート・オン・ザ・ホライズン~GOTH~」に出演。舞台では「ゼチュアンの善人」「花売の縁 オン(ザ)ライン」など。今秋「喜劇 人類館」沖縄、愛知公演を控える。