2025年夏クールのドラマでは、主題歌にトップアーティストが揃い踏みしている。なかでもDREAMS COME TRUE、矢沢永吉、椎名林檎というビッグネームはそれぞれ新曲を書き下ろし、ドラマを彩っている。その豪華な主題歌はドラマファン、音楽ファン双方から大きな注目を集めている。

DREAMS COME TRUE「BEACON」【Official Audio】

 まず、DREAMS COME TRUEは『大追跡~警視庁SSBC強行犯係~』(テレビ朝日系)の主題歌として、新曲「BEACON」を提供した。DREAMS COME TRUEが地上波ドラマ主題歌を手がけるのは、2020年放送のドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』の「YES AND NO」以来、およそ5年ぶりとなる。満を持しての書き下ろしとなったこの新曲は、7月9日のドラマ初回放送で音源が解禁され、7月30日には配信リリースされた。制作陣からの熱烈オファーを経てタイアップが実現した経緯があり、その期待の大きさが窺える。「BEACON」の配信ジャケットはドラマのビジュアルチームが手掛けており、ドラマと楽曲の歌詞が呼応して、まるで行き先を探し続ける羅針盤のように光が静かに瞬くデザインに仕上がっている。「『どうしてわからないんだ?伝わらないんだ?』と喘ぎながら自分と戦ってるあなたに、この曲があなたを導く“BEACON(希望の光)”となることを願って」(※1)とメンバー自らコメントを寄せている通り、暗闇に光を灯すようなポジティブなメッセージが込められたナンバーだ。その歌の力は、ハイテク捜査に挑む刑事たちの奮闘を描くドラマの世界観とも通じ合い、物語を後押しする“希望の光”となっている。連続テレビ小説主題歌を2度担当した唯一のアーティストでもあるDREAMS COME TRUEは、これまでも「晴れたらいいね」「LOVE LOVE LOVE」「何度でも」「やさしいキスをして」など数々のドラマ主題歌を手掛け、ヒット曲を生み出してきた実績の持ち主。「BEACON」も劇中の盛り上がりとシンクロしながら視聴者の心に強く響くことだろう。

【予告】「最後の鑑定人」7月9日(水)よる10時スタート!事件の痕跡から驚くべき真実を暴く、クセ強バディが誕生!

 『最後の鑑定人』(フジテレビ系)の主題歌は、矢沢永吉の「真実」だ。矢沢が連続ドラマ主題歌を手がけるのは、1997年放送の『ベストパートナー』(TBS系)以来、実に28年ぶり。さらに自身の新曲リリース自体も6年ぶりとあって、デビュー50周年イヤーに放つ渾身の楽曲にファンの期待も高まっている。今年76歳となる矢沢だが、唯一無二のロックボーカリストとしての存在感は今も健在だ。「真実」はスローで優しいメロディが織りなす極上バラードで、矢沢の味わい深い歌声が心地よく響く。歌詞には愛の儚さが綴られるとともに、劇中のキーワードである“嘘”と“真実”という言葉が散りばめられ、作品の世界観を描き出している。まさにドラマの核である真実を追究するストーリーとリンクした主題歌と言えるだろう。矢沢本人も主題歌決定時に「ドラマ『最後の鑑定人』とはたしてどんな反応が起こるのか…今からとても楽しみです」(※2)とコメントを寄せており、自身の音楽が作品にもたらす化学反応に胸を躍らせている様子だ。長年シーンを牽引してきたロックスターがドラマのために紡いだ渾身のバラードが、物語に深みと説得力を与えているこだ。

椎名林檎 – 芒に月

 そして、『ひとりでしにたい』(NHK総合)の主題歌には、椎名林檎の新曲「芒に月」が起用されている。昨年開催された6年ぶりのアリーナツアー「(生)林檎博’24-景気の回復-」の本編ハイライトで初披露され、ツアー直後から音源化を望むファンの声が高まっていた楽曲である。同ツアーのバンドメンバーで、東京事変のメンバーである伊澤一葉(Pf)のバンド・あっぱによる原曲をもとにアレンジを加え、再構築されたバージョンとなっている。カップリングには椎名作詞、伊澤作曲による新曲「松に鶴」も収録。椎名にとって2025年最初のリリースとなる本作は、デビューから四半世紀を経てもなお進化を続ける彼女のクリエイティビティが発揮された意欲作だ。この「芒に月」から連想されるのは「幽霊の正体見みたり枯かれ尾花」の言葉。「幽霊だと思っていたものが、実は枯れた芒だった」という意味だが、この楽曲ではそんな幽玄で詩的な世界観がドラマチックなサウンドでもって表現されている。ドラマの原作は終活=人生の最期の準備をテーマにした異色のギャグ漫画であり、「よりよく生き、よりよく死ぬための準備」を描く社会派コメディだ。そんな前代未聞の物語を、椎名と伊澤による人生讃歌とも言える「芒に月」が鮮やかに彩っている。“生”と“死”という重い題材にユーモアを交えて向き合うドラマに寄り添うように、椎名らしい耽美で奥深い音楽が響き、作品に独特の余韻と説得力をもたらしてくれるはずだ。

 このように、2025年夏のドラマ主題歌には経験豊富なトップアーティストたちによる新曲が出揃った。それぞれの楽曲がドラマの内容やテーマに見事にマッチし、物語の世界観を一層引き立てているのが特徴だ。長年にわたり音楽シーンを牽引してきたトップアーティストが放つ主題歌の力は絶大で、ドラマを観る喜びを倍増させると同時に、作品自体の厚みと魅力を大きく押し上げていると言えるだろう。

※1:https://dreamscometrue.com/contents/961522
※2:https://www.fujitv.co.jp/saigonokanteinin/news/news04.html

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