表参道・原宿の街に欠かせない存在である「美容室」。名実ともに日本一の激戦区と言っても過言ではないオモハラエリアにおいて、「美容室の街」となった成り立ち、そしてその役割を紐解く考察コラム vol.2。

Vol.1では実際にオモハラエリアにある美容室の数を調べるところから、アメリカ文化に大きな影響を受けてきた歴史的な土壌、70年代以降、同時多発的に起きるファッショントレンドの隆盛、それに伴ってヘアスタイルも多様的になり、髪も服装も個性が際立つ人が街に増えていった流れを振り返った。

 

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さらにVol.2では、偶然とも思われがちな必然が度重なる年代に焦点を当てる。全国に美容師人気を知らしめたカリスマ美容師ブーム、表参道の美容室を印象付けた存在、ヘア & ファッション誌「CHOKiCHOKi」のブレイク、街と美容師が1990年代後半以降に迎えた、劇的な変化を掘り下げたい。

 

Vol.2 目次

 

Page 1:カリスマ×カリスマ による「美容室の街」キャンペーン

 

Page 2:カリスマの次にやってきたのは“キング”だった

 

Page 3:カリスマとキングが共存 ストイックさが生む一流のサイクル & Vol.2まとめ

 

 

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カリスマ×カリスマ による「美容室の街」キャンペーン

 

ファッショントレンドが変われば、髪型も変わる。ブームに追随するように進化したヘアスタイルを提案しつづけていた美容業界も、マスメディアの追い風により、劇的に美容室や美容師を取り巻く環境が変わっていく。それはまさにヘアスタイルと美容師が主役の時代、1997年ごろに端を発し、2000年にピークを迎える“カリスマ美容師ブーム”である。

 

コラムの制作にあたり、写真撮影に協力してもらった「JENO by apish」は2000年前後のカリスマ美容師ブームを牽引した坂巻哲也氏がオーナーを務めた「apish」の姉妹店。オーナーの坂巻氏は2024年、闘病生活の末に逝去されている。

 

90年代の中頃から、表参道・原宿でも、サロンの“腕”=技術をウリにしたサロンが増加。それに伴って、各サロン自慢のヘアスタイルを掲載したヘアカタログ誌も盛り上がりを見せていた。そんな中、『JJ』『ViVi』など時代の先端を象徴する、赤文字系と呼ばれる女性ファッション誌が人気美容師特集を行い、サロン単位ではなく、美容師個人に注目が集まるようになっていった。

テレビのバラエティ番組や情報番組でも人気美容師がフィーチャーされ、その結果、SNSのない時代に「美容師個人に客がつく」というモデルを成立させ、予約が何ヶ月も取れない“カリスマ美容師”が台頭した。

神宮前5丁目、1994年創業のヘアサロン「ACQUA(アクア)」は、会長だった故・綾小路竹千代氏、野沢道生氏、青山正幸氏とともに設立。いずれもテレビ出演などでカリスマ美容師ブームを牽引した存在。2024年には南青山に若手を中心とした「Maison ACQUA(メゾン アクア)」をオープンし若年層から人気を集める(2025年7月編集部撮影)

 

美容業界の歴史やその変化を調べていくと、2000年は重要な年。カリスマ美容師の人気も絶頂のとき、さらにそれを促し、美容師への憧れを確固たるものにした“ある人物”の活躍がある。

 

それが原宿、とりわけ裏原カルチャーにも深く関係している、時代のカリスマ・木村拓哉氏だ。ドラマ、音楽、ファッション、ライフスタイルなどあらゆる分野でトレンドを作り出し、“キムタク”に憧れるのはもはや当たり前というカリスマっぷりを発揮していた。ドラマ「HERO」でのA BATHING APEのダウンジャケットは有名だが、木村拓哉氏にかかればエッジの効いたクールなものが、クールさを保ったままに世に広まる。

 

そんな氏が出演する代表作のひとつ『Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜』(TBS・2000年)で、木村拓哉氏は美容師・沖島 柊二を熱演。ドラマの平均視聴率は32.3%、最高視聴率41.3%( ※平成以降のTBS ドラマで過去最高) を記録した。そして主人公・沖島 柊二が勤める美容室「HOT LIP」が、まさに表参道(旧 ウチノ タオル ギャラリー、現 ルイ・ヴィトン表参道)にあったのだ。

 

『Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜』木村拓哉が演じる沖島 柊二が務めていた「HOTLIP」のロケ地。画像協力:ドラマロケ地案内(運営:バーニー服部様より提供)

 

現在はビルごと建て替わって、ルイ・ヴィトン表参道になっている(2025年7月 編集部撮影)

 

 

木村拓哉氏は役を通じて、美容師のおしゃれさやかっこよさを視聴者のイメージに強烈に刷り込んだ。さらに、そこに切ない恋愛ストーリーが加わるのだから、宣伝効果は絶大。世代、性別、などの属性を越えて全国各地の多くの人々に憧れや羨望を抱かせたのではないだろうか。表参道と美容師、両者の紐づけをより強固なものにしたことは間違いない。

 

そんな氏の活躍もあり“表参道の美容室”がお茶の間にも浸透し、この街からリアルに起きていたムーブメントが、憧れを伴って全国へ飛び火していく。2000年は偶然にも時代を象徴するカリスマ × カリスマによる化学反応が起き、後に美容師がファッションアイコンとなっていく、その意識的な下地を作ったと言える。

 

 

>>Page 2 カリスマの次にやってきたのは“キング”だった

 

 

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