コルネリス・フィッセル《眠る犬》スウェーデン国立美術館蔵
©Hans Thorwid/Nationalmuseum 2009
(ライター、構成作家:川岸 徹)
スウェーデンの王家が収集した美術品を基盤にするヨーロッパの名門、スウェーデン国立美術館。同館の素描コレクションから、ルネサンスからバロックまでの名品を選りすぐって紹介する展覧会「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」が国立西洋美術館[東京・上野公園]で開幕した。
素描を鑑賞する楽しみとは?
色彩豊かに、細部まで精魂込めて描き上げられた「完成作」はもちろんいい。だが、美術愛好家には「素描」ファンが意外なほど多い。素描とは、木炭やチョーク、ペンなどを用いて描かれた、線描中心の平面作品。制作の目的は様々で、思いついたアイデアを素早く描き留めたものや、技術を身につけるために修練として描かれたもの、絵画や彫刻などの美術作品を制作するために下準備として作られたものなどがある。
国立西洋美術館で開幕した「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」。タイトル通り、素描をテーマに構成された展覧会で、スウェーデン国立美術館所蔵の素描作品81点に加えて、国立西洋美術館が所蔵する関連作品3点が展示されている。
スウェーデン国立美術館内観 ©Nationalmuseum
ギャラリーページへ
ちなみにスウェーデン国立美術館は1792年、ストックホルムに開設された、ヨーロッパで最も古い美術館のひとつ。中世から現代にいたる美術や工芸、デザインを幅広く収蔵し、なかでも素描コレクションの質の高さは世界屈指といわれている。
本展を企画した国立西洋美術館主任研究員の中田明日佳氏はこのように話す。「素描作品には、完成作にはない筆の勢いや新鮮さ、試行錯誤の跡が残されています。素描を鑑賞すると、作者と制作の秘密を分かち合っているような気分になることも。これが、美術ファンが素描を好む大きな理由ではないでしょうか」。