(左)林芳樹/編集委員:百貨店取材の密かな楽しみは店舗のバックヤードを見ること。迷路のような空間は商品とスタッフの導線であり、売り場とは違った各百貨店の個性があって興味深い (右)新関瑠里/ヘッドリポーター:幼い頃から百貨店の屋上が好きだった。非日常が詰まったあの場所は大人になった今、夏のビアガーデンというご褒美の場に。いつか全国の百貨店ビアガーデンを制覇したい!
毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年7月21日号からの抜粋です)
林:毎年恒例の百貨店特集ですが、今回は旗艦店に注目しました。百貨店グループの中でも、2024年度は伊勢丹新宿本店、阪急本店、ジェイアール名古屋高島屋といった旗艦店がおしなべて売上高過去最高を更新しています。そんな館を指揮する店長や新しい取り組みにスポットを当てました。
百貨店を支えるのは、現場の人の愛!
新関:私が一番印象に残ったのは松屋の創業100周年記念担当の米田洋子さんが、「松屋が大好きなんです!」と、パッションにあふれていたこと。館への愛情と誇りに満ちていて、強い百貨店を支えているのは、こういう現場の人の愛なんだと感銘を受けました。林さんはどの取材が印象的でしたか?
林:阪急本店の佐藤行近店長です。改装を重ねていて、訪れるたびに館としての進化を感じます。今回訪れた際は大型改装で工事中だらけ。得意のラグジュアリーをさらに強化するようです。その一方で、9階の祝祭広場に行くと、ハワイフェアをやっていて、フラダンスを踊る人たちがいたり、ハンバーガーに家族連れの行列ができていたりと、百貨店らしい客層の幅広さも維持していて、好感が持てます。庶民的なものは隣の阪神梅田本店に任せていて、そこでもバランスをうまく取っています。高島屋大阪店の難波斉店長も「特選と時計・宝飾が館の売り上げの多くを占めているが、おもちゃ売り場や、仏具もランドセルもある。“百貨”にこだわりたい」と話していて、素敵だなと思いました。
新関:そういう意味で私が衝撃を受けたのは、西武池袋の化粧品売り場です。47ブランドをワンフロアで見られることが楽しく、最新の肌測定器やユニークな什器など、驚きがたくさんありました。アメリカの投資会社に買収されて、風前の灯となった売り場が、こうして素敵に生まれ変われたことに感動すると同時に、2年前にストライキを主導した寺岡店長が「自分も感慨深いけれど、現場はもっと感慨深い」と語るように、売り場全体からはスタッフの熱意が伝わってきて。「ここで買いたい!」と素直に感じました。
「WWDJAPAN」2025年7月21日号