映画で“もうひとつの主人公”だったヴェイルサイドRX-7

 英国のオークションサイト「Bonhams Cars(ボナムズ カーズ)」は、2025年7月11日に英国グッドウッドで開催された「Goodwood Festival of Speed 2025(グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2025)」において、映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』に登場した、ヴェイルサイド製ボディキットを装着した1992年式マツダ「RX-7」を出品しました。

ヴェイルサイド製ボディキットを装着した1992年式マツダ「RX-7」ヴェイルサイド製ボディキットを装着した1992年式マツダ「RX-7」

 今回出品されたRX-7は、映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT(2006年公開)』で登場人物「ハン(俳優:サン・カン)」が運転していた劇用車のひとつで、劇中では多くのアップや静止カットに使用されていた個体です。ベースは1992年式マツダ「RX-7(FD3S)」で、ヴェイルサイドの創業者・横幕宏尚氏が率いるチームが架装を担当しました。劇中仕様に仕立てるため、ワイド化された「フォーチュン」ボディキットによって全幅は200mm以上拡大。外装のほとんどが変更され、純正のデザインが残るのは屋根とリアハッチのみという、印象を大きく変えた仕上がりとなっています。

 ボディカラーはパールオレンジとブラックのツートーン、ホイールは19インチのアンドリュー製を装着。エンジンにはRE雨宮によってリビルドされた13B型ロータリーエンジンを搭載し、最高出力280馬力を発生します。ブリッツ製「Nur-Spec」マフラーや強化クラッチ、ブレーキ、車高調なども装備され、足まわりもチューニング済み。インテリアにはNOSボトル(未接続)やヴェイルサイド製バケットシートを備え、クロームやカーボン素材を多用。あくまで見せるためのクルマとして徹底的に演出されています。

 この個体は劇中でのドリフト走行には使用されておらず、撮影用のクローズアップや静止シーンに特化した“もうひとつの主人公”。製作中に用意された約250台のうち、撮影終了後も現存しているのはわずか2台とされ、この個体には「#71 HANS」と記されたスタジオプロップ番号やカメラマウント跡も残されています。

 この個体は2008年にイギリスへ渡り、それ以降はガレージ内で乾燥した状態のまま大切に保管され、走行は最小限に抑えられてきたといいます。現在の走行距離は約6万6785マイル(約10万7480km)で、英国にて正式に登録・納税・車検を受けており、ナンバープレートも取得済み。現在でも公道走行が可能な状態を維持しています。保存状態の良さに加え、映画仕様の劇用車としては極めて貴重なコンディションといえるでしょう。

 映画の公開から20年近くが経った今もなお、このマシンが放つオーラは色あせることなく、多くのファンを惹きつけています。まさに伝説の一台として、コレクターにとっても特別な価値を持つ存在といえるでしょう。

 こうした背景もあり、今回のオークションでは、91万1000ポンド(日本円で約1億9280万円)という高額で落札されました。

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