2025年7月23日

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鑑賞方法:映画館

ウィーンのべルヴェデーレ宮殿にある「接吻 (1907/8)」を中心としたグスタフ・クリムトの絵画を、高品質の画像を使って、美術館のキュレーター(学芸員)、財団の役員、研究者たちが、ドイツ語と英語で、わかりやすく解説してくれる。しかし、彼らが本当に何を言いたいのか、時々わからなかった。二つの言葉が、特に胸に響いた。
一つは、冒頭近く、英国の女性研究者が「解釈が定まっていないことが、この絵の美しさに繋がっている」と述べたこと。また、最後になって、べルヴェデーレの男性キュレーターは、同時代に描かれたピカソやマティスの絵と比較しながら、自分自身は、この絵に対し批判的だと述べて、私たちを驚かせた。
美術の素人である私が見ても「接吻」の完成度には、比類がないものがある。では、なぜ批判的?1907年に描かれたピカソの「アビニヨンの娘たち」がキュビスムの、同時期にマティスによって描かれた絵画がフォーヴィスムを生んだのと比べ、「接吻」は彼の絵の到達点を示しているに過ぎないというのだろう。クリムトは、本質的には、芸術家と言うよりは職人(技術者)に過ぎないのかもしれない。すると、彼自身が絵のことを何も語らなかったことも、容易に説明がつく。
私は装飾的な「接吻」はともかくとして、「アッター湖畔のカンマー城」や「ひまわりの咲く農家の庭」のような彼の風景画が大好きなだけに、風景画についても、モネやゴッホの構図を出発点としていたことが判って、ややショックを受けた。
一つ残念であったこと、クリムトが「接吻」を描く上で、私たちの知らなかったスコットランドの女性画家なども含めて、参考にした題材が出てきた。特にイタリアのラヴェンナで見たと言われるビザンチンのモザイク画は印象的だった。しかし、私たちも想像していた「琳派」や「漆塗り」の影響については、参考にしたと思われる美術品の紹介はなかった。当時のウィーン万博等で、見たに違いないのだが。

詠み人知らず クリムト&THE KISS アート・オン・スクリーン特別編

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