『ミステリアス・スキン』©MMIV Mysterious Films, LLC
■追悼:ミシェル・トラクテンバーグ
今年2月26日、米女優ミシェル・トラクテンバーグがニューヨーク市内の自宅で亡くなっているのが発見され、享年39歳という突然の訃報が世界中に衝撃を与えた。
人気ドラマ『ゴシップガール』や青春コメディ『セブンティーン・アゲイン』で知られる、名実兼ね備えた若手俳優だったトラクテンバーグ。今年4月からは彼女の代表出演作の一つで、グレッグ・アラキ監督/ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演の『ミステリアス・スキン』が、製作から20年を経て日本初公開中だ。
■あまり知られていなかった? 重い病との闘い
警察によると、午前8時過ぎに通報を受けて現場に駆けつけたところ、トラクテンバーグは意識不明で反応がなく、救急隊によって死亡が確認されたとのこと。事件性はなく、のちに死因は糖尿病による合併症と判明、自然死とされている。
じつはトラクテンバーグは2024年に肝臓移植を受けており、その後も健康状態に不安を抱えていたことが報じられている。彼女のSNS投稿にも体重減少や黄疸の兆候を指摘する声が寄せられていたが、本人はファンからの心配の声に対し「健康で幸せ」と否定していた。彼女の家族はユダヤ教の信仰に基づき当初は解剖を拒否していたため、死因の特定に時間を要したようだ。
彼女の死後、恋人でありタレントエージェントのジェイ・コーエンは沈黙を守っていが、7月にSNSで「ミシェルは多くの人に愛されていた」とコメントし、深い悲しみと感謝の気持ちを表明。また、かつての共演者たちからも追悼の声が相次ぎ、サラ・ミシェル・ゲラー(※『バフィー ~恋する十字架~』で共演)は「あなたのために生きる」と引用を交えたメッセージを投稿し、ブレイク・ライヴリー(※『ゴシップガール』で共演)は「彼女は電気のような存在だった」と語っている。
■人気ドラマ『バフィー』や『ゴシップガール』で存在感を証明
ミシェル・トラクテンバーグは子役としてキャリアをスタートし、『ハリエットのスパイ』や『ユーロトリップ』、『セブンティーン・アゲイン』などティーン向け映画で人気を博したが、やはり彼女の存在を印象付けたのは、大ヒットドラマ『バフィー ~恋する十字架~』のドーン役、そして『ゴシップガール』のジョージーナ役だろう。
『ゴシップガール』は2007年から2012年にかけて米CWネットワークで放送されたティーン向けドラマで、ニューヨークのアッパー・イースト・サイドに住む富裕層の高校生たちの恋愛、友情、裏切りを描いた作品。匿名のブロガー“ゴシップガール”によって暴露されるスキャンダルが物語を動かし、セリーナ(ブレイク・ライヴリー)やブレア(レイトン・ミースター)などのキャラクターが人気を集めた。
トラクテンバーグが演じたジョージーナ・スパークスは周囲を翻弄するトラブルメーカーとして登場し、物語に波乱をもたらす存在だった。彼女はその複雑な役柄を見事に演じてみせ、シリーズ後半では再登場を果たすなど視聴者に強い印象を残した。
あまりにも早すぎるトラクテンバーグの死は、青春時代に彼女の出演作に触れた多くの人々にとって、まるで一時代の終わりを告げるような出来事だったかもしれない。しかし、その強い眼差しと唯一無二の存在感、そして若さを感じさせない稀有な演技力は永遠に語り継がれていくだろう。
ミシェル・トラクテンバーグ出演『ミステリアス・スキン』は全国順次公開中、『セブンティーン・アゲイン』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2025年7~8月放送