──2023年の再始動初のフルアルバム『ファンキーモンキーベイビーズZ』以来のリリースとなる「音楽を鳴らそう」。『桑の都ツアー「全八」』のFINAL公演(5月4日 J:COMホール八王子)でのMCでは“夏のシングルに向けて新曲を制作中”、さらには“めちゃくちゃいい曲ができた”と報告していましたが、それがこの「音楽を鳴らそう」なのでしょうか?

モン吉「はい、それです」

ファンキー加藤「作っていて、手応えはありました」

──また、大きな変化としては、このタイミングでユニバーサルミュージックに移籍しました。今作の制作は移籍が決まってからのことですか?

ファンキー加藤「そうです。移籍の話は昨年くらいから事務所のスタッフと進めていて。(2021年に)FUNKY MONKEY BΛBY’Sが再始動して、これから先、“令和のファンモン”を加速させていくためには、どういう状態にするのがベストだろう?っていう話から、移籍を決断しました。なので、「音楽を鳴らそう」の制作段階から“移籍第1弾”ということは頭に入っていました」

──楽曲のテーマやサウンド感など、どういう形でスタートしたんですか?

ファンキー加藤「曲の骨格というか、こういうビートで、こういうコードでっていうアイデアはモンちゃんからでした。そういうときって直電が来るんですよ」

──メールでデータを送るとかではなく、電話なんですか?

モン吉「はい。家でデモを作っていて、すごくいいトラックができて…。トラックだけ聴いても“いい!”と思ったので、そのパッションのまま電話しました(笑)」

ファンキー加藤「“これいい!”っていうパッションがあふれると電話がかかってきます(笑)。なので、モンちゃんから不意に電話がかかってくると、“あ、なんかいいアイデアが浮かんだ”と。で、電話越しでも聴くとすごく良くて。“そのアイデアを具現化していこう!”って話をしたのを覚えています」

──モン吉さんはそのトラックをどのようなイメージで作っていたんですか?

モン吉「もともと頭の中にふわっと流れていたチルアウトみたいな曲があって、“このコードすごくいいな”と思っていた曲があったんです。今回は移籍第1弾なので、“勢いのある曲にしよう“って言っていたんですけど、勢いがあって明るい曲だと、自分たちの声が明るいこともあって明るくなりすぎちゃうんです。なので、少し泣きの要素があるこの曲がいいんじゃないかな?と思って。そこに勢いを加えるとしたらドラムンベースがいいと思って、もともと浮かんでいた曲のBPMを速めて、このコードで…ってやっていったらいいトラックができたので電話しちゃいました(笑)」

ファンキー加藤「そこで、“いいじゃん! いいじゃん!”となって、そこからは、以前からずっと一緒にやっている田中隼人にも加わってもらって形にしていきました。今回はライブもイメージしていたので、自然と踊れるようなBPM…前まではもうちょっと速かったんですけど、“お客さんも僕たちもこれくらいのほうがいいよね”っていうのでちょっと下げて(笑)」

モン吉「身体に優しいドラムンベースになっています(笑)」

──(笑)。一方、歌詞のほうではタイトルにもなっている<音楽を鳴らそう>というポジティブなメッセージが印象的です。
ファンキー加藤「最初にサビ頭のメロディが浮かんだんですけど、その仮歌中の仮の段階で<音楽を鳴らそう>っていうフレーズがあったんですよ。でも、ファンモンのシングルって「あとひとつ」とか「ちっぽけな勇気」とか、もっとわかりやすい応援歌のイメージだったりするじゃないですか。だから、「音楽を鳴らそう」がシングルになることはないかな?と、自分の中では思っていたんです。でも、思いのほか周りのみんなが乗ってきてくれて…ユニバーサルミュージックさんへの移籍第1弾で、音楽をフィーチャーするのはいいんじゃないか?って。なので、「音楽を鳴らそう」がシングルになることには、仮歌を歌った僕が一番驚いています(笑)」

──歌詞はそれぞれ自分が歌うパートを書く感じだと思うのですが、お二人のやりとりはどんな感じだったんですか?

ファンキー加藤「歌詞に関しては、最初にサビやBメロを僕がざっくりと書くんです。今回は“音楽を鳴らそう”というテーマになった段階で、自分の中でライブ…それもワンマンよりフェスの会場の画が浮かんだので、そこで見えていた景色とか、そこにいるお客さんに投げかけるような言葉で構成していきました。そこからモンちゃんにパスするのは簡単でしたね。やっぱりモンちゃんもそういう景色は絶対イメージしやすいと思うので。“あとはもう自由に楽しく韻踏んでラップしてください“って言ってパスしました」

──それを受けたモン吉さんが意識したことは?

モン吉「意味合いもそうですけど、今回は気持ちいいほうがいいなっていうのがありました」

ファンキー加藤「いつも以上に韻にこだわってやってたね」

モン吉「そう。アルバムの曲とかだとかなり韻を踏んだりしているんですけど、シングル曲ってなると逆に韻を踏まないっていう方向に…アルバムとシングルではベクトルがちょっと違うというか。でも、今回は曲調を考えても“ラップが肝だね”って話をしていたので、“韻を踏んでいこう“と思って書いていました。あと、最近の作り方としては、ファンちゃんからテーマを聞いて、僕は韻だけ持っていって、現場で組み立てるっていうのが多いかも…」

ファンキー加藤「韻先行で作るって、割とアルバムの曲っぽい作り方なんです。そういう意味では、コアなファンに向けたような曲を、こうして配信シングルでリリースできるっていうのは、僕たち的には実は喜びでもあって」

モン吉「うれしいですね。多分みんな(ファンモンのことを)甘いラップをしているポップグループだと思っているんですけど(笑)、もともとはラップグループなので、移籍第1弾シングルでしっかりラップできてよかったと思います」

──私の中ではファンモンの楽曲はポジティブなメッセージが多い印象があった中で、「音楽を鳴らそう」の中に出てくる<人生はずっと続いてしまう>というフレーズに耳が止まりました。<続いていく>と書きそうなところを<しまう>にしたのはどうしてですか?

ファンキー加藤「そこに関しては僕のネガティブな部分がでていると思います。最初、フェスの光景をイメージして曲を作ろうってことになったんですけど、じゃあ、フェスって楽しいだけなのか?と言われたら、全然そんなことなくて…。特に僕なんかは、いつも共演者のライブが気になったり、ピリピリしてしまうんです。もう、すごく怖くて。それだけはいまだに慣れません。ついこの間も、フェスの出番前に僕が“うぉぉぉ!”とかなっているのを、モンちゃんにたしなめられるっていう(笑)」

モン吉「もう、腕ブンブン振り回してる勢いだったから(笑)。“いつも通り、いつも通り”って言って」

ファンキー加藤「でも、これだけは治らないんですよ。だから、“音楽を鳴らそう”って、僕の中では怖さとかのネガティブさもあって、決して前向きだけじゃない部分があるんです。なので、ところどころでそういう<(続いて)しまう>とかのワードが入ってしまうのは自分の根本かもしれないです」

モン吉「でもなんかね、年齢の感じもする。だからこそ、この歌詞なんだろうなって僕は思っています」

ファンキー加藤「若いときはそういう部分を隠していたかもね」

モン吉「そう。昔だったら<続いてしまう>じゃない歌詞だったろうなと思います」

──自分の弱さみたいな部分も出せる年齢になってきたということかもしれないですね。

ファンキー加藤「そうかもしれませんね。あと、曲としても、始まりから終わりまで前向きでポップで明るいって曲が、自分的にはあまり引っ掛からないっていうのもあります。人生と一緒で、曲の中にも浮き沈みがあって、でも必ず最後のサビでは救われる…それがポップミュージックとしての正しい在り方だと思っています。そこまでの間で感情の起伏だったり、起承転結があったりするのは当たり前のことでもあるので」


──フェスをイメージした曲とのことでしたが、実際に披露する予定は…?

ファンキー加藤「すでに1回披露したんです。実はそれってすごく珍しいことで。僕たち、フェスに関してはかなり慎重に、みんなが知ってくれているであろう代表曲をギュッと詰めたセットリストを組むことがほとんどなんですけど、「音楽を鳴らそう」は本当に珍しく、リリース前に“1回歌ってみるか?”ってなって。それくらい自信がありましたし、ちょっと試してみたいと思ったんですよ。それで、5月に新潟で行われた『ながおか 米百俵フェス 〜花火と食と音楽と〜 2025』でやることにしたんですけど、リリース前の新曲をフェスでやるなんて、ファンモンのファンですらちょっと驚いていました(笑)」

──(笑)。お客さんの反応はいかがでしたか?

ファンキー加藤「もう、めちゃくちゃ盛り上がってくれました。最初から一体感が生まれるような、自分たちがイメージしていたのとまったく同じような光景が目の前に広がっていたので、ますますこの曲に対する信頼感が増しました」

──そんな自信作のジャケット写真は幼少期のお二人。どことなく面影が残っていてかわいらしいです。

ファンキー加藤「なんだったらジャケットが一番自信あります(笑)」

モン吉「かわいい(笑)」

ファンキー加藤「子供はみんなかわいい。これもう、間違いないです(笑)」

モン吉「子供の頃の写真をジャケットにするっていうのは、昔、ケミちゃん(※前身のグループ「FUNKY MONKEY BABYS」時代のメンバー、DJケミカル)はやっていたけど、僕たちは今回が初めてです」

ファンキー加藤「ケミカルはアルバム『ファンキーモンキーベイビーズ4』(2011年)の初回限定盤だったかな。そのケミもまたかわいくてね」

モン吉「ケミちゃんはずっとかわいいけどね」

──お二人のあの写真は、それぞれお気に入りの1枚を使ったんですか?

ファンキー加藤「いや、僕はおふくろにお願いしました。“実家のアルバムで僕が写っている写真を持ってきてくれない?”って。そしたらアルバムを山のように何冊も持ってきてくれて(笑)。“こんなに撮ってくれていたんだ”って、その時点で親の愛を感じました。とはいえ、そこから自分で選ぶのは大変ですし、よくわからないから、スタッフさんに全部渡して、“いいのを選んでください”ってお任せしました」

モン吉「僕は前に何かで子供の頃の写真が必要っていうので、事務所の方に何枚か渡していたものがあって。その中の1枚を使ってもらいました。でも、2枚ともテイストが全然違うのによくジャケット写真にできたよね?」

ファンキー加藤「技術だね、技術。奇跡の1枚になっていると思います(笑)」

──ちなみに、今回のタイトル「音楽を鳴らそう」にちなんで、お二人が普段の生活の中で音楽が鳴る瞬間を教えていただけますか?

ファンキー加藤「僕はジョギングの時間ですね。今、毎日5kmくらい走っているんですけど、“どういう曲を聴こうかな?”って、走る前にセレクトしている時間が一番楽しいかもしれないです」

──どんな曲を聴くんですか?

ファンキー加藤「日によって全然違うんです。J-POPのトップ100だったり、昔よく聴いていたヒップホップだったり。それこそ、この間サザンオールスターズの東京ドーム公演を観させていただいたんですけど、そのときのセットリストを聴いて余韻に浸ったり。毎日5km…30〜40分くらい、いろんな音楽を聴いています」

──モン吉さんは?

モン吉「僕はいろんなタイミング…車の中だったり、家だったり、キャンプで焚き火をしながらだったり、ちょこちょこ聴いています。ジャンルもバラバラで、それこそチルも好きですし、最近だとダウンテンポとかも好きですし。ちょっとノリが欲しいときはテクノを聴いたり…。その時々の自分のモードに合わせて選んでいますね」

──お二人にとっての音楽のように、「音楽を鳴らそう」もファンのみなさんの生活を彩る1曲になるように感じました。この楽曲を引っ提げての夏フェスも楽しみですが、9月からはついにファンモン再始動後最長となる20周年記念全国ツアー『FUNKY MONKEY BΛBY’S 20th anniversary TOUR 〜そのまんま東へ西へ〜』がスタートします。

モン吉「来年の5月までですからね。長いなぁ(笑)。でも、週1のいいペースでできるかな?」

ファンキー加藤「楽しみですね」

──前半はライブハウス、後半はホールと、会場の規模も変わりますし、何より長期間に及ぶので、内容も少しずつ変化していくのでしょうか?

モン吉「だと思いますね。ライブハウスとホールは違いますし、それぞれの中でもちょっとずつ変えていくと思います」

ファンキー加藤「ライブハウスはホールとはちょっと捉え方が違いますしね」

モン吉「(ライブハウスは)覇気が大事だよね」

ファンキー加藤「覇気(笑)」

モン吉「やっぱりお客さんとの距離が近いので」

ファンキー加藤「ホールは演出…映像とか照明によって全体のエンターテインメントとしてのライブなんですけど、ライブハウスは生身の人間のぶつかり合いというか…」

モン吉「もう、こことそこなので、サボってるとバレちゃうんですよ。いや、別にホールでサボってるってわけじゃないですけど(笑)」

ファンキー加藤「まぁ、まぁ、それは冗談として、でもやっぱりライブの作り方は違ってきます。もちろんどちらも全力です。でも、もう言っちゃいますけど、ライブハウスもホールも「音楽を鳴らそう」はセットリストに入っています(笑)。他のことはまだあまり言えないですけど、これだけは宣言しておきます(笑)」

──また、このツアーの期間中にはデビュー20周年を迎えます。今後また振り返っていただく機会もあると思うのですが、20周年を目前に控えた現時点での心境はいかがですか? デビュー当時、20周年を迎えられると思っていましたか?

ファンキー加藤「あまり考えてなかったですね。20年って、デビュー当時の僕たちからしたら途方もない数字だったので。この間、いきものがかりの水野(良樹)くん…彼とは同い年で、同じ2006年デビューの同期なんですよ。さらに、お互いに地元を大事にしていて、いきものがかりは活動休止期間、僕たちは解散していた期間があって、メンバーも3人から2人になってって、似ているところがたくさんあるんですけど、そんな水野くんとご飯に行ったときに、“20周年っていう数字はちょっとだけ胸を張ってもいいよね”みたいな話をしたんです。同期デビューのグループも少なくなっていく中で、こうやって活動し続けてこられたことはありがたいねって話をして。でも、その一方で、サザンオールスターズの東京ドーム公演を観に行ったら、桑田(佳祐)さんがMCで言うわけですよ。“数年後には50周年です”って」

──おお…! 20年を倍にしても届かない50周年…!

ファンキー加藤「頭がクラクラしました(笑)。だから、まだ全然あぐらをかくようなタイミングでもないですし、“もっと頑張んなきゃな!”って。でも、両面ありますよね。水野くんと“20年、お互いよく頑張ってこれたね”って言える20年でもあり、もう一方で、大大大先輩が仰った“数年後には50周年”という数字にまだまだ頑張んなきゃって思える年数なので、その両方の気持ちを持ってツアーを回っていこうと思っています」

──モン吉さんは20周年を前に、今どんな気持ちですか?

モン吉「人生の思い出に残るような、いい1年にしたいなと思います。20年歩んでこないとできない時間の過ごし方だと思うので、噛み締めながらやっていきたいですね」

(おわり)

取材・文/片貝久美子

RELEASE INFROMATION

FUNKY MONKEY BΛBY’S「Come back home」初回限定盤(CD+DVD)

2025年8月20日(水)発売
UPCH-7767/6,500円(税込)

初回限定盤(CD+DVD)

FUNKY MONKEY BΛBY’S「Come back home」通常盤(CD)

2025年8月20日(水)発売
UPCH-6045/1,100円(税込)

通常盤(CD)

LIVE INFORMATION

20周年記念全国ツアー『FUNKY MONKEY BΛBY’S 20th anniversary TOUR 〜そのまんま東へ西へ〜』

ライブハウス公演
2025年9月6日(土) 青森 青森Quarter
2025年9月13日(土) 岐阜 岐阜club-G
2025年9月20日(土) 鳥取 米子 AZTiC laughs
2025年9月27日(土) 鹿児島 鹿児島CAPARVO HALL
2025年10月4日(土) 滋賀 滋賀U★STONE
2025年10月12日(日) 愛媛 松山WStudioRED
2025年10月25日(土) 沖縄 桜坂セントラル
2025年11月1日(土) 長崎 長崎Be-7
2025年11月8日(土) 長野 長野CLUB JUNK BOX
2025年11月16日(日) 新潟 新潟LOTS
2025年11月22日(土) 広島 広島CLUB QUATTRO
ホール公演
2025年12月6日(土) 山形 山形市民会館 大ホール
2025年12月14日(日) 福岡 福岡サンパレス ホテル&ホール
2025年12月19日(金) 千葉 市川市文化会館 大ホール
2026年1月12日(月・祝) 静岡 静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
2026年1月17日(土) 兵庫 神戸国際会館 こくさいホール
2026年1月25日(日) 香川 サンポートホール高松 大ホール
2026年2月14日(土) 熊本 市民会館シアーズホーム夢ホール
2026年2月23日(月・祝) 神奈川 相模女子大学グリーンホール 大ホール
2026年3月1日(日) 岡山 岡山芸術創造劇場ハレノワ大劇場
2026年3月15日(日) 埼玉 大宮ソニックシティ 大ホール
2026年3月22日(日) 大阪 オリックス劇場
2026年3月28日(土) 宮城 仙台サンプラザホール
2026年4月4日(土) 東京 J:COMホール八王子
2026年4月5日(日) 東京 J:COMホール八王子
2026年4月19日(日) 北海道 札幌市教育文化会館(大ホール)
2026年4月30日(木) 愛知 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2026年5月9日(土) 福井 福井フェニックス・プラザ エルピス大ホール
2026年5月24日(日) 東京 昭和女子大学人見記念講堂

20周年記念全国ツアー『FUNKY MONKEY BΛBY’S 20th anniversary TOUR 〜そのまんま東へ西へ〜』

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