“クタクタの足を何とか引きずって 現れたのは行き止まりだった”
(デッドエンド/SEKAI NO OWARI)
敬愛するSEKAI NO OWARIの『Nautilus』というアルバムがリリースされたとき、その中でもより強く惹かれたのが「デッドエンド」という曲だった。
「デッドエンド」なんて曲名でありつつ、もしわたしが言葉にしたらただひたすら暗くなってしまいそうな情景や感情を歌詞にしながらも、道が開けたような明るさとポップさで歌うこの曲。
暗い感情を暗さだけで歌わないということは、わたしが何度もSEKAI NO OWARIに救われてきた理由であるかもしれない。
2024年にリリースされたこのアルバムのこの曲の歌詞の背景を知ることができたのは、つい先日のことだった。
いまだから言える話だけれど、わたしはその日、とにかく元気が出なかった。
6周年記念ワンマンライブの半月前。日々のライブも変わらずありながらワンマンライブの準備が進みつつ、8月にリリースするアルバムの作詞もしていて、それに加えて毎週のように遠征をしていた。毎日とにかく追われていた。気付いたら朝で、気付いたら夜で、いつもできているはずのことすらうまくできなかった。
追われているというより、責め立てられているような気分だった。
ライブは楽しい。ワンマンライブをやらせてもらえることも、CDをリリースできることも、全国どこに行っても会いに来てくれる人がいてくれることも、作詞を任せてもらえることも、なにもかも嬉しくて有難くて幸せなことだ。
それでも、それに苦しんでいる自分も並行して存在していることが、悔しかった。
がんばりたいのにうまくがんばれなくて、でもがんばらないといけないから必死で、ぼろぼろな日々にどんどん沈んで抜け出せなくなるような感覚だった。
6月13日の朝、更新されたFukaseさんのInstagram。
“この写真は載せるつもりは無かった。”
“酷い乗り物酔いの様な、二度と酒を飲まないと誓う二日酔いの様な体調がおよそ二年間続いた。”
わたしがここで簡単に語れるような過去を過ごしてきた人ではない。
世界の終わりだと思ったときに始めたバンドだからという理由でこのバンド名が名付けられたように、『世界の終わり』を経験している人だ。
“『夜空に花びらが舞うような出逢いも』という歌詞はこのチームラボのFloating in the Falling Universe of Flowersの中で書いた。”
これは、「デッドエンド」の歌詞だった。
わたしが惹かれた音楽は、わたしの想像もできないような苦悩のなかで生まれたものだったのかもしれない、と思った。
“動けるときに動いたらいい。やっぱり頑張れてる時はラクだ。”
“何の生産性も無く、無意味なあのベッドルームでの戦いがおれの血や肉になってると良い。”
わたしがSEKAI NO OWARIに出会ってから10年以上、1秒たりとも飽きることなく愛し続けているのは、SEKAI NO OWARIの音楽が、人として好きだからなのだと思う。
メンバーのこういう発信を見るたびに、わたしはまたこのバンドのことが、この音楽のことが、さらに好きになるのだ。
わたしはこのInstagramの投稿のことを思って、「デッドエンドエンド」を聴きながら、遠征に向かう電車に乗っていた。
先日7月1日、わたしたちの6周年記念ワンマンライブ<If>を無事に終えることができた。
前回Vol.6でも書いた通り、今回のワンマンライブはコンセプトが異質なものだった。だからわたしたちは、できるだけあのコンセプトの意味が伝わるように、できる限りのツールを使ってたくさんの発信をしてきた。
自信満々のように書いた前回の記事だったけれど、内心ずっと不安だった。ライブは、やってみないとどうなるか分からない。ステージも、フロアも。
だからこそ必死になることしかできなかった。人に伝わるように。そして、わたしたち自身も覚悟を持てるように。
そうやって迎えた当日を終えたいま、あのワンマンライブを観てくれたひとりひとり全員がどんな感情になったのか、すべてを分かりきることはできない。
でも、そんななかでも、嬉しい言葉をたくさん貰った。
わたしたちが発信したものの影響で、気持ちに変化があった、と。
そして、わたしの文章を読んで、安心した、コンセプトの意味が分かった、ワンマンライブが楽しみになった、と。
なにもせずに当日を迎えていたらどうなっていただろう。
なにもがんばれていないと思っていた。でもきっと、そんなことはなかった。
欲を言うならもっと自信を持って当日を迎えたかった。あのぼろぼろの日々のわたしに大丈夫だよと教えてあげたいくらいだ。
あのぼろぼろな日々も、わたしにとって意味のあるものであったと信じたい。意味のあるものにするために、これからも戦い続けたいと思った。
“目が眩んで見落としてたものは こんなに綺麗だった”
(デッドエンド/SEKAI NO OWARI)
ツクヨミケイコ
1月13日生まれ、東京都出身。2019年5月に結成、同年7月1日にデビューした、7人組アイドルグループ・SOMOSOMOのメンバー。「全身全霊ではしゃぎ倒す」をコンセプトに掲げ、ロックを軸とした楽曲でエネルギッシュなライブパフォーマンスを行なっている。SOMOSOMOでは楽曲の多くの作詞も担当している。
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※「大丈夫、わたしには音楽がある」は隔週月曜日更新予定です。
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