バッド・ジーニアス 危険な天才たち
オリジナル版の日本公開は2018年9月
評判を耳にして公開終了直前の11月に滑り込みで観た思い出
バッド・ジーニアス 危険な天才たち:タイ映画史上歴代No.1ヒット作。公開終了している劇場も多い中ようやく見れた。まずカンニングを題材とするケイパー映画としてしっかり面白い!さらにあの結末で倫理面をクリアすると同時に“これから彼らの物語が始まる”青春映画としても傑作に。見れて良かった。
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) November 15, 2018
その後、たまにX(当時はまだTwitter)でちょくちょく紹介するほどには好きな映画にw
Netflixの『ハーフ・オブ・イット』の冒頭シーンを見たら一昨年スマッシュヒットしたタイ映画『バッド・ジーニアス』を思い出した。試しに検索したら何とAmazonプライムのスターチャンネルEXの見放題に含まれてる!https://t.co/hwLl1Oa2MF
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) May 4, 2020
おぉ!今はAmazonプライムでもNetflixでも見られるけど、どちらにも加入してないという人は是非この機会に見てほしい傑作|高校生が世界を股にかけたカンニングに挑む、「バッド・ジーニアス」BS12で放送 https://t.co/a9qhDHezO2
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) March 2, 2021
コロナ禍のステイホーム期間に家で配信で観れる面白い映画って文脈で紹介したんだっけな。
あと、めちゃくちゃ覚えてるのが『日向坂で会いましょう』のテロップw
サンプリング的なヒップホップ精神で佐久間Pや藤井Pの演出術に最も近いのはこの番組なのではないかと、バッド・ジーニアスからの永源遙という引用の幅広さを目の当たりにして思わされる #日向坂で会いましょう
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) October 28, 2019
確かクイズ企画中のカンニング疑惑に対して出たテロップだったと思う。
ただただ「すげぇなw」と感心したw
バズ・プーンピリヤ監督の次作(製作総指揮はウォン・カーウァイ!)の『プアン/友だちと呼ばせて』も良かった。
もう3年前なのか。
あと完全に余談だが、カンニングを題材にした映画といえば個人的に『That’s カンニング!史上最大の作戦?』の予告編を映画館で観た記憶がある。
1996年8月
主演は『SWEET 19 BLUES』をリリースした直後の安室奈美恵
ただ、当時小3の自分が観た何の映画の予告編だったのかが謎なんだよな…
ゴジラやドラえもんの予告編でカンニングを題材にした映画は宣伝しないだろうしw
閑話休題
そんな『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』がハリウッドでリメイク。
この手の「リメイク権を獲得」はよくあるニュースだが、本当に実現するのはそこそこ珍しい気がする。
宣伝文句は
アジア熱狂の話題作を『コーダ あいのうた』のスタッフがパワーアップ!
https://gaga.ne.jp/badgenius/
スタッフほとんど被ってない気がするけどw
むしろ撮影・編集・美術といった辺りは海外ドラマの傑作に関わったスタッフが集まっている。
ちなみにドラマといえば、なんと(?)『バッド・ジーニアス』は本国タイでドラマ化されています。
日本だとU-NEXTで配信中
全12話たっぷり尺あるだけにオリジナル映画版からは結構改変されている。
今回のハリウッド・リメイク版と合わせて見比べるのも一興かと。
上映時間が30分短縮
原作と今作を比較してまず驚くのは尺が30分も短くなっていること。
本作の鑑賞後に改めて原作を見直したのだが、
ストーリーの流れはほぼ同じ
印象的なシーンは踏襲
ただし、サスペンス演出は全体的に短くなっている(良く言えばテンポ向上、悪く言えば淡白)
原作はサスペンス演出によるハラハラドキドキ感の醸成にかなり力点を置いている。
特にクライマックスのSTIC(アメリカ版ではSAT)のシークエンスは結構長め。
その中で手を替え品を替えトラブルを起こしてどんどん盛り上げていく。
特に劇伴と編集がとても効果的。
カンニングという小さなシチュエーションから極上のケイパーを生み出す卓越した演出手腕が光る。
一方でリメイク版はサスペンス演出は当然あるもののオリジナル版よりは抑えめ。
演出メソッドもカットをスピーディーに割るという手法を踏襲している。
個人的には原作ぐらいサスペンスやってくれた方が映画を観る喜びを感じられるかなー
まぁ確かに長回しワンカット撮影みたいなコペルニクス的転回をしなければ原作に勝つのは難しいし、じゃあ長回しに勝算があるかといったら微妙だし仕方ない面はあるか。
何事も勝率が低い場所で戦うべきではない。
勝ち易きに勝つ、である。
脚色
そこで本作が勝負しているのが脚色。
舞台をアメリカに改変したことで、人種や移民というテーマが前面に。
(格差社会は原作とも共通か)
特に移民という要素はバンクがカンニング計画に参加する動機にも関わってきている。
この改変・脚色は多民族国家の現代アメリカならでは。
単に焼き直しをやっても仕方ないし、アメリカがリメイクする意義が見えて良かった。
奇しくも同日公開のジェームズ・ガン版『スーパーマン』とも共鳴。
ラストについて
本作の売りの一つが
オリジナルとは異なる“新たなラスト”
https://gaga.ne.jp/badgenius/about/
原作のラストは確かに倫理的な正しさを担保しつつ父娘の物語に帰結させる美しいものだった。
しかし、冷静に考えると「金持ちに貧乏人が都合よく使われて罪を犯した」感も否めない。
リメイク版ではその使う側・使われる側の矢印が逆転するラストに改変されている。
ほろ苦く終わったオリジナル版に対して痛快に終わるリメイク版。
終わり方も下手に引っ張らずスパッと終わらせるのが良い。
タイトルのBad Geniusともしっくり来る。
あのラストに繋がる伏線の張り方も巧み。
「今回の作戦でスマホに何かアプリ入れる必要あるんかな」ぐらいで思わず流してしまうさり気なさ。
しかもグレースとパットの痴話喧嘩が同じ画面上で起きてるから観客は完全にそっちに気を取られるw
あと原作では印象的だった
がリメイク版ではカットされている。
これも「倫理観と現実的な金銭の狭間で揺れ動く」のではなく、自身を利用してきた連中を逆に利用してやるという貪欲さに着地するなら不要ということだろう。
サスペンス演出はやはりタイのオリジナル版が一枚上手かなと思いつつ、今のアメリカで撮る意義を見せてくれる良いリメイクでした。
おまけ
主演のカリーナ・リャン、どことなく月島琉衣に似ている気がする。
カリーナ・リャン
月島琉衣
次回作は実写版ストリートファイター!
実写化の企画が進んでたの初めて知ったw