片桐はいり エッセイ集より 「 玉手箱をあけたら 」 朗読

片切り 入りフィンランドエッセ より玉手箱を開け たら1月と少しの北欧の旅から戻って飛行 機を降りるとごぶ沙汰していたアジアの 湿気がいきなり鼻の奥を 押国から帰って1に吸う空気は寝不足の朝 の目覚ましの音みたいに今々ましい 日本ならば汗まみれの夏の1月を爽やかで 涼しいフィンランドで過ごしたものだから ああとうとうユラシア大陸の端っこの 小さな島に帰ってきてしまったんだわと 目覚まし時計の予びはいつもよりじリじリ 大きく響いて私は一気に夢から覚めた 帰りを待ちびてくれる人も動物も植物すら なくて待っているのは女1人食べていく ための最低限の仕事だけという私のような 人間は残念ながら旅に出て家に帰りたい などと思ったことは1度もない どこにでもすぐ馴染んで1人でも暮らして いけるタイプだだから旅の終わりは必ず 憂鬱なのだ 1月ぶりの我が家はなんだか縮尺が違って 見えるヘルシン機の豪華ではないけれど インテリア雑誌で見るようなシンプルで 素敵なアパートメントホテルに暮らしてい たので我が部屋はちんまりと小物に見える テーブルもソファーもフィインランドの ものはごつくはない程度にそれぞれ余裕を 持ってたっぷりと作られていたから我が家 の場合は部屋の大きさに比べて家具がらず に思えてしまうみたいだ 家具の質はもちろん問題外だが色も素材も それぞれ点で透き勝っ手だし配置も空間の 使い方もおよそフィンランドの部屋に及ば ない さすが家に帰りたいと思ったことのない人 の部屋だわと思う それにしてもフィンランドの人の家具や 雑貨へのこだわりはすごいと思うほとんど 太陽が登らない長くて厳しい冬を外に出ず に過ごすために家の中をできる限り綺麗で 居心地よくしていたいそんなギリギリ切実 な小だわりがあの機能的で美しい北王感を 生むのだろう 外に出る洋服はおしゃれでなくても部屋に 帰れば家具は極めつけという人がたくさん いるらしい その証拠に街をぶらついていてインテリア や雑貨食器やら電荷製品やらの素敵なお店 はガイドブックを見なくてもあらゆる場所 で見つけられたけれど素敵な洋服屋さんを 発掘できる確率は悲しいほど少なかった 出国する時は持っていく洋服は最小限で あとは現地調達帰告する時は全身現地の服 ということが多いのだが今回ばかりは もちっとあれこれ持っていくんだったわと 少し後悔した さて極闘の我が家は小物感はいめないが見 たこともないくらい整理正頓されて新築 物件のような匂いがした もちろん誰かがしてくれたわけではない 出かける前に自分で切っせと片付けたのだ 普段の私は決して綺麗好きと言われる種類 の人間ではない食べ終わった食器は何回か 分まとめて洗いましょうというタイプだし 洗濯は好きだが畳んだりしまったりが嫌い なのでいつも洗濯済みの衣類がゴミの山の ようにうずかく詰まれているだけどなぜか 旅に出る前だけは異常に綺麗好きになるの だ フィンランドに立つ前も大忙しだった 1日前まで舞台の公演をしていた大阪で 先週落を迎えせめて串活だけは食べさせて と梅田の地下で30分だけ打ち上げをして 飛んで帰ったそしてスーツケースの中身を 放り出して難波仕様から北欧様に丸ごと 入れ替えてその日の翌日旅立だったのだ それにしてはよくこんな大掃除をする時間 があったものだと割れながら関心する 極度の疲労感で猛としながらやったので 細かいことは思い出せないが疲れたよう ベスを回きながらそれこそ疲れたようにお 風呂場の排水溝を歯ブらしで磨いたことを 覚えている よく見るとあちこち見事に悪されたりして いて恐ろしいくらいだお正月でもこんなに 綺麗だったことはないなぜだかよくわから ないが私の家は家主の留守中が1番綺麗で 住いらしい 立つ取りを 子供の頃からどういうわけかこの技に操ら れているだから200日程度の旅行ならば さておき1週間以上出かけることになると この断技を呪文のように唱えながら混乱し た部屋を整え始めるそれはもう脅迫関連の ようなものだ 旅行だけではない何日か過ごした劇場の 楽屋を出る時も旅先のホテルでもできれば 私が使ったという後方をなくして部屋を後 にしたい さすがに我が家の場合は後方をなくすわけ にはいかないのでせめて生活の痕跡だけは 決して出かけたいと思ってしまう 旅行の前に片付け物をすると無事に帰って 来られないような気がしてしまうので絶対 しないという友人もいる 帰ってきて部屋が出かけたままの とっちらかした状態だと安心するのだそう だ 私のはジンクスとも違うがCて言えばもし 旅行中に私に何かあって2度とこの部屋に 戻れない時訪れた誰かにまるで覚悟をして 出かけたように綺麗でしたなんて言われ たいのかもしれない 帰る間にはヘルシンのホテルの庭の木は 紅葉を始めてそろそろ手袋を買おうかしら と悩むくらい寒かった 9月の東京はまだ十分に夏でセミが泣いて いる杉田季節をもう1回巻き戻すような 不思議な気持ちがした 飛行機のレキなのかフィインランドの秋の 仕業かトランコを開けると荷物はひんやり 冷たくて向こうで使っていた洗剤の濃い目 の高量の匂いがもわんと立ちのった できればこの冷たさをもう少しの間味わっ て痛かったがあっという間にトランクの 中身は抜くまって湿気を吸ってじっとりと していく お土産と言ってもたくさんの友達に配る キリトルガムダのフィンランドタバコだの 駒ごまとしたガラクタだらけで効果なもの など1つもないそんなガラクタどもを広げ ていたら気塚ぬうちに部屋中が住み慣れた 混乱の世界に戻っていた洗濯物もいつもの ようにまたどっかりと積み上げられている まるで浦島 太郎で手箱を開けた途端にフィインランドの秋はき消えて全てが元の世界に戻ってまった 1 つ具前と同じようにいい具合に散らかった我が家で自さボケの罠とも知らずに目覚ましもかけずに次の日の夕方までぐっすり眠った よろとトイレに起きて世を済ませ水を流さ として水洗のレバーがないことに気がつい た フィインランドではホテルでもレストラン でも公衆トイレでもほとんどのトイレは 便器の後ろのタンクの上に小さいト手が 付いていてそこを引っ張るなり押すなりし て水を流すシステムだった 我が家のトイレはその部分が蛇口になって いて手洗い用の水が出る仕組みになってい た 寝ぼけマナ子でウォシュレットのボタンを 触ったりあちこちをいじくってようやく タンクの横に銀色のレバーを発見した おいおい自分の家のトイレの流し方を 忘れるほど長い旅じゃなかろうよと誰かに 突っ込まれて改めてしみじみ我が家の便器 を眺めた 便キはあんぐり口を開けて水を流しながら そうやってどこにでもすぐ馴染んで1人で も生きていけますみたいな顔をしていると そのうちに本当に誰からも心配されなく なっちゃうよと私に忠告をした

片桐はいり エッセイ集より 「 玉手箱をあけたら 」 朗読
#片桐はいり#かもめ食堂#わたしのマトカ

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