『F1(R)/エフワン』
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先月の27日に公開され、大きな話題となっているブラッド・ピット主演映画『F1(R)/エフワン』。最弱チームが一丸となってワールドチャンピオンを狙う“熱い”展開もさることながら、度肝を抜かれるのは、F1カーを本当に操縦しているかのようなスピード感のある映像。この撮影に、実はソニーが新たに開発した“F1特別仕様”のカメラが使われている事が明らかになった。
いったいどんなカメラで、どのように撮影したのか?その詳細に迫っていこう。
ソニーの“F1特別仕様”のカメラが生まれるまで
実は、映画『F1/エフワン』は、あの『トップガン マーヴェリック』を手掛けたジョセフ・コシンスキー監督がメガホンを執り、撮影監督も同じクラウディオ・ミランダ氏が担当している。
ジョセフ・コシンスキー監督
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トップガン・マーヴェリックの撮影では、ソニーのデジタルシネマカメラ「VENICE 2」や、6台ものIMAXカメラを戦闘機F/A-18のコクピットに搭載し、臨場感溢れる映像を撮影したコシンスキー監督とクラウディオ氏のコンビ。狭いコクピットにカメラを設置するため、VENICE 2のカメラ部分だけを本体から取り外し、ケーブルで接続するエクステンションシステムが使われた。この時から、ソニーとクラウディオ氏はタッグを組んでいたわけだ。
撮影監督のクラウディオ氏
その繋がりもあり、2022年、クラウディオ氏からソニーに「今度はF1映画を撮影するためのカメラを開発して欲しい」という依頼が舞い込む。
ソニーがクラウディオ氏の要望を聞くと、「棒の先にカメラのセンサーだけを取り付けて、F1カーを操縦している俳優を外側から撮影したい」のだという。簡単そうに聞こえるが、実際は真逆。なにしろ、取り付けるF1カーは時速200km以上で走る。凄まじい振動や加速度がカメラにかかるだけでなく、飛散した砂や石がまるで弾丸のようにカメラを襲う。超過酷な環境だ。
カメラ部はできるだけコンパクトにしなければならない。クラウディオ氏の要望を受け、開発に取り掛かったソニーのエンジニアたちは、ソニーのカムコーダー「FX6」をベースに、そのカメラブロックを本体から分離。延長ケーブルで接続できるようにしたモデルを作り出す。カメラ部自体はFX6のそれよりも小型化し、狭所に設置しやすくした。
さらに、レースカーの前方を映していたカメラが180度回転し、ワンカットのままドライバーの緊迫した表情を捉えるなど、カメラを遠隔操作する必要もある。そこで、カメラ設定や遠隔操作などに、音楽ライブの撮影などにも使われるリモートカメラ「FR7」の技術を投入。カメラヘッドの回転やフォーカスなどの部分では他社と協業。クラウディオ氏の依頼から、わずか4カ月で最初の試作機が完成したというから、ソニーのエンジニア達の技術力の高さに驚かされる。
その試作機をクラウディオ氏に触ってもらい、その意見もフィードバックさせ、要望から6カ月後に“F1特別仕様”のカメラが完成した。
トップクリエイターの声から生まれた技術で、クリエイションの裾野を広げる
前述の通り、ソニーは2025年夏にシネマカメラの「VENICE 2」と組み合わせて使用する、「VENICEエクステンションシステムMini(CBK-3621XS)」を発売予定だが、このVENICEエクステンションシステムMiniに、“F1特別仕様”のカメラ開発で培った、カメラヘッドの超小型メカ設計や、ドロップインタイプのNDフィルタなどが活かされているという。
ドロップインタイプのNDフィルタなどが、VENICEエクステンションシステムMiniにも活かされている
クリエイターの声を聞き、その要望に寄り添って開発を行ない、今までになかった映像表現を可能する。さらに、そこで培った技術を次の製品に活かすというサイクルが生まれる。トップクリエイターの声を反映した技術は、シネマカメラだけでなく、一般のユーザーも手にするCinema Lineのカメラにも展開され、クリエイションの裾野を広げる事にも貢献している。
会場でクリエイターと対話するCinema Line事業部門長の高橋暢達氏
こうした取り組みにより、IMDbの調査によれば、デジタルシネマカメラで撮影されたアカデミー賞ノミネート作品における、“ソニーのカメラの採用率”は、2022年には10%未満だったが、2025年には50%にまで上昇。シネマ業界におけるソニーのカメラの使用率は着実に増加している。
また、ソニーはエンタテインメント・テクノロジー&サービス分野において、事業の軸足をコンテンツクリエイションにシフトしており、NCC(ニューコンテンツクリエーション)事業部を新たに設立。シネマラインの事業だけでなく、バーチャルプロダクションやXR部門なども同じ傘下に入っている。カメラ開発に留まらず、ソニーの持つ様々な技術を結集して、クリエイターの要望に応える体制を作ることで、さらに、我々の予想を超える映像や体験を生み出してくれそうだ。
『F1(R)/エフワン』
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