松田聖子が詞曲を手掛けた楽曲で感じる声質の魅力と深い表現力
DISC 3&4は、「聖子が選ぶ!!オリジナル・シングルベスト」。全23曲のラインナップを見ると、本人が歌っていて心地よいと感じるであろうミディアムテンポやバラード曲、さらに周年というメモリアルとしてファンにとっては欠かせないであろう曲がバランスよく並んでいる印象を受ける。アイドルとシンガーソングライター、その両方の視点から選んだのではないかと考える。
ここではシンガーソングライター・松田聖子にスポットを当てたい。1990年代に入り、“Seiko”名義で全米デビューを果たしており、その経験が凝縮されているのが「素敵にOnce Again」(1995年)だ。リズム感に富む洒脱なメロディライン、低音を効かせすぎないダンサブルなトラックなど、当時のブラックコンテンポラリーやAORを感じさせる一曲となっている。トラックの音数も比較的多く、ウォールオブサウンドを彷彿させるシティポップとしても完成度が高い。改めて驚くのはその“声質”の魅力だ。どんな楽器、どんなトラックにも埋もれない。鈴のようでも、ただの透明感でもない、存在感のあるクリアな歌声――そんな彼女の無二の個性が発揮されている。
もう一曲、彼女が詞曲を手掛けた「いくつの夜明けを数えたら」(2010年)を取り上げたい。ピュアなメロディが特徴のバラードだが、この曲では、ボーカリストとしての松田聖子の大きな武器である滑らかさを堪能できる。フレーズの繋ぎ目や、低音から中高音への自然な移行など、丁寧で多彩なアプローチが施されていることがわかるのではないだろうか。
本稿の執筆にあたり、これまでにリリースしたベスト盤を数えてみたところ、延べ50作品を超えていた。活動歴の長いアーティストは長くなればなるほどにベスト盤のリリースに苦心する傾向があると思うが、彼女はそれに当てはまらない。つまり、それだけ“色褪せない名曲”が数多く存在するということなのだろう。
45周年を記念したオールタイムベストのリリース直後である6月7日からは、さいたまスーパーアリーナを皮切りに45周年を記念した全国アリーナツアー『45th Anniversary Seiko Matsuda Concert Tour 2025』がスタート。さらに先日、9月5日、6日に日本武道館での追加公演も発表されたばかりだ。
今なお精力的にライブ活動を続ける彼女の姿は、多くのファンにとって希望であり、“青春”そのものだろう。ベストアルバムとともに全国を巡るツアーは、これまで彼女の音楽に励まされ、心を動かされてきたすべての人々と、改めて“名曲たち”を分かち合う時間となるはずだ。
松田聖子のデビュー45周年イヤーという“祝祭”を彩るのは、今もなお心に響き続ける“永遠の名曲”たちの数々である。

松田聖子『SEIKO MATSUDA 2020』で振り返る“40年の軌跡と新たな魅力” 往年の名曲から今を象徴する新曲まで、深く味わう
デビュー前の素朴なポートレイト、そして圧倒的なオーラを放つ現在の表情を並べたCDジャケットがまず印象に残る。1980年に「裸足の…

松田聖子こそ“アイドル”の最終的な理想? 通算50枚目の新作アルバムもランクイン
参考:2016年6月6日~2016年6月12日のCDアルバムランキング(2016年6月20日付)(ORICON STYLE)
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伊藤亜希
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ライター・編集。イタリアンバルの店員。
店のムードやお客様の様子に合わせ、
BGMを即変更出来るサブスクの面白さ実感中。
ほんと、音楽は万人に通ずる共通言語だなぁ。
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