大きな話題となっている映画『国宝』(原作、吉田修一)。伝統芸能である歌舞伎の絢爛で荘厳、艶やかで優美な美しさを堪能できる作品です。映画を観ていると、歌舞伎の舞台を鑑賞しているような感覚になるので、ぜひ劇場で見て欲しい作品です。

 

※以下、ネタバレを含みます※

 

任侠の一門、立花組の組長を父に持つ喜久雄(吉沢亮)は目の前で父親が殺され、天涯孤独の身に。父親と親交があった上方歌舞伎の名門丹波屋の当主・花井半二郎(渡辺謙)は、喜久雄が余興で演じる姿を目にした際、まだ素人であった喜久雄のあまりの才能に目を奪われます。喜久雄を引き取り、歌舞伎役者として育て上げていくことに。

半二郎の跡取り息子・俊介(横浜流星)と喜久雄は同い年。兄弟のように、切磋琢磨し合いながら、歌舞伎役者へと成長していきます。

【映画『国宝』感想】拾われた天才と名門の跡取り。身分違いの歌舞伎役者の半生を描く_img0

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会


身分違いのふたり


世襲が基本である歌舞伎の世界で、よそから引き取られた人が歌舞伎役者になるのはかなり珍しいこと。名門一家の跡取りである俊介とは、「身分違い」なのです。


喜久雄は、俊介の母で丹波屋を取り仕切る幸子(寺島しのぶ)も認めざるを得ないほど、飲み込みが早く筋が良い。一方の俊介は跡取りとして幼い頃から期待され、仕込まれてきていますが、天才肌とは言えません。さらに真面目とも言えず、早くから酒や遊びに興じていきます。喜久雄は天才肌である上に努力家でまじめなので、ふたりの実力に差がついていきます。

よそ者でなんの後ろ盾もないが才能と実力のある喜久雄と、血筋は立派で家柄のいいが遊び人のザ・ぼんぼんな俊介。この構図、現実世界でもあるあるですよね。早くからお金をかけていろんなことをさせても、才能が伸びるとは限らず、天才にあっという間に抜かれてしまうこともある。


芸事は、出自なんて関係なく実力勝負だから、喜久雄が圧倒し、俊介は鳴りを潜める……と予想もできるのですが、そうとはいかないのが歌舞伎の世界。

喜久雄は、最初こそ実力で名声をほしいままにし、スター街道を駆け上っていきました。

しかし、歌舞伎の世界では親がいないのは首がないのと同じ、というセリフがでてくるほど、親の後ろ盾が超重要な世界。よそ者の喜久雄がここまでこれたのは半二郎の影響力があってこそでした。

 

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