『魔物(마물)』(テレビ朝日系)が6月13日放送の第8話にて最終回を迎えた。
最終章突入の第7話は“ラブサスペンス”としてのサスペンス要素に振り切った内容であり、血まみれになったあやめ(麻生久美子)が手錠をかけられ、シートをかけられた担架で運ばれる凍也(塩野瑛久)という衝撃のラストシーンにて幕を閉じていた。その全ての真相が明らかになったのが第8話である。
これまでの回と比べてもかなり濃密な49分となっている最終回だが、まず特筆すべきは、あやめと凍也、さらに夏音(北香那)、陽子(神野三鈴)を含めたアクションシーンである。アクションシーンと言えば、オダギリジョーにとっての出世作とも言える『仮面ライダークウガ』(テレビ朝日系)のような特撮ドラマのイメージが強いかもしれないが、人と人の取っ組み合いも役者にとってはアクションと呼ぶ。
凍也があやめを殴り抜け、倒れた拍子にガラスが割れ、その破片で凍也はあやめを刺し殺そうとする。ガラスの破片を握り締めることで、あやめの顔に滴り落ちる凍也の血。しかし、あやめはハンガーラックのポールを武器に、凍也を返り討ちにする。
『魔物(마물)』“DVは甘美な世界”という不都合な真実 日韓共同作品だから描けた“内側”
『魔物(마물)』(テレビ朝日系)は、「DV」が大きなテーマとなっている作品だ。第1話の冒頭から、麻生久美子演じる弁護士・華陣あや…
ここで物語の核心に触れてしまうが、夏音がネクタイで凍也を絞殺する場面や、凍也からの屈辱的な扇動に堪える陽子など、これまで不倫、DVの表現に逃げることなく、果敢に挑戦してきたチームだからこその集大成と言えるアクションだったように思う。そして、その中心にいるのは役者陣。
特に、誰も愛したことのなかった凍也に対して、刃を向けながら「あなたを愛してた」と告げるあやめを筆頭に、あの頃と同じように手を差し伸べる凍也の隙をついて締め殺した後、沸々と恐怖が湧き上がる夏音、自ら階段から転落することを選ぶ策士の陽子が凍也に見せた微笑みといったように、これまで塩野瑛久が演じる凍也のアンビバレントな二面性が際立っていた分、女優陣の芝居が輝いていた印象だ。
また、この最終回は構成も素晴らしく、夏音の絞殺シーン、陽子の階段からの転落シーン
、警察に連行されるあやめが去り際に見つめた凍也のシーンを伏線にして、それぞれ捉え方が変わっていくのがもう一度見たくなるポイントだ。