書店にはビジネス書が大量にあふれているが、良書をどのように選べばいいのか。コンサルタントの山口周さんは「話題のビジネス書を読むくらいなら、古典と言われる本をもう一度読み直すべき。80人以上のコンサルタントが推薦する『9割の効果を生む1割の書籍』を紹介したい」という――。
※本稿は、山口周『読書を仕事につなげる技術 知識が成果に変わる「読み方&選び方」の極意』(角川文庫)の一部を再編集したものです。
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そもそもどの本から読むべきなのか
経営学などの勉強には興味はあるけど、ビジネススクールに通う時間はない。かといって独学しようと本屋を訪れれば、膨大な数の書籍を目の前にして、どの科目のどの本から勉強すればいいのかわからず途方に暮れてしまう。このような人は多いのではないでしょうか?
その気持ちは本当によくわかります。ちょうど20年ほど前の筆者自身が、まさに同じ状況だったからです。
筆者は2002年の5月、32歳のときに、大学卒業以来働いていた広告業界から身を転じて、外資系コンサルティングの世界で働き始めました。新しい世界で新しい仕事をやることにワクワクしていた一方で、大きな不安の種を抱えていたことをよく覚えています。というのも、これから経営コンサルタントとして仕事をしようというのに、経営学に関する体系的な知識をほとんど持っていなかったからです。
経営学の定番書を3年間で読破したが…
転職する前は「やっていけるのか」という不安がぬぐえず、なかなか決断ができずにいました。そんなある日、ファームの日本代表だった方から食事にお誘いいただき、お酒が入ったこともあって、直接聞いてみたことがあります。
「お聞きしたいのですが、僕はMBAを持っておらず、経営学のリテラシーがほとんどありません。それが御社で仕事をする上でハンデになるのではないかという点が非常に心配です」「まったく問題ありません。当社が採用で重視するのはジェネリックな資質だけです。経営学は、プロジェクトをこなしながら独学で勉強してくれれば、それで十分です」
日本代表の答えに一度はとても安堵したのを覚えていますが、逆に言えば、現時点では経営学のリテラシーは問わないけれども中に入った以上は身につけてくださいね、という意味でもあります。
ということで、私はとてもシンプルな対策をとることにしました。つまり、ビジネススクールで用いられる教科書を中心に、経営学に関連する定番の書籍を2年間かけてすべて読了してやろうと考え、それを実行したのです。今から考えれば、このアプローチは率直に言ってとても「スジの悪い」やり方だったと言わざるを得ないのですが、当時はその他の方法が思いつかなかったのです。