映画監督 平一紘/152
たいら・かずひろ 1989年8月、沖縄県出身。沖縄国際大学在学中に、沖縄県を拠点に活動する映画製作チーム「PROJECT9」を立ち上げ、卒業後は地元の百貨店に勤務しながら自主映画を製作。2018年、「未完成映画予告編大賞」に応募し、19年にグランプリ受賞。その後、製作した本編「ミラクルシティ コザ」(22年)で商業映画デビュー。主な映画作品に「アンボイナじゃ殺せない」(14年)、「釘打ちのバラッド」(16年)、堤幸彦監督との共同監督作「STEP OUT にーにーのニライカナイ」(25年)など。
井上ひさし原案の舞台を映画化した「木の上の軍隊」が現在、沖縄で上映中だ(7月25日から全国公開)。舞台は80年前の激戦地、沖縄県伊江島。沖縄出身で35歳の平一紘監督が作品に込めた思いとは──。(聞き手=りんたいこ・ライター)
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── 6月13日に沖縄で封切られ、7月25日から全国公開される映画「木の上の軍隊」は、「沖縄戦の縮図」ともいわれる沖縄県伊江島での80年前の激しい戦闘から生じた実話が基になっています。沖縄県出身の平さんにとって、オファーされた時の気持ちは?
平 「何でもやらせてください」という気持ちではありましたが、とはいえ「こんなに重たい作品か」とも思いました。実話がベースで、しかも沖縄戦という、僕が今まで勉強を避け、これまで作ってきた50本の自主映画でも触れようとしなかった分野でしたから。
── なぜ触れようとしなかったのですか。
平 理由は二つあります。まず、戦争を描く場合、かなり大規模な予算でなければインパクトのある作品は作れないと思っていたからです。もう一つは、沖縄出身の僕が沖縄戦を描くとなると、さまざまなバイアスをもって見られてしまう。だとすれば、県外の、沖縄の色がついていない人が作ったほうがよいのではない…
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週刊エコノミスト
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