東大受験のために親が子どもにできることは何か。娘の現役合格を経験した宗教学者の島田裕巳さんは「東大の問題は、大学の側が正解はないと公言しているように、読解力とともに柔軟な表現力が求められる」という――。



受験校との相性は重要である

受験は人生の一大事である。どういった学校に合格するかで、その後の人生が決まってくるからである。


重要なのはどの学校を選ぶかで、目安になるのは偏差値になる。自分の偏差値に見合った学校を選ぶのが、今の基本のやり方だろうが、意外に重要なのは子どもと学校との「相性」である。


私は二度結婚し、それぞれ娘がいるが、二人目の娘が高校を受験したときのことである。都立日比谷高校が娘の第一希望で、他に国際基督教大学(ICU)と別の有名私立大学の付属校を受験した。偏差値としてはその付属校が一番低い。


日比谷高校には無事合格し、ICUにも受かった。ところが、付属校には落ちている。意外な結果だったが、本人に聞いてみると、その学校の“過去問”が苦手だったという。


そこに学校との相性が示されている。受験問題には、それぞれの学校の個性が表れる。どういった学生、生徒に来てもらいたいか、学校の側は出題に工夫をこらすからだ。


東京大学の赤門

写真=iStock.com/ranmaru_

※写真はイメージです


東大合格のための「文章術」

たとえば、東大と京大といえば、国立の最難関校だが、受験問題は相当に違う。しかも、ずっと形式が変わっていない。京大の国語だと、問題はオーソドックスで、どれだけの読解力があるかが試される。


それに対して、東大の問題は、大学の側が正解はないと公言しているように、読解力とともに柔軟な表現力が求められる。その分、どう勉強していいか、戸惑う受験生もいることだろう。


簡単に言えば、出だしから主張がはっきりした回答を書く必要がある。予備校や参考書の模範解答は、文章をただつなぎ合わせた無難なものが多く、それを見るたびに、これでは合格はおぼつかないと、卒業生である私などは思う。


日比谷高校に合格した娘は、東大を受験することになったのだが、その時、コロナ禍で時間に余裕があったせいもあり、こうした東大に合格するための「文章術」については自宅で教えた。これはなかなか高校では習えないことで、英語の文章問題にも役立つので、これにはかなり力を入れた。


採点するのは東大の先生たちであり、彼らは研究者だ。研究者がどういう文章を書くのか、そのモデルになるような本も何冊か読ませた。中公新書の『バルカン 「ヨーロッパの火薬庫」の歴史』など、難しい地域だけに、世界史に対する理解を助けたのではないか。実際、バルカン半島のことが入試に出た。ただし、共通テストの準備をしている間は、そんな余裕はなかったので、その後のことである。


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